第八十七話「建て直しますわ、おほほほほ」
かつて、スタッキアは「大陸の文化の中心」と言われていた。
スタッキアは農耕可能な土地がほとんどなかった。
鉱物資源もない。
内陸国で海洋資源もない。
なぜこんな場所で「文化の中心」となり得たのか。
それは、隣の大国「ハイアベイリア帝国」の庇護による。
表向きは「芸術品などを輸出」して外貨を稼ぎ国民を養っていた。
実際のところは、スタッキア王室がハイアベイリア帝の縁戚であったため、半分以上「援助」という位置付けであった。
スタッキア王室もそれは理解していた。
血縁が切れたら援助はなくなる。
それは国家の死を意味する。
悪いことに、そこでスタッキア王室は血筋を守るため近親婚を繰り返すようになっていった。
その結果、もともとスタッキア王家は視力が弱い子供が生まれ、歴代国王はみな眼鏡をかけていたが、肖像画を見ると時代が進むにつれ瓶底レンズになっていく。
王妃を含め女性たちは高価な眼鏡を身につけることが許されず全員目を細めていて、時代が進むほどしかめ面になっていく。
最終的に視力を矯正できるレベルではない、日常生活に支障をきたすような子どもしか生まれなくなってしまった。
これが前王朝が滅んだ理由である。
王家は全員ハイアベイリアに逃亡したのだが、それも使用人の介助が必要だったという。
為政者は逃亡したとて、そこに国がある以上は国民もいる。
誰かが新しい為政者として国を舵取りせねばならない。
そこで、宰相であった人物が国王として即位することを宣言し、国民もこれを受け入れた。
これが現スタッキア王朝の初代国王、スカンピン1世である。
血縁の途絶えたハイアベイリアからは承認されず国交を拒否された。
唯一の産業であった芸術品など、当然買い手がいない。
産業がないから金がない。
金がないから投資ができない。
投資ができないから産業がない。
国土の7割が花崗岩という絶望的な地質の中、前王朝時代に入植したセグメンティアの国土は、文字通り「青々と茂った芝生」に見えた。
しかも、調査の結果金鉱があると判明しているのに開発すらしない。
金を掘らずとも、酪農だけで隣のアプリシアから外貨を稼いでいる。
何かしら難癖をつけて編入したいと考えるのは、スカンピン1世にとっては自然なことだった。
そこらへんの事情もだいたい理解していたハルカは、一つの腹案があった。
「おほほほほ、今は通信がありますわ!
ハイアベイリア需要に特化し過ぎて頓挫したコンテンツ産業の復興も夢ではありませんの。
星の裏側にまで宣伝ができますわよ!」
「それと火山、ありますわよね…?」
「それがどうした?」
「同時に、スパリゾートを開発して観光産業で外貨を稼ぐのですわ。
そのための魔道馬車(馬はいない)と鉄轍の技術支援ならできますわ!
おほほほほ」
「その提案、確かにありがたいが、何か裏があるのでは…」
「当然ありますわ。
わたくしが温泉に浸かりたいのですわよ、おほほほほ!!」
スペイン・ハプスブルク家
近親婚を繰り返して遺伝特徴が強くなり過ぎて維持不能になった悲劇の家系。
時代が進むと下顎がどんどん出ていき、記録によると口が閉じられない身体になり、政略結婚した側からも子を残すことを嫌がられたとか。
他にも近親婚というと「エジプト第18王朝」、日本の「藤原氏」が思い浮かぶが、ここまで遺伝特徴が出た例は他にないと思われる。
北朝鮮
国土が花崗岩だらけで、さらに気候や平地の少なさから農耕に適さない。
日本統治時代は北部で工業、肥沃な大地がある南部で農業と分業していたが、南北分断で美味しいところが全部韓国になってしまった。
北朝鮮の国民が飢餓に喘いでいるのは、金一族のせいだけではなく、地質と気候的に最悪な立地という要素も大きい。




