第十三話 カモリ村
(お、畑が見えてきたな。)
「────え?見えるの?」
進む先、木々の隙間から畑が見えてきたのでそう言うと、ユウトがビックリしている。
何を驚いてるんだ?
(畑が見えてきたじゃないか。何か変だったか?)
「んー、村の周りには魔除けの結界が張られてるんだ。普通の魔物は村に近づけないし、中に入るまで村が見えないんだって。君にはもう見えてるんだね。せっかく驚かそうと思ったのに。」
そういう事か。
確かに魔物がいるこの世界で、防衛手段が無ければ村なんて成り立たないだろう。
だがそれなら今は魔物である俺にも結界の効果があるはずだ。
何で俺には効果がないんだろうか?
元人間だからか?
「最近貼り直したばかりだから、結界が弱まっているって事はないと思うんだけど…」
さっきまで森を歩いている時には多少小さな魔物の気配がしたが、村に近づいてからは周りに魔物の気配はない。
結界なんて物の仕組みを知らないから何とも言えないが、結界に問題があるわけではなさそうだ。
しかし何で俺に効果がないかは知っておきたいな。
いつか結界を張った人に会えれば色々聞いてみるか。
(この結界は誰が貼ったんだ?)
「村の婆様だよ。」
村に着いたら婆様とやらを訪ねてみよう。
結界だけではない。
この世界は俺の常識が通用しない事が多そうだ。
村に着いたらこの世界について色々と学ばないといけない。
そんな事を考えながら森を抜けると。
そこには広大な麦畑が広がっていた。
(おぉ…)
思わず感嘆の声が出る。
村という言葉から、もっとこじんまりしたイメージをしていたが、その想像は誤っていた。
森を切り開いたであろう平地には、色々な種類の畑が広がっている。
そして遠くに見える畑の中心には白い壁で覆われた区域が見えた。
おそらくあそこが居住区なのだろう。
緑に生えそろった麦畑、青い空に白い村。
美しい光景がそこにはあった。
麦畑を爽やかな風が抜ける。
麦が擦れる音がサラサラと耳に心地よい。
(………良い村だな。)
「そう?ようこそカモリ村へ。」
ユウトは嬉しそうにそう言った。
◇
麦畑の間をユウトが進んでいく。
俺は景色が見やすいようにユウトの頭の上に移動していた。
(ユウト、あまり頭を揺らすな。落ちちゃうだろ。)
「難しいこと言わないでよ。勝手に頭に乗っかったんでしょ?」
(だって高い方が景色が良いじゃないか。)
我ながら自分勝手なトカゲである。
そんな中身のない会話をしながら(ユウトが)歩いていると、村の中心部に近づいてきた。
(壁が近づいてきたな。)
「あの壁の向こうに家があるんだ。」
(カモリ村の人は皆あの中に住んでるのか?)
「そうだよ。昼間は門が開いてるけど、夜には閉めちゃうんだ。自警団の人達が門番をしてるよ。」
(自警団?)
「魔物から村を守るんだ。畑の外に結界があるけど、それでもたまに魔物が迷い込むことがあるからね。その時は自警団の人が頑張るんだよ。」
(ほー、魔物を追い返すって事か。凄いな。)
「まあ自警団っていっても村の人たちが持ち回りでやってるんだけどね。でもそこで活躍すると騎士に取り立ててもらえるんだって!」
自警団から騎士って………
かなり派手な功績上げないと厳しそうなんだが。
まぁユウトは恐らく自警団から騎士になることを夢見ているようだ。
いらん事を言って少年の夢を壊す必要もあるまい。
そんな話をしながら歩いていると、白い壁に大きな門が開かれているのが見えた。
「おおユウト、今日は遅かったな。」
噂の自警団が声をかけてきた。
農家と聞いて侮っていたが、かなりのマッチョである。
手斧を腰に吊るしたその姿はかなりの威圧感だ。
農家(?)恐るべし。
「黒蛇がいたからちょっと時間かかっちゃったんだ。」
ユウトは蛇を取り出して説明する。
「おぉ、ブラックスネークじゃねえか。まだ小さいが、こいつを仕留めるとは立派なもんだ。噛まれはしなかったな?」
「大丈夫だよ。」
「よしよし。やっぱりユウトは筋が良いな!」
男はユウトの頭を撫でようとして俺に気付いた。
「ん?こいつは?」
(どうも。)
軽く会釈して返事をする。
「…え?」
マッチョが固まっていた。
いきなり喋ったのは不味かっただろうか?




