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第1話 夢の入り口と「二回目の雷」

 BL漫画家になりたい。


 そう思ったのは中学1年生の冬休み。


 初めて読み始めた漫画は小学4年生の頃、普通の恋愛ものの少女漫画だった。


 お母さんが若い頃に読んでいたと言う漫画をたまたま読ませてもらったんだけど、漫画ってこんなに面白いのかと雷に撃たれた気分だった。


 そこからお母さんに頼んで漫画雑誌を買ってもらったり、お小遣いで自分で買ったりしてどっぷり漫画に浸かった。


 そして自然と真似して自分でも描くようになった。


 最初は好きな漫画を真似して、目の大きな女の子の絵。


 そこからわりとすぐに四コマ漫画を描くようになり、その後それっぽくコマ割りした漫画を描くようになるまで時間はかからなかった。


 今でも思い出すと恥ずかしいくらいヘタクソだったけど。


 お母さんも私が漫画を描いているのを応援してくれていたし、お絵描き用のタブレットも誕生日プレゼントに買ってくれた。


 私が楽しそうに描いてたからと言うのも大きいけど、実は私はその頃不登校になりかけていたから。


 教室に入ろうとするとお腹が痛くなって、どうしてもそれ以上進めなかった。


 特にいじめがあったとか、嫌なことがあったとかはないんだけど、友達もできなくて居心地が悪く、その時は保健室登校を続けていた。


 そんな私をお母さんは心配していたから、ようやく楽しめる趣味を見つけた私を見守っていてくれていたみたい。



 漫画を描いていると周りから興味を持たれることもあり、そこから会話が繋がって友達と呼べる人たちもできた。


 漫画を描き始めたお陰で、私は中学校には普通に通えるようになっていった。


 そんなある日、たまたま本屋さんである漫画を手に取った。


 表紙が男の子二人で、少女漫画なのに男の子だけ?と思い気になって試しに買ってみて読んだところ、二回目の雷に撃たれた。


 これが私のBLとの出会いだった。




─────────────────────



 そこからは見よう見まねでBL漫画を描くようになった。


 男の子たちとはあまり喋ったことがないからほとんど想像だけど、いくつか読んでみたBL漫画を参考に描き始めると男女の恋愛ものを描いてたときより没頭できる自分がいた。


 なんで男の子同士の恋愛にこんなに引き付けられるのかは今も分からない。


 でもBL漫画が少し後ろめたいと言うのも感じていたので友達にも、ましてやお母さんにも見せることはなくなっていた。


 1人でこっそり描いて1人で楽しむ。


 最初はそれで十分だったけど、そのうち徐々にこれを仕事にして一生描いていきたいと思い始めていた。


 春休みに入ってお母さんに「最近漫画描いてるの?」と聞かれたので、その時に思い切って「漫画家になりたい」と伝えた。


 漫画に理解のあるお母さんだから応援してくれるかと思ったけど、その答えは意外なものだった。


「趣味で描くのはいいけど、仕事にするのはやめなさい。それだけで生きていくのは無理よ」


「でも漫画家さんはたくさんいるよ。なれないことはないと思うんだけど」


 お母さんは軽くため息をついた。


「実際、表舞台で活躍してる人は一握りよ。見えないだけでたくさんの人が夢破れて消えていくの。杏奈あんなの夢に水を差すのはお母さんもしたくないけど、両手を挙げて応援はできない。きちんと勉強して安定した仕事についてから趣味で描けばいいじゃない」


「私は漫画を仕事にしたいんだってば」


「……じゃあその漫画、他人に見せられる? 漫画家は人に読んでもらってお金をもらうのが仕事なのよ。今、杏奈がどんな漫画描いてるのか知らないけど、たくさんの人に認めてもらえる自信ある?」


「……」


 他人に読まれるのが仕事、と言うのがグサリと来た。


 漫画家は漫画をただ描けばいいだけじゃないんだ。


 他人に読んでもらって面白いって言ってもらわないと話にならない。


 ……でも、今の漫画を誰かに見せられるかと言ったら無理だ。


 せめてもっと上手くなったら見せてもいいかもだけど、そんな日は来るんだろうか。


 誰にも見せられないままじゃダメだと分かっているのに、見せる勇気もない。


 そんな中途半端な自分に、もやもやが残った。



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