シーン15
時間より少し遅れて待ち合わせ場所のゲームショップに到着したわたし達は、さっそく合流した冬子さん達と一緒にボードゲームのコーナーを見て回りました。
「……こないだはなかったやつもいくつかあるな……」
「こないだ?」
わたしが尋ねると、「ああ、前に立夏と来た時な?」と答える晴夜君。
わたしは思わず立夏ちゃんの方を見てしまう……。
「……これは面白そうだが……ちと高いか?」
「ええ、それに難しいし千秋ちゃんにはきついかも……」
冬子さんとそんな事を言い合ってる立夏ちゃん……もちろんデートとかそんなんじゃないんだろうし……って、わたしは何を考えているんだろう。
いくら幼なじみだからっていつも三人で一緒なわけはない、わたしと晴夜君が二人で遊ぶことだってあるし、晴夜君抜きで女の子同士な時だってあるんだから。
そう言い聞かせてみたものの、今日はどうしても隣に立つ男の子の事を変に意識してしまう……。
「しかし……やはりこうして箱だけ見ててもどれが面白いんだか分からないな?」
「そうだねぇ……結局は立夏ちゃんしか詳しい人はいないんもんね?」
その意味では立夏ちゃんと買ったゲームを運ぶために車を運転できる冬子さんがいれば良かったんだけど、やっぱりみんなでお金を出すとなると立夏ちゃんも自分の判断だけじゃ選びづらいだろうし、仕方ないとかな。
「あれ? これってテレビでやってたやつかな?」
「ん? そうなのか? 面白そうだったか?」
「う~ん……実はあんまり覚えてない……」
「……何だよそりゃ……」
快斗君と瑞樹さんの声が聞こえる、仲は良さそうだけどお互いに変に意識してはなさそうな自然なやり取り……きっと少し前のわたしも晴夜君とはあんな風に話していたんだろな。
今もきっと他の人からは同じ風に見えているとは思う……だって、そういう風にしようって意識しているから……。
今までは無意識にしていた事を、少しとはいえ意識していないと出来なかった……。
「……春香、ぼーっとしてどうした?」
「……へ? ああ……ぼーってしてた?」
晴夜君が心配そうな顔を向けてくる、でも流石に本当の事を言うわけにはいかないし……どうしようと思っていたら、「ひょっとして腹が減ってるのか?」と聞いてきた。
「……はい?」
「いや……だってお前結局朝ごはん抜いたろ?」
晴夜君や立夏ちゃんは気にしないで良いって言ってくれた、携帯電話で連絡を入れればいいだけだから。 でも、それでもみんなを待たせちゃうには変わりないから悪いと思って朝ごはんを食べなかったのだ。
「あ……うん……やっぱりちょっとお腹空いたかなぁ……」
「だったらコンビニにでも行ったらどうだ? 近くにあったと思ったけど」
そう提案してくれる、本当にお腹もすいてるからそうしたいんだけど、実はそれには致命的な問題があった……。
「実は……お財布を忘れちゃって……」
照れ笑いをしながら白状すると、晴夜君は「やれやれ……」と言いながら誰かの姿を探すように顔を動かした。
「冬子姉さん、俺と春香でちょっとコンビニ行ってきていいか?」
「コンビニだと?」
首を傾げる冬子さんに晴夜君は事情を説明した。
「ああ、なら仕方ないな……行ってこい」
許可が出たので「んじゃ、行くか?」と行ってきたけど、私は少し困惑した。
「でも……」
「心配すんな、パンのひとつやふたつくらい奢るよ」
晴夜君なら絶対そういうと思った……というか、奢る事はあってもお金の貸し借りとはした事はないのがわたし達三人なんだけどね。
でも、今日は流石に悪い気がする。 だって、ボードゲーム購入にお金を出したからお小遣いはあまり残ってないはずだもの……まあ、わたしもそれは同じなんだけど。
それを口に出そうとしたんだけど、「だから言ったのに……」という心配そうな立夏ちゃんの声に慌てて止めた。 だって、そんな事をこの場で言ったらきっと気を遣わせちゃうから……。
なので、とにかくこの場は晴夜君の言う通りにするしかないと思う。
二人でゲームショップを出て向かったコンビニは五分も掛からない場所にあった。
そこでクリームパンとパックのコーヒー牛乳を買って、そのまま店の前で食べちゃうことにした。
「……はむ……晴夜君、後でお金はちゃんと返すからね……」
一口齧ってからそう言った。
そもそも断るという選択もあったんだけどやはり空腹には勝てなかったし、こうなっちゃってはわたしが何も食べないってなると冬子さんや立夏ちゃんも心配させちゃうと思うしね。
「ん? 別にいいって、俺達の仲だろう?」
「そうなんだけど……晴夜君だってお小遣いもう少ないでしょう?」
指摘すると「そうなんだけどな……」と肩を竦めながら苦笑する。
「でも、まぁ……奢るって言っちゃたしな? ここは恰好を付けさせてくれよ?」
「男の子のプライド?」
「まあ、そういう事だよ」
こうなると何を言っても聞いてくれそうにないし、素直に好意を受けよう。
それに、晴夜君にとっては立夏ちゃんや他のみんなと同じ幼なじみという感情からでも、いろいろと気を遣ってくれるのは少し嬉しいし。
そんな事を考えながらクリームパンの包みと空になったパックをゴミ箱に捨てて晴夜君のところに戻ろうとした瞬間に、バックで駐車しようとしていた車が加速したのに気が付いた。
「晴夜君っ!!」
わたしが叫ぶのと車と晴夜君の身体が衝突したのは同時だった……。




