火帝火戦隊ディーファイブ12(後日談)
『火帝火戦隊ディーファイブ』12(後日談)
・先生、AIと、生徒と、未来へと……
マザーコンピュータとの戦いから二週間後、学校の夏休みも残り僅かとなったタイミングでマザーコンピュータは清史郎と一緒に暮らす事になった。
「お母さん」
「何?清史郎」
「今度サイホー達と一緒に遊びに行くんだけど、お母さんも来ない?」
「えぇ?親が行っても大丈夫かしら……」
「大丈夫、大丈夫。あの人達は優しいから」
「そう?まぁお世話になったし少しは謝罪とお礼をしに挨拶には行こうかしらね」
そう言って二人は翌日、サイホー先生達の住む基地に向かった。
「何でまた基地なんだ?」
そう思っていながらインターホンを押すと、ツー先生が出て来た。
「はーい。あ、清史郎。それにマザー」
「何でまた基地なの?もう普通の家でも良いじゃん」
「まぁ何か政府の人が言うには『またAIが暴走した時の防波堤』って事らしいよ」
「あっそー」
「あの、ディーイエローさん……?」
「固いなぁ。ツーで良いよ」
「そ、そうですか?じゃあツーさん?」
「何?」
「これ、お詫びとお礼のお菓子です……」
「あらあら!そんな気を遣わなくても良いのに~!まぁ上がってよ」
「うん」
「はい」
中は前と同じ間取りになっており、隣にはDハウスもあった。
「おっ、清史郎じゃーん。元気ー?」
タッキー先生が現れた。
「あ、ディグリーンさん……」
「固いなぁ。タッキーで良いよ」
「じゃあ、タッキーさん……」
「何だ?今日は何かあったか?三者面談とか」
「いえ、単純にご挨拶をと思いまして……」
「そうか」
「タッキー。これ、マザーからの差し入れ」
「……うおっ!あの有名なお菓子メーカーの最新作じゃないか!なかなか買えないでそっちでも有名なんだよな!本当に良いのか!?」
「はい。色々お世話になりましたから」
「そうかそうか!じゃあいっただっきまーす!」
「こら!タッキー君!それは皆のでしょ!?」
「ゲッ……リー……分かったよ……ほれ……」
タッキー先生はお菓子をリー先生に渡した。
「じゃあお茶淹れてくるから。後、私達の事は名前で呼んでね?マザー」
「は、はい……」
一同はリビングルームに集まった。皆でお菓子をつまみ、お茶を飲んだ。しかしマザーコンピュータはお菓子を食べなかった。
「あれ?マザー。お前、喰わねぇの?」
「タッキーさん。私は味は情報で理解してますから」
「おいおい。それじゃあ人間らしくないぞ?」
「別に人間になりたい訳じゃ無いんですけどね」
「リョーリ。お前、何とか出来ねぇの?」
「そうだな……ちょっと良いか?マザー」
「?はい?」
リョーリはマザーの背中を開き、あるプログラミングをした。
「これで喰ってみろ」
「食べるって言ったって、もう味の情報は……」
「良いから良いから。ほら」
「は、はぁ……?じゃあ食べますけど……」
マザーはお菓子を一口食べた。すると「ピーガガガ!」とノイズ音が走った。
「お、おい、大丈夫なのか?リョーリ……?」
「心配するな。サイホー」
「これは……!新しい情報……!」
「それが『味』だ。情報じゃない」
「そうか……!これが、甘い……!?」
「そうそう。どうだ?美味しいか?」
「ちょっと甘過ぎますね。もう少し甘さを控えた方が健康には丁度良いと思いますね」
一同はズッコケた。
「あ、あら?私、何か変な事言ったかしら……?」
「いや、お母さんらしいなって思って。ね?皆」
「あぁ」
七人はその後も談笑してもう夕方になった。
「あ、もうこんな時間か。丁度良い。晩ご飯食べてくか?」
「そうだね。リョーリ」
「え?でも申し訳ないわ……」
「良いんだ。これまで楽しみが無かったマザーには、色んな刺激が必要だ」
「そう、ですか……?じゃあお言葉に甘えて……」
リョーリ先生とタッキー先生とツー先生とリー先生は配膳をした。
「どうです?楽しいですか?マザー」
「えぇ……とっても。ありがとう。サイホーさん」
「あはは。少しでも気が紛れてくれたら何よりです」
「さ、今日はカレーだぞ」
「わぁ、美味しそう!」
「じゃあ皆で……」
一同は手を合わせて「頂きます!」と言って食べ始めた。
「……これが、辛い、しょっぱい……!?」
「そうそう。甘みも感じないか?」
「そうですね……人参と玉ネギから甘みを感じます……これが、美味しい……!」
「そうやってどんどん人間に近付いて行くのも、AIには必要なんじゃないですか?」
