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君の僕  作者: 藤
9/12

僕の新しい世界part2

 驚いたのが疾風だ。

 空色が怒るとすんなりと切り替えてきた。

 元来素直な性格だ,自分が悪いと思えば謝る事が出来る子だった。

 竹を割った様なとは彼の様な人を言うのだろう。


「ごめんなさい!」


 ばっと頭を下げる。

 いっそ清々しい程だ。

 そんな疾風の対応に月はとても好ましく思った。

 月の好きなタイプの人間なのだから、端から相性は良かったのだろう。


「疾風………そなたは鴉天狗の一族で有ろう?……プライドの高いそなたら鴉天狗の一族が人間に興味があるとは驚きだな」


 勿論、からかいで言っている言葉ではない。

 其れぐらい妖怪の世界では珍しい事だった。最も、月からすれば、空色が良ければ問題はないし、位の高い鴉天狗一族の少年が空色の側に居てくれれば少しは安心と言ったところだ。

 驚きなのが空色の妖怪に好かれる能力だった。

 月自身がこの空色と言う少年を何故か助けしまった事と言い、心が大切にしている事と言い、それら全ては結局のところとてもシンプルで、ただこの少年が好ましいと言う一言だった。


「解ってくれて有り難う」


 疾風の謝罪に、空色はとても暖かな笑顔で返した。

 それを見ていた疾風は、まるで飼い主に誉められた飼い犬の様に喜んだ。

 尻尾が見える様だと感じたのは心もだった。


 二人は校内の昇降口迄の通路を、心と月の前を仲良く並んで歩いている。

 人間のしかも一番愛情が欲しい、母親には嫌われていたが、人間以外の者には好かれるとは、何とも皮肉な事だった。

 月と心は空色を教室まで届けるとそのまま校長室に向かった。 昔馴染みの校長は、人間ではあるが、妻は妖怪と言う変わり者だが、親身に相談に乗ってくれた。 だからなのか、月とは気が合い理由を説明すると二つ返事で対応を了解してくれた。


 空色はみんなと一緒に受ける授業の他に特別な授業を受けることになった。

 だがこれは空色に限った事ではなく、他の子供も個別に必要なら授業を受ける。

 人に化けるのが苦手なら、上手に化けられる様に、人の世に上手く馴染めないなら、人間の常識を教える授業を。 この学校は、人生らざる者たちと上手くこの世に馴染めない者たちの救いの場だった。

 この学校は、校長が自身の妻とその子供の為に作った学校で、創立は20年程と言う比較的に日の浅い物だったがそれでもここまでの規模になったのは、校長であり、理事長でもあるこの男の力量であり、それほどまでに妖怪たちにとって、半妖怪にとって必要な場所だったからに他ならない。

 その点を月も心もかっており空色を預けようと考えた要因だった。


 月達と離れた空色と疾風は席につき話をしていた。

 窓際で、疾風が空色の直ぐ前の席に座っている。 疾風はと言うと、先生の机の目の前、つまり窓際の一番前の席が問題時である彼の指定席だった。

 気持ちが良い風がカーテンを揺らしているなか、疾風は後ろ向きに腰掛けながらニコニコと空色に話しかける。


「なあなあ、空色は人間だよな!……何でこの学科に来たんだ?」


 もっともな質問だ、何故ならここは妖怪が通う特別進学科と人間が通う普通科、人間なら必ず普通科に通うことになるからだ。

 だが、大人ならその特異性を理解しオブラートに包むだろう。 だが、疾風は子供で良くも悪くも純粋だったからそれがどんな質問なのかが解っていなかった。

 数拍置いて空色は答えた。


「僕にもここは特別な場所だって理解しているよ。でも、母に捨てられて………違うか、捨てたのは、僕の方だ。月さんに拾ってもらって……今までで通った事が無かったから、学校に通った方がいいって言われて、だから、僕はこの学校に来たんだ。きっとこの学校は僕にとって必要な事だと思うから,この学校に通うのに何にも迷いはないよ?……疾風達にとってはいい迷惑かも知れないけれど」


 疾風は空色の言葉を心で理解する様に、数拍措いた後


「そっか、まあ、俺は空色に会えて良かったけどな」


 と答えた。


 その日から本格的な空色の妖怪学校生活が始まった。

 正直、今までで基本的な教育等受けたことが無かったから、読み書きがまず出来なかった。

 こう見えて疾風は勉強ができた、この少年はヤンチャだがバカじゃない。

 やらなければならない事は理解していて、幼くても自分を持っていた。

 そんな疾風は、空色が教育を受けたことがない事を馬鹿にする事なく、友達として根気強く、丁寧に教えてくれた。

 元々聡い空色だから、直ぐに色々なことを飲み飲んだ。

 一週間を過ぎた頃には平仮名から、カタカナ、果ては簡単な漢字まで理解していた。

 空色が学校に馴れるまで、特別授業は延期となっている。

 初日の帰りがけ、空を飛んでいた疾風の目に前の大きな木の上に綺麗な長身の美人が立っている。

 確か空色と一緒にいた心とか言う奴だ。

 疾風は何故彼女が自分を待ち受ける様にこの場にいるのか理解できなかった。





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