第22話 品種改良が半端じゃない
まず、トマトです。こちら世界のトマトは中型で酸っぱいのです。大きくて甘いものはありません。だからサンドウィッチには向きません。
町の様子を見ると、煮込み料理やピューレ、焼きトマトなどの料理を流行らすのも良いですね。ポンデローザみたいな、甘すぎず酸味が多いものも作ってみましょうか。
「まず、リョウ。こちらに来て!」
リョウの手にトマトの種をのせました。
「リョウ。種を見ながら芽が出るところを思い浮かべて、”根を出せ、芽を出せ、ニュルリンパ”と呪文を唱えて」
リョウの呪文が発動したことを確認して、種を畝に蒔かせます。
「と、水を上げると」
「「「わお!!」」」
あら不思議、芽が出てきました。
「私の魔法で一週間ぐらいで、実がなるようにしたので、その時収穫しましょう」
「えぇ・・。そんなに早く??」
ランダムに異なる形質が発現するように魔法をかけたので、一週間後には様々なトマトが鈴なりになりました。その中から、これはと思うものをかごに入れてゆきます。とりあえずポンデローザ、完熟タイプ、小さいもの、中ぐらいのもの、大きいものなどをテーブルの上に並べます。
そして、熱を加えた調理に向くもの、サラダなど生食に向くもの、甘くておやつに向くもの、3種類を選定した。ポントマ、モモトマ、プチトマと名付けた。後は、アオシのタツヤとモモコのキャリーに種の量産をやってもらいましょう。1か月後にはカフェで、それらを使った料理の試食会を企画しましょう。
「この、プチトマは甘くておいしいですね」
「この大きいのをがぶりと うめーぇ」
おい、ヤギかよ? なんで、アランがここにいるのですか? それにアンズちゃんも。
「ジジは食べないよね」
「肉が良いけれど、たまには違うものも口に入れてみようかしら。うん。ぺっぺっ!まず!」
「ジジ、行儀が悪いよ」
畑の一角にある東屋で、取れたてのトマトを前にして、お茶タイムにしました。3種のトマトのほかに、いろいろなトマトが並べられています。細長いもの、黄色いもの、頭ほどもあるおおきなもの、青いもの。アランが次々と味見をしてゆきます。
「アラン。この表に味見の結果をまとめてくれますか」
さて、次は茄子ですね。
前世では、中茄子、長茄子、水茄子、青茄子、白茄子などなど沢山種類がありました。調理形態には、煮る・焼く・炒める・漬ける・生食・揚げるなどがあります。などなど。野菜は種類と料理の幅がとっても多いです。
今回は、中茄子、長茄子を作ってみました。
「ぺっ、ぺっ・・ まず!」
食い気バカのアランが、黒光りする茄子にそのまま、かぶりついた結果です。
こんな調子で、ジャガイモ、ピーマン、カボチャ、キューリ、キャベツを収穫しては、選別して、どんな料理にしようかと、考えをめぐらせたのです。
美味しいものを知れば、素材と調理方法の探求に心が移ってゆくはずです。
リリーの花屋のテラスで、日向ぼっこをしていると、来客がありました。
「おはようございます。わたしは、こういうものです」名刺を出してきました。
名刺には、農業組合ミズホ支部長『ヤイノ』とありました。美しい女性でした。
「サヤカ・ミズホです」
腹の探り合いはよくありません。期待通り、彼女は直球を投げてきました。
私が品種改良した作物の特許を譲ってほしいと。
年の頃は40代でしょうか。なかなかの眼力があります。
8才の子供では、販路拡大の方法がありません。良い伝手が出来そうです。
後日、改めて財務担当のカラヤを交えて、商談することになりました。
まずは、ポントマ、モモトマ、プチトマの3つの種を、組合経由で販売していただき、その販売代の5分を私に頂くということと、育て方講習にこちらから人を出すことで話が付きました。実ったトマトにできる種を蒔いても同じものはできないと、付け加えておきました。
まあ、はじめの一歩です。




