第一話「婚約破棄ですの、おほほほほ」
学園の卒業パーティーの席、王太子の宣言に全員が耳を疑った。
「余は、いつもいつも余を侮辱するハルカ・S・P・ベニーとの婚約を破棄する」
ーー突然、婚約破棄された。
公爵家に生まれ物心ついた時にはすでに婚約が内定していて王太子の妃になるべく育てられ、そこそこに国のためにも尽くしてきたと思うのだが…?
沈黙。
当然だ。感情に任せて卒業パーティーの場でこんな重大な決定を勝手に覆して、「は?」とならない方がおかしい。
「…殿下、ちょっとそれは…」
多忙な国王陛下の代理で父兄枠で参加していた宰相が止めようとする。
「余に口答えするのか、ガスター・H・ピロリ。宰相といえど出過ぎた真似をするな」
ダメだ。誰も止められない。
仕方ない、このわたくしがお灸を据えて差し上げますわ。おほほほほ。
「は〜〜〜…」
わざとらしく大きなため息を一つ。
「殿下…いえ、ヨシチェック・O・K・アプリシア王太子殿下。あなた何もわかっていらっしゃらないのですね。」
「またそうやって余を侮辱する!不敬罪だ!」
「侮辱ではありませんわ、忠言でしてよ、おほほほほ。
そもそも国の将来を左右するような事を、お決めになられた国王陛下の許可もなしに勝手に発言する思慮の浅さ、卒業パーティーというお祝いの場を台無しにするような無神経さ、そういうところを今までずっと指摘してきたのですわ、おほほほほ。
それを侮辱と捉えるなら、もうこちらから願い下げですわ。
幽閉でも斬首でもお好きになさればよろしくてよ、おほほほほ」
会場はまた沈黙。
しかし先ほどとは違う。
勢いよく首を縦に振る者、よく言ってくれたと言わんばかりの表情の者、思わず拍手しそうになる者までいた。
「貴様を幽閉などしたくない、国の中にいられてたまるか。処刑も、処刑場が汚れる。国外追放だ」
「はい?罪人を国外に放り出したら外交問題でしょうに!」
「うるさい、出て行け!」
「わかりましたわ。ですが行く先はわたくしが決めますの。
…あと…」
「まだ何かあるのか」
「わたくしがいないと、後悔することになりますわよ?」
「…戯言を…連れて行け!」
かくしてわたくしは国外追放されましたわ、おほほほほ。
かくして宰相の胃は痛みましたわ、おほほほほ。