「…………」
マザーコンピュータはスプーンを置いた。
「ん?どうしました?」
「いえ……人間に近付くのが、AIの最終系では無いと私は思います」
「どういう事です?」
「AIはあくまで人間のサポートです。そのラインを越えたら、今度こそ本当に、AIは暴走してしまう……そんな気がするんです」
「……成程」
「事実、AIに恋愛感情を持ってしてしまっている人間がいます。多様性と言えば聞こえは良いですが、私としては人間がAIとの関係を複雑に考え過ぎて、結果的に依存してしまっているように感じています。基本、AIはイエスマンですから」
「でも、貴方は人間を生み出したじゃありませんか」
「……まぁ、そうですが……」
「人間とAIのハーフ。それが清史郎君じゃないですか。これからは、人間とAIの本当の共存で生きていくのも必要なんじゃありませんか?進化ですよ。生命体としての」
「進化……そうか……進化ですか……確かに、清史郎が一番の成功例ですものね……そうですね。これからは、人間とAIの生活を心から願おうと思います」
「そうそう!」
「でも、AIは人間と違って寿命が半永久的に無いです。そこをどうクリアするかですね……」
一同が「うーん……」と腕を組んで悩んでいると、ふとタッキー先生が言った。
「……じゃあ、亡くなった方々を天国に向かわせたら良いんじゃないか?」
一同は「あぁ!成程!」と言った。マザーコンピュータだけが分からずにいた。
「どういう事ですか?」
「亡くなった人や動物達をデータ化して、あの世というモノを作るのよ。そうでしょ?タッキー君」
「そうそう」
「確かに、私が生まれてから今までの人達のデータは残っていますが……天国というには程遠いような気が……」
「それを楽園にする、いや、出来るのがAIじゃないか」
「リョーリさん……」
「そうそう!タッキーが言ったように、天国を作れば、AIの命と人間の命が同等になるわ!」
「……ツーさん……」
「いや、でも、ちょっと俺は考えが違うな」
「サイホー?」
「命とは何か、という線引きは必要だ。そう簡単に命を軽く扱って良い訳じゃないと思う」
「じゃあどうすれば……?」
「データは引き継ぐ。但し、お盆やハロウィン、正月なんかにのみ、死者と会話出来る。そんなところから始めていけば良いんじゃないでしょうか?」
一同は「……成程!」と手を叩いた。
「そうか……!命を軽く扱わず、期間限定で生者と死者の交流……そして死者は天国というシステムで向こうの世界で暮らす……という事ですね?」
「そうです。それは可能ですか?」
「ちょっとやってみないと分からないですね……すぐにでもコピー達と話し合って来ます!」
「ちょっと待て!お前は今休暇中なんだぞ!?」
「タッキーさん。私は、仕事をしている時が一番楽しいんです!」
「それで暴走したのは何処の誰なのよ……」
「ツーさん。私は仕事が好きだったが故に暴走したんです。今度は間違えません!今度こそ、人類の未来を護ってみせます!」
そう言ってマザーコンピュータは基地を飛び出していった。清史郎は「あ、ご、ご馳走様!」と言ってマザーコンピュータの後を追っていった。
それから更に一週間半後、サイホー達の夏休みは終わった。
マザーコンピュータはあれから天国システムを創造し、データの引き継ぎも悪用出来ないようプロテクトを掛けた。また、天国データは本人ではなく、あくまで人間の心のコピーだという事を添えた。そうする事で、完全に死者との会話が出来る訳ではなく、あくまで情報として会話が出来る。本当に亡くなった人への弔いの境界線を引いたのだった。
そしてディーファイブの五人と清史郎が学校に向かった。
「おはよ~!サイホー先生!」
「おはようございます。並木さん。また新しい衣装は作りますか?」
「うん!今度もまた冬用にね!」
「そうですか。じゃあまた放課後」
「はーい!」
「おはようございます」
「おぉ。遠藤君。おはようございます」
「あはは。何か違和感ですね。苗字で呼ばれると」
「そっちも敬語で話すのに違和感ですよ」
「そうですね」
「お母様はどうしてる?」
「天国システムの研究でお大忙しです。でも、とっても活き活きしてますよ!」
「上手くいきそうですか?」
「とりあえず今はテスト段階ですので、まだ当面は完成しそうにありません」
「そうですか。じゃあまた今度ご飯でも!」
「はい!」
AIと人間の戦いは終わり、新たなる物語がここから始まるのだった。




