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MMORPG異世界勇者たちの伝説  作者: アラベ幻灯


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5/9

二つの王国は戦争の準備を進めている。

これがこの物語の最新エピソードです。楽しんでいただけたら嬉しいです。

新日本と栄光の日本――

二つの「日本」は、互いに相手を滅ぼす準備を、静かに、そして確実に始めていた。


戦は、叫びから始まるのではない。

戦は、土と鉄と汗の匂いの中で、ゆっくりと腐るように始まる。


まず整えられたのは、経済だった。


剣は土からは生えない。

鎧もまた、祈りからは生まれない。

すべては、耕し、掘り、育て、削り、叩くことから始まる。


この世界の資源は、地球と大きくは変わらなかった。

それが救いなのか、あるいは絶望なのかは、誰にも分からなかったが。


新日本は、西北の大地を支配していた。


風は強く、土は粗く、空はどこか遠かった。

そこでは、じゃがいもとトマトと小麦が育てられていた。

水辺では漁が行われ、牛が飼われていた。


不安定で、荒削りで、だが確かに生きている土地だった。


一方――

栄光の日本は、南東の地に根を張っていた。


整えられた水路。

規則正しく並ぶ稲。

乾いた空気の中で干される木の実。

そして、土に埋められた芋。


鶏と豚が飼われていた。

それらはすべて、ゲームマスターによって配置された「NPC」だった。



決定的な差は、地中にあった。


栄光の日本は、鉄と石炭を持っていた。

重く、冷たく、そして世界を殺すために必要な資源。


新日本は、石炭と石灰岩を持っていた。

火と骨のような石。

鉄を持たぬ代わりに、別の形で武器を生み出すしかなかった。


やがて、両者は同じ結論に至る。


――武器を作れ。


そうして、鍛冶場が生まれた。


新日本の鍛冶は、粗雑だった。

叩き方も、焼き方も、すべてが手探りだった。

刃は歪み、鎧は重く、そして壊れやすかった。


それでも彼らは叩き続けた。

血が滲む手で、鉄を掴み、形にした。

それがなければ、明日が来ないと知っていたからだ。


対して――

栄光の日本には、「技」があった。


そこには、かつて日本で名を馳せた鍛冶師たちがいた。

刀鍛冶。甲冑師。火薬職人。


彼らは若くはなかった。

だが、その手は覚えていた。


火の色。

鉄の鳴き声。

叩くべき瞬間。


打たれた刃は、滑らかで、冷たく、そして美しかった。

無駄がなく、迷いがなかった。


まるでそれは、殺すために生まれてきたかのようだった。


やがて、火薬も作られ始める。


粗末な大砲。

不安定な鉄の筒。

だが、それでも人を砕くには十分だった。


戦国の再現。

だがそれは、歴史の再現ではない。


ただの模倣だった。

魂の抜けた、形だけの暴力。


そして、そのすべてを隔てるものがあった。


空っぽ国々。


新日本と栄光の日本の間に広がる、広大な空白地帯。

草は生えている。

地形もある。

空も、風も、存在している。


だが――


そこには、人間もない。



足を踏み入れた者は、言葉を失った。


距離感が狂う。

歩いても、歩いても、同じ景色が続く。

振り返ると、来たはずの道が消えている。


音が、遅れて届く。

あるいは、先に聞こえる。


何かが「ずれている」。


だが、それが何なのかを理解する前に、

人は本能的にそこから離れた。


両陣営は、この空白を境界とした。



こうして、世界は整えられていく。


畑が耕され、

鉄が打たれ、

火薬が練られ、

兵が集められる。


すべては、来るべき戦のために。


だが――


そのすべてを、空の彼方から見下ろすゲームマスターたちは、

まったく別のことを考えていた。


ある者は、笑っていた。

ある者は、興味を失っていた。

ある者は、まったく関係のない結論に飛びついていた。


「もし地面を液体にしたら、どうなるだろう」


「いや、時間を逆にしたほうが面白い」


「違う、そもそも“戦い”という概念を削除してみるのはどうか」


彼らの思考は、繋がっていなかった。

連続していなかった。

意味すら、共有されていなかった。


それでも彼らは、確かにこの世界を支配していた。


人間たちは、武器を作り、秩序を築き、戦の準備を整えていく。


だがそのすべては――


次の瞬間、無意味になる可能性を孕んでいた。


それでも、止まることはできない。


止まった瞬間、

自分が「何者でもなくなる」と知っているからだ。


鉄は叩かれ続ける。

土は耕され続ける。

人は働き続ける。


かつての世界と、何一つ変わらないように。


ただ一つ違うのは――


この世界では、

そのすべてが報われる保証が、どこにも存在しないということだった。

このエピソードを楽しんでいただけたなら幸いです。次のエピソードも近いうちにアップロードします。

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