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人は痛い思いをしないと学ばないのか  作者: 妖精さん


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第1話 2/10 証人喚問

10年物のROM専が初めて書いてみた。

よろしくお願いします。

まさか自分の人生において証人喚問とやらに呼ばれるとは思いもしなかった。


「ですから!不当に国民の血税をかすめ取るような行いを、断じて許すわけにはまいりません!」


なんかお偉いさんがキーキーわめいているのを聞きながらぼんやりと思った。


目立つとたたかれることを恐れて秘密にしてもらってきたことが仇になったようだ。


なんか人の話を聞かずに一人でエスカレートしている様子を眺めながら、軽く現実逃避してみる。





いつ生まれたかもわからない『ダンジョン』。100年以上前から世界中で確認されていたといわれている。崖沿いの洞窟・氷河の亀裂・下水のマンホール・森の中・地下鉄の路線など天然・人工物とお構いなしにできていた。各国で様々な呼ばれ方をしていたが、最終的に『ダンジョン』の名前で統一されてから80年が経過した。今では『ダンジョン協会』なんてものも各国にできている。


ダンジョンの中には『モンスター』がいて、倒せば死体は煙のように消えてしまい、後には魔石やドロップアイテムが落とされる。ダンジョンは素材の宝庫だ。魔石はエネルギーとして電気・ガス・ガソリンの代替品として使われ始めており、わが国でもなくてはならないものとなっている。ドロップアイテムはモンスターの部位だったり、ポーションと呼ばれる薬など様々な種類がある。武器や防具、指輪などの装飾品もドロップする。何に使うのかわからないものも多く、これからの研究がまたれるとのことだ。


基本的にダンジョンからモンスターが出てくることはないが、ダンジョン内にモンスターが飽和するとモンスターが外に出てきてしまう。これは『氾濫』と呼ばれており、氾濫を終息させるためには多大な戦力と犠牲がつきものになっている。今では世界中で氾濫したままモンスターに占拠されている土地がたくさんある。ダンジョン氾濫を防ぐ意味でもモンスターの間引きは必要とされている。


こういったダンジョン内での素材採取やモンスターの間引きを行う職業を『探索者』と呼ぶ。


そのダンジョンでこっそりとモンスターを間引きをしてきたのがこの俺山本将太(やまもとしょうた)(45歳)だ。探索者として22年、間引きを始めてから12年以上が経つ。探索者としてはベテランだ。階級はC級と一番低いが。


始まりは23歳のある日、自宅の押し入れがダンジョンに変わったことだ。秋の終わりに羽毛布団を出そうと思い、押し入れの戸を開けたらダンジョンにつながった。押し入れの反対側の戸を開けたら普通に押し入れを開くことができた。初任給で買った羽毛布団がなくならないでよかった。


本来ダンジョンが発生したらダンジョン協会に通報するべきだったのだろうが、自宅を接収される可能性があることから自分でこっそり解決しようとした。今思えば無茶だったのだろうが、住み慣れた自宅を明け渡すことに対して拒否感が勝った。その時は母と祖母も同居していたし、祖母は脳梗塞で車いす生活でもあったので余計に環境を変えたくなかったこともあった。


発生した押し入れダンジョンの特殊性も通報をためらわせていた。ダンジョン内一層目にはダンジョンの注意書きが書かれていた。『①このダンジョンでは、死ぬか特定の道具を使わないと出られない。②このダンジョン内で死ぬと、持っていた装備を失いダンジョンの第一層目で生き返る。③このダンジョンに挑めるのは一日一回まで。④このダンジョンを攻略している時、ダンジョン外の時間は止まっている。⑤このダンジョンに365日間連続で挑戦者が現れないとき、このダンジョンの中のモンスターは外に出ていく。』ずいぶん不思議なダンジョンだ。365日間の間にダンジョンに入れば氾濫は起きないということ。これなら普通に仕事をしながらでも管理できると思った。


初めの3年は死に物狂いで(何度も死んだが)ダンジョンを攻略していった。氾濫まで365日間の猶予はあったが面倒くさがりでついついさぼりたがる性格なのでなるべく毎日ダンジョンに挑戦するようにした。生き返れるとはいえ死ぬのは怖い。でも家族や自宅を失うことはもっと怖かった。


父は俺が生まれて間もなく離婚したとのこと。顔どころか名前すら知らない。戸籍とか調べればわかるのだろうが興味がない。俺の中では死んだものと扱っている。祖父は昔ダンジョン氾濫に巻き込まれて亡くなった。50年くらい前らしい。祖母も巻き込まれていたが当時のアイドル探索者に助けてもらったらしい。脳梗塞で倒れるまでは時折そのアイドル探索者のディナーショーに参加していたこともあった。そんな家族構成なので祖母・母・俺の3人暮らしを変えたくなかった。


死にながら徐々に力をつけていき、モンスターをテイムしたりアイテムを収集していった。レベルやステータスなどはないようだが成長はしているようで、5年経つ頃には死ぬことはなくなり安定してダンジョンを攻略していくことができた。アイテムもいろいろとたまってきた。テイムしたモンスターも10体まで増えた。ただ祖母の脳梗塞を治せるような薬が見つからないのは残念だった。


10年くらい経つと自分の能力が異常であると気が付くようになった。テレビで『びっくり探索者コンテスト』を見た時のこと。上位探索者と言われている人が500kgのバーベルを上げてドヤ顔していた。


「えっ、俺こないだ車持ち上げてたんだけど。」


自宅の駐車場に車を入れる際にずれたから、面倒くさがってエンジンなどかけずついつい自力で動かしていたが、かなりおかしな力を手に入れていたようだ。家族3人でつつましく過ごせればいいので黙っていようと思った。


それからなんやかんやあって仕事を辞めて他のダンジョンの間引きをするようになったが、実力を隠していたことが裏目に出たようだ。





ふと意識を現在に戻すと、エスカレート議員様がさらに盛り上がっていた。


「この私がこの国にいる限り決して不正は許しません!私の目が黒いうちは絶対にあなたのような人を探索者とは認めません!この国を守るためにも私は不正と戦います!」


決め顔とともに議員様が大声で叫んでいる。マイクあるんだから怒鳴るなよ。


「そうだ!」

「これは責任問題だ!」

「きちんと説明責任をはたせ!」


などヤジも飛んでいる。


あーあ、面倒だ。



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