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初めてのおつかい


 さて深夜に出発した訳だが、実はたいした理由がある訳ではない。

 強いて言えば大分夏も真っ盛りになって来て暑くなってきたからというのが正しいかもしれない。

 真夏は深夜の散歩が一番だよ。昼間にどこか行くなんてダメだよ。だから学校なんて無かったんや。うん。


「マスターと二人でお散歩なんて楽しみ!」

「へきへきもいるだろ、まぁでもこの姿になってからは初めてかもな」


 そういえば最近はハナと一緒にどこか行くという機会が多かった。

 まぁ俺が英語とか話せないからそりゃそうといえばそうなんだが。


「そういえば、マスターとハナちゃんっていつから一緒なの?」

「んーいつからだろうなー。幼稚園……5歳の時にはもう一緒に遊んでた気がする」

「へー」


 そういえばコータって何才なんだろう。

 まだ二か月も経ってないんじゃないか?計算してないけど。


「マスターはハナちゃんのこと大好き?」

「そりゃあな。まぁコータも大好きだけどな!」

「わーい」


 一応これは本心だ。

 現実世界への帰還が成功し、責任をとれる年になれば即結婚して子供作ってもいい。

 別にこの世界に来る前でも、こいつと結婚するんだろうなぁとはうっすら思ってはいた。

 しかし、ちょっとだけ違う事も思ってしまう自分がいる。


 俺もハナも、最初は一心不乱に強化した。

 それは脱出の道を見つけるというものだ。

 俺達がダンジョンや自分たちを強化してきたのはその為だ。


 ダンジョンを作りまずマーシュへと向かった。

 そこで調味料という大事なものが、仕様によって入手困難な事を知った。

 そしてそれを求め、また一心不乱に強さを求めた。


 俺達は間違いなく強くはなってきている。

 しかし脱出への道はカケラも見つからない。

 調味料は少しずつ光が見いだせている。


 そんな中、ふと思ってしまう時がある。

 この世界に滞在しててもいいんじゃないか?と。


 もちろん脱出はしたい。

 現実世界に俺もハナも友人がいる。家族もいる。

 だが、こちらの世界にも仲間がいるし、カロリーナやメーシャといった知り合いも出来た。

 現実世界では生活の為に必死で働かなければならない。

 しかしこの世界はどうだ?

 生活はある程度保障されてる。食糧も安い。税金もない。


 ハナがぽつりとある事を言ったことがある。

 ポチとタマの雇い主についてだ。

 もしかしたら、彼は現実世界の人間ではないか?と。

 この世界には極稀にモンスターを飼い馴らす人がいると聞いたが、見た事がない。

 その人物はモンスターを飼い馴らし、ダンジョンを攻略し、ある日突然姿を消した。

 ここに一つの仮説が生まれる。


 その人物は、デバッカーだったのではないか?ということだ。

 それも日本人の。

 あくまで勘に近いものだが、一理ある気がしている。


 そんなデバッカーが存在した後どうなった?

 鬼姉妹は取り残されたのだ。

 人から隠れるように暮らしていた。二年間も。


 俺達が脱出した場合、モンスターたちはどうなるのだろうか。

 急に安全が保障されなくなり、ダンジョン外へ放り出されてしまうのだろうか。

 コータも、へきへきも。


「……ター!マスター!」

「ん?」

「もしかしてアレじゃないかな!そのダンジョン!」


 考え事をしていたら、例のダンジョンの前まで来ていたらしい。

 ボーっとしていたのか。いかんいかん。

 とにかく今は強化を考える時期だろう。

 いや、その前に白米だな。うん。

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