拉致
さて、件のダンジョンにと足を踏み入れた訳だが、確かにダンジョンという事がモロ分かりだ。
とにかくバカ正直に真直ぐに道が続いている。
採掘の跡もまったく消せていない。
正直これでは洞窟ではなく、土で出来た廊下と言った方が良い。
が、正直そこまでこだわってたのは俺らぐらいなんだよなぁ。
冒険者はそんなに気にしてないし。
まぁダンジョンマスターに気づかれるかどうかが問題だが。
中は真っ暗だが、向こう側まで見えている。
月明かりで僅かにダンジョン内が見えるようになっている。
が、俺達には関係ないんですけどね。
むしろこういう形式だと、ダンジョン内が明るくなってしまう。
自分としては奇襲がしづらくなるから、この形は好みではない。
まぁ考えても仕方ないか。
ガンガン進もう。
中では白い玉は使わない事に。
正直使ってももったいないだけだ。
ここのダンジョンマスターには、他のダンジョンマスターだとバレるだろう。
が、冷静に考えてモニターで俺の《ステータス》を見れば一目瞭然だ。
今更ねぇ。
さて、ダンジョンの中を悠々と歩く。
ぶっちゃけ仕掛けてくることは無いだろうと思う。
仕掛けてくるとしたら、俺達よりずっと強いとかそんなんだろうか。
まぁ念の為コータに《警戒》で16匹のコウモリをフル展開させておく。
繰り返すが、俺がマスターなのは相手も一目瞭然のはずだ。
コータの正体を気づかれたところでどうでもいい。
どうやら、ダンジョンはまだ出来立てのようだ。
地面が踏み荒らされた形跡がない。
俺達のダンジョンは元から多少スコップで地面も荒らした。
が、何より戦争で踏み荒らされている。
だからこんな歩きやすいダンジョンはちょっと羨ましい。
ちょっとした皮肉でもあるが。
少し歩いていると、ふわりと体が浮かぶ感覚に襲われた。
これは、まさか転送?
転送の罠?喧嘩を売るってのか?
無警戒だったが、これに関しては警戒しても仕方ないところがある。
とにかく何があっても対応できるようにしよう。
タイミングを見計らってコータとへきへきを呼び寄せよう。
場合によってはコボルド達も少し呼び寄せるか。
緊急事態なので、白米は諦めて一度帰る選択肢も考えなくては。
……カロリーナより強い二人組だったら無理かなー。
そんなことを考えながら転送された先は、やはりというかやや広い部屋だった。
目の前に二人の少年。何か動揺してないか?
しかし手にはモニターを持っているし、お供モンスターらしきものも近くで飛んでいる。
カロリーナと同じ鳥のタイプか。もう1匹は見当たらない。
しかしその鳥のお供モンスターは明らかに小さかった。
ター君と出会った時より小さい。多分戦闘レべル10未満だろう。
そう考えると明らかに少年たちも、メーシャより後にこの世界に来たと考えられる。
顔が似てるので兄弟だろうか。
6才と10才ぐらいに見える。
彼らの動揺から察するに、どうやら何か間違えたのだろうか。
だったらとっとと帰してもらった方が……。
……いや、ダメだ。理解した。
彼らはコータを狙ったのか。
戦闘レベルも見ず、あの場の『一番レベルの低い冒険者』とかって設定にしたのだろうか。
冒険者はいない。
つまり一番近い条件なのはダンジョンマスターである俺だ。
なるほど、コータをモンスターではなく冒険者と勘違いすれば、こういう事も起きるのか。
モンスターだと気づいていれば、そもそも呼び寄せがあるから拉致なんて行わないはずだ。
しかし、だとしたらお仕置きをしなければならないな。
ウチの可愛いコータを、未遂とはいえ拉致しようとした。
そう考えると胸の中に怒りが湧いてくる。
人に喧嘩を売ったんだ。覚悟しろよ?




