第49話 魔女の自然歩道を作った
山を見ていると、未だに胸が締め付けられる思いがします。
あの冬山で滑落してゆく自分と、私の方に手を差し伸べるユズキとアツシさん。
魔女の家の北側に連なる山々を仰ぎ見ると。『そこに山があるからだ』の言葉が口に上がってきます。
好きなんです。足の置き場を一歩一歩確認しながら、足を運ぶことが好きなんです。たまに蛇さんが横たわっているのに出くわすと、心臓が止まりそうになりますが。時々立ち止まって、周囲を見渡すと自然の中に抱かれた自分を感じて、ほっとします。まあ、この気持ちは言葉では言い尽くせません。
よし!。小さななこぶしを胸の前で固めました。
各地に、『魔女の自然歩道』を作りましょう。
そして、私が!、時々そこを歩くのです。
「サナエさん。『魔女の自然歩道』を作ろうと思います。こちらの計画書を見てください」
1.皆が利用できます。但し馬車は通行できません。
2、各神殿をつなぎます
3、基本は道ですが、山あり草原あり、谷あり、海ありで範囲を定めます
4、道幅は、1メートルにします。(馬車を通させない幅)
5、踏み固められた土道で、所により階段や石畳があります。
6、各神殿の周辺に50キロメートルを目安に敷設する。
何のために?
それは、私の娯楽です!。言い切りました。
だって、この星のために尽くしているのですから、それなりのご褒美をもらっても良いかと思います。
ゆっくりと、一人で歩きたいのです。
「それは、また大構想ですね。私たちも利用できますか?」
「もちろんです。全ての人が利用できます。余暇の過ごし方の一つとして、ハイキングを広めようと思っています」
「ハイキング?ですか?」
「ハイキングとは、なだらかな山道を気軽に歩き、自然を楽しむことです」
「うーん。いつも歩いている道???」とドラコちゃんが首を傾げています。
そうですね。この世界は、普通の道がハイキングコースですね。
ただ、『魔女の自然歩道』は、歩行者専用ですが、この世界ではピンときませんね。
うーん、企画倒れですか!!
いや、いくつか作ってみて、反響を聞いてみましょう。
そうそう、なぜかアランとドラコちゃんは、未だに私のそばを離れません。結婚式の準備に忙しいのでは?。
問題は、どのようにして道を作るかですね。
私の魔法も限界がありますし、各神殿の周辺に50キロメートルを敷設するとしたら、総延長は2000キロメートルを超えますね。まず、ルートを決めます。そして、魔女隊を現地に向かわせて測量します。
安全のためモンスターや魔物、獣などから、防ぐことを考えましたが。維持が大変なのと面白みがなくなります。
さて、測量が済みましたので、ガルバ王国のフロンティア町から、西へ50キロメートル伸ばします。
もう一つ、サハラ王国の一角村から北へ30キロメートルと南へ20キロメートル伸ばします。
魔女隊を現地に運んで、ルートを確かめながら敷設してゆきました。10キロメートルごとに休憩所を作りました。
待ちに待った今日が来ました。
ガルバ王国のフロンティア町で、開通式を行っています。
魔女命で各国から宰相クラスを招きました。”集まれ”ということです。それから、一般家族も参加させました。
なんだなんだ!の騒音に、『だまらっしゃい』と一声、発しました。もう、恐怖の魔女です。
しかし、ちんちくりんな魔女が、強がっても事態の収拾には至りませんでした。
そうは言いながらも有能な魔女隊がイベントを進め、無事終わりました。後は飲めや歌えや、子供たちは腹いっぱい食べて、三々五々、会場を後にしました。
今代の魔女の横暴と気まぐれからできた『魔女の自然歩道』は、各地から敷設依頼があって、6ヶ月で全ルートを敷設し終わりました。そして、調査によると、次第にハイキング熱が上がって、利用者が増えたそうです。
めでたしめでたし。
とはいう、私もハイキングコースに出向いて、一人を堪能しています。まあ、実際は私を発見した人々が集まって、キャンプで大騒ぎが定番になりました。
”今代の魔女様は可愛くて、頼もしい?”と評判になりました。
この『魔女の自然歩道』は、思わぬ副次効果がありました。道のりには、谷あり川あり草原ありなので、新地を開拓するものが続出して、道沿いに村がたくさんできたのです。耕作地や放牧地が広がりました。そして、人々が豊かになりました。
神様に褒めてもらおっと!!
(恵さんへ。魔女の特権を使いました。でも、皆が喜んでくれたので良しとします)




