第八十二話「国際協力の象徴ですわ、おほほほほ」
国際会議が、こんにゃくタウンにて開催された。
この街は、街を破壊した兵士自らが捕虜として復興のために労働し、その功績で賠償を相殺したという和平の象徴の街である。
そしてこれからは、国際協力の象徴としてふさわしい街として、会議の開催地に選ばれた。
もっとも、実際はアジャイリアとナールハヤの中間だったからという理由もあるが。
ただし、内陸なのでオンプレー大陸からはアジャイリアを経由する必要があり、風に揺れる支柱に絡みついたあずきの蔓とこんにゃく芋の葉が埋め尽くす農地の傍らに、アジャイリアの技術協力で木製空港が建設途中である。
「おほほほほ、滑走路のタイルは特殊な油を染み込ませてシロアリに食われないようにしているのですわね!
枕木にクレオソート油を浸透させるのと同じ発想ですわ!」
こんにゃくタウンの中心地に今回の会議に合わせて建設された「国際こんにゃくホール」の大会議室にて、各国の代表がテーブルについた。
この会議で各国は、戦争の講和会議のように緊張する要素はない。
お互いの国の課題を並べて、他の国が何か協力できそうなら提案する、その後の実際の金銭や利害が絡む交渉は個別で、という趣旨である。
なのに緊張している人物が一名。
ナールハヤ外務卿ウィード・グリホサートであった。
「おほほほほ、司会進行と議長を兼任しますハルカ・S・P・ベニーですわ。
では初めにナールハヤ代表、自国の問題点はありまして?」
「ウチの皇帝は…………」
「何ですの?
勿体ぶらずに早くおっしゃって下さいまし、時間は有限でしてよ?
おほほほほ」
会場の誰もが「おほほほほ」と笑ってる時間が数秒のタイムロスだと心の中で突っ込んだ。
1回の「おほほほほ」が10秒なら、6回高笑いすると1分のロスである。
「スグニ帝は『ようかんさえ食えれば何でもいい』と言っていました…」
「……伝言願いますわ。
『真面目に政治をやらないとようかんのナールハヤ向けの出荷止めますわよ?』と」
「それは困る!
ようかんの効果が切れると、帝はまた憂さ晴らしで戦争を始めてしまいそうで…」
「…そんなことだろうと思って、とりあえず一週間くらいナールハヤ各地を視察してポイントは絞っておきましたわ。
ウォーターフォーリア代表、お願いしますわ」
「うむ、ウォーターフォーリアから道路と医療学校の整備を提供しようと思う」
ウォーターフォーリア帝国洋務大臣パルス・ディエンフワが支援を申し出た。
一方で、もう一人別ベクトルで緊張している人物がいた。
「ハルカさんが議長の会議だからいいところ見せなくちゃ!」
それはいつものアジャイリア外務大臣マリア・A・ストラッツだった。
「アジャイリアが国として援助を求めたいことはありませんが、個人的にハルカさんと四六時中一緒にいたいです」
…。
……。
………。
会議が一瞬の沈黙。
一瞬のはずだが体感は1分くらいに感じられた。
「アジャイリア代表、ここでは私情を挟まないでくださいまし、おほほほほ。
…そういう話は……あとでわたくしの部屋にいらっしゃいまし?」
この発言でアジャイリア日日新聞は号外を発行した。
アカリは頭痛で数時間寝込んだ。
そして海底ケーブルの帯域がパンクした。




