あくまですよ、あくまでも
ノックされたので私がドアを開けると、そこには見知らぬ悪魔が立っていた。
「あ、どうも初めまして。私、悪魔です」
「……あの、何のようですか?」
「最近、ちょっと思うことがあって、わたし悪魔を止めようかと思うんですよ」
「……そんなの知りませんよ」
「悪魔だって心変わりすることがあっても良いでしょ。だって、悪いことばっかり考えてたら落ち込むじゃないですか。だから、別の何かになろうと思うんです。どうですか?」
「どうですか、って、なんですか。知りませんよ。帰ってください」
「ちょっと、悪魔だってハッピーになれるよう努力をしてみようかとね。ほら、人間、最後は笑顔が大切だって言うじゃないですか」
「自分のこと、人間って言っちゃったよ」
「だから、今日から背中に白い羽を付けて、頭に黄金の輪っかを付けて、布だけのエロい格好をしようと思うんですか」
「……なんか、安っぽい天使のイメージですね。っていうか、それ天使であって、悪魔がする事じゃないでしょ」
その言葉に悪魔は落ち込んでしまったで、私は慌てて頭を下げていた。
「あ、ご、ごめん。ちょっと口が過ぎたよ」
「ぺっ!」
私は慰めようとした時、急に悪魔がツバを顔に吹き付けてきたのだ。しかも、そのまま悪魔は逃げ出してしまった。
「へへへ、バーカー。こんな手に引っかかりやがってー」
「な、なにぃぃ。この悪魔ぁぁあっっっっ!」
って、おい。
「私は、なに言ってるんだ。あれは悪魔じゃないだろっ! いや、アイツ自身は悪魔だけど、さっきの行動は悪魔って感じじゃないだろう! 子供のイタズラ的な悪魔ってぐらいで。いや、今の悪魔のそういう意味の悪魔じゃなくて……ハッ!」
私が1人で赤面したまま言い訳をしてると、遠くの方でニヤニヤしている悪魔の姿が見えたのだった。
私は慌てて、バタンとドアを閉めていた。