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長生きができる薬
ある時、ライト博士は、どんな生物でも確実に寿命が延ばせる薬を発明した。
世の中にいる99%の人間は死から遠ざかりたい筈なので、これを売って世界で一番の億万長者になってやろうと考えていたのだ。
だが、ライト博士の予想に反して、長生きができる薬は殆ど売れなかった。
そのおかげで、研究開発の費用が賄えず、世界で一番の借金を抱えてしまったのである。
役所の窓口係は、呆れて言った。
「何を考えているんですか、ライト博士。あんな薬は売れませんよ。いくら寿命が延びるとはいっても、亀みたいに自分の行動だけが遅くなるなんて。そりゃも時間は長く感じるかもしれませんが、回りと合わせられないなら拷問でしかないでしょう。そんな薬は誰も欲しがりませんよ」