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第二十四話 スタート

『さあ待ちに待ったレースが今まさに始まろうとしています!』


『あのベガが!遂にライトニングの舞台に帰って参りました!』


『このレースの実況は、私ダイゴが送りいたします。』



一体何なんだこれは?



今やコースの回りは満員御礼。


子供だけでなく、大人達も仕事をサボってくる始末。

村人全員来たんじゃないかと思うような大観衆だ。


さらには何故か実況まで付いてやがる。



───カッカッカッ!



俺のすぐ隣で響く耳障りな笑い声。

その発生源は、もちろん小さな黒い竜だ。



(どうした落ち着きがないぞ?まさか緊張でもしているのか?)



おうおう、相変わらず煽ってくれるじゃないか。



(…口喧嘩したトカゲと竜が勝負する。それだけなのに、何でこんなに観客が多いんだよ?)



その言葉に上機嫌になったのか、鼻を鳴らしながら竜は答える。



(フンッ。そんなことも分からないのか。教えてやろう。それはな───この俺が”竜”だからよ。)



───ちょっと何言ってるか分からないデスネ。



まぁ。

どうでもいいや。



(………お前こそ、これだけ大勢の前で負けたら恥ずかしい事この上ないな?)


(ハッ!俺が負けると思っている者など、ここにはお前しかいないだろうさ。)



二匹はそんな罵りあいをしながらスタートライン並んだ。






『それでは選手の紹介です。』


『まずはご存知!』


『昨年度チャンピオンでありコースレコードホルダーの黒竜。』


『ベ──ガ─────!!!』



ウォォォォォオオオ───!!!



会場から割れんばかりの声援が響く。

観客達が跳びはね、大地すら揺れているようだ。



『誰もがこの時を待っていたでしょう!』


『今年のレースには参加しませんでしたが、一年以上の時を経て、王者が再びコースに舞い戻りました!』



本当にこの竜は村人達から人気があるようだ。

この世界での竜は、やはり特別な存在なのだろう。


当然会場の声援は竜一色。

トカゲの俺には誰も注目していない。



『そして対戦相手はこちら!』


『竜に喧嘩を売った無名のニューフェイス、ホワイトサラマンダー!!!』



実況が聞いたことのない名前を告げる。


ホワイトサラマンダー?

誰だ?

─────俺か?


そして場内にはどよめきが広がっていく。



「あのトカゲ、サラマンダーだったの?!」


「山の精霊じゃないか!」


「サラマンダーって速いの?」


「知らないよ、初めて見たもん!」



『誰もその実力を見たことがありません!』


『果たしてどんな戦いを見せてくれるのか?!』



実況者が俺に向かって親指を立ててウインクをしている。

ちょっとイケメンなのが逆に腹立たしい。


あいつ…………

勝手にハードル上げやがった。



少し前、実況者が紹介のために名前を聞きに来た。

”名前はないから適当に呼んでくれ”と言っておいた。

言っておいてしまった。



(フンッ、サラマンダーとは大きく出たな?)


(あいつが勝手に呼んだだけだ。そもそもサラマンダー何て知らねえよ。)


(ハッハッハッ、そうかそうか。それではそろそろスタートだ。準備はいいな?)


(あぁ、いつでもいいさ。)



最後に竜は、カッカッカッと笑った。



コースを静寂が包んでゆく。

聞こえるのは自分の鼓動のみ。


ちらっと横を見れば、余裕の表情で竜がこちらを見下ろす。


いや、今さら相手の事など気にする必要はない。

早まる鼓動を抑えながらスタートの合図を待つ。



ゴール地点から小さな赤い光が上がり─────



─────ドンッ



爆発音と共に花火のような青い光が広がり。

レースの開始を告げた。

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