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第十七話 早朝の村

 朝。

 野鳥の鳴き声に目が覚める。


 寝起きだというのにやけに頭がハッキリしている。

 鳥の声が妙に気になるのはトカゲの本能だろうか?

 いずれにせよ、寝起きが良いのは悪いことではない。

 ”早起きは三文の徳”っていうしな。


 …三文?

 文って何だ?


 記憶を失っているのか、元々知らないだけなのか…

 いやいや、自分が喋っている言葉が分からないなんておかしいだろう。

 やはり記憶喪失のせいだな。


 極めて論理的な結論を導き出し、俺は布団代わりのタオルから出る。

 外はまだ薄暗く、肌寒い。

 ユウトはまだ布団の中で寝息を立てている。

 ユウトが起きるまで、色々と見て回る事にしよう。


 部屋の中を見回すと、机の上には紙と鉛筆が置いてある。

 この世界にも紙と鉛筆があるようだ。

 そして紙には何か書いてある。

 字は綺麗だと思うんだが…


(…全く読めん。)


 話が出来るから字も読めるかと思ったが、そうではないらしい。

 文字が読めないと言うことは、俺の知っている言語ではないのだろう。

 それでもユウト達と話せるのは、”念話”のスキルが同時通訳してくれている感じだろうか。

 文字はいずれ覚えていかなきゃいけないな。


 机の前にはガラスが嵌め込まれた窓があり、少しだけ隙間が開けてある。

 今の体であれば、何とか通れそうだ。


 外に出てみるべきか否か―――


 トカゲの身では、外は危険な世界だろう。

 食物連鎖の底辺付近にいるであろうトカゲにとって、犬や猫、鳥など、ありふれた動物達が全て天敵なのだから。


 想定出来うる多くの危険を考えを巡らし。


(ま、何とかなるだろ。)


 結局、外に出てみることにした。


 ビクビクしていてもしょうがない。

 竜や吸血鬼が存在するこの世界で、人間とトカゲにどんな差があるっていうんだ。



 ユウトの部屋は二階にあり、窓から出るとそこは屋根の上だった。

 周りが見回しやすいよう、屋根の頂上まで登ってみる。


 ユウトの家は昨日通った商店街に面しており、屋根の上からは全体が一望できる。

 商店街の建物は全て白い壁と茶色の屋根で揃っていて、落ち着いた雰囲気の統一感がある。

 まだ 早朝なこともあり、家の外にはほとんど人の姿がない。

 昨日夕方にみた活気のあるカモリ村も良いが、早朝の静かな時間の流れるカモリ村も良いものだ。


 屋根から見ると外壁の外の畑も見渡せる。

 村の中心部はやや小高い丘になっており、大きな建物が建っていた。

 あれは何の施設だろうか。


 情報開示さんに色々と聞いていく事にしよう。


(あの建物は何?)


≪村の主要機関が集まった施設です。≫


(何の機関が集まってる?)


≪行政・教育・医療・宗教の機関が集まっています。

 宗教に関してはほぼ形骸化しており、教会の跡地が残るのみです。≫


 結構色々な施設が集まっているな。

 だから村の割にあんなに大きいのか。

 ユウトが起きたら行ってみよう。


 この村についても知っておきたいな。


(カモリ村について教えて。)



≪カモリ村≫

≪はるか昔、神が眠る地を守るため、その神を慕う人々が集まり出来た村。

 どのような神であったのか、 知る者はもう残っていない。≫



 …なんだか切ないな。


 神が眠る地か。

 情報開示さんがそう断定しているということは、この世界には本当に”神”と呼ばれる者がいるのだろう。

 一体どんな神で、なぜ眠りについたのだろうか。


≪————。≫


 神についてはまだ分からないか。

 村に神にまつわる何かが残っているかもしれない。

 村を探索する時は色々探してみよう。


 何だかんだ、まだ”情報開示”で得られる情報は少ない。

 自分で見れることは自分の目で確認することが重要そうだ。

 知識と経験は違うしな。



 カモリ村や神のことを考えながら周の景色を見回していると、ふとユウトの幼馴染の事を思い出した。

 そういえば、ユウトは幼馴染が隣に住んでいると言っていたな。

 どっちの家だろうか。


 まずは右隣の家を見てみる。

 大きさ的にはユウトの家よりも一回り大きい。

 四角い二階建ての家で、屋根は四角柱。

 屋根のてっぺんには黒い卵型の飾りが置いてある。

 全ての窓にはカーテンが掛かっていて中は見えないな。


 左隣の家はどうだろう。

 こちらもユウトの家より一回り大きい。

 二階の窓はカーテンが閉められているが、一階の窓にはカーテンがかかっていない。

 屋根の縁まで移動して近づき、中を覗き込んで見る。

 中には丸テーブルが並んでいる。

 どうやらレストランのようだ。

 いつかここの料理も食べてみなければ。

 後でお母さん(アヤカさん)に頼んでおこう。


 幼なじみの親は騎士で、普段は農家と言っていた。

 多分右隣の家かな。

 また屋根の逆側まで移動して隣の家を見ると、屋根の上には黒い竜の像があった。


(ん?)


 寝ぼけたかな?

 さっきと形が違う気がするが…


 目を擦ろうと目を閉じるが、腕が短くて手が届かない。

 仕方なく目を開けると、竜の像は消えていた。


 幼馴染のパートナーはドラゴン―――


 今さら思い出してももう遅い。

 相手を見失った時に取れる行動は限られている。

 即座に後ろを振り返ると。


 そこには黒い竜が、こちらを見下ろしていた。

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