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哀れな夫婦
ある所に、自分たちの赤ん坊は重大な病気にかかっているから寄付をしてくれ、と言っていた夫婦がいた。
だが、親切な医者が診察した所、特に何の問題もなかったのである。
赤ん坊が病気だというのは、金が欲しいための嘘に違いない。
診察後、この夫婦は他人の心配を利用したと反感を買って市民から責められたのだ。しかも、善意を踏みにじる行為は卑劣だとマスメディアからも攻撃され、最終的に夫婦は家や職すら失ってしまったのだった。
いま夫婦の顔色は暗い。
「どうして、こんな事になってしまったんだか……。私達は、ただ赤ん坊を健康にしたかったのに」
「ううう……貴方」
「すまない」
「良いの。愛してる」
その時、泣きながら抱き合う夫婦の頭に、どこからとも無く空のほ乳便が飛んできたのだ。2人はハッとして、怯えた表情を浮かべている。
赤ん坊は笑っていた。
声にならない声がした。
『おい、これに懲りたら俺様を治療しようなんて考えるなよ。次はもっと酷い目にあわせてやるからな。お前らがどう思うとも、今の俺様は病気じゃないんだよ。分かったのなら、ちゃんと返事をしろ。テレパスで話し掛けてるんだ。聞こえないフリはできないからな』




