ジャック
さて、カロリーナはプランBの為敵に向かっていった。
メーシャはレベルがモリモリ上がってるらしく、もう何も怖くないと言わんばかりに緑の騎士に向かっている。
今のうちに俺たちは2本目のしっぽツタを対処しよう。
担当は俺とコータ、そしてへきへきだ。
へきへきは主に乗り物担当だ。すっかり板についてきたようだ。
「やーい!このツタやろう!悔しかったら攻撃しな!」
「へーん!マスターの言う通りだもん!根性ないならブドウでも作ってな!」
俺とコータでしっぽツタを挑発しながら、しっぽツタの攻撃射程ギリギリをうろうろする。
今回はコータの居合切りが目的だ。
「つまり先っぽだけでいい!」
「先っぽだけ!先っぽだけでいいから!」
コータが隣で凄い不審な言葉を放っている。
おとーさんそんな言葉教えたつもりないんだけどなぁ……。
というわけで、現在しっぽツタの攻撃を待っている。
これが中々じれったい。
しっぽツタの方も、こっちが何かをやろうとしている事ぐらい気づいているのだろうか。
「……マスター、来る!」
「おう!」
左右の動きを混ぜながら後ろに下がる。
直後、ツタの巨大な鞭が、俺たちの目の前に振り下ろされた。
当たったら一たまりもないだろう。
地面に跡が出来ている。
しかし、今がチャンスだ!
一斉に60のゴーレムを召喚する。
そして、全員で上から抑え込む。
俺も参加して、一番先端を思いっきり掴んで振り放されないようにする。
「コータ、やれ!」
「闇より暗き鬼の遺志よ、我が真名の契約に基づき、我らが刀に力を宿したまえ!」
「どこで覚えたんだよそんな無駄口上!いいから早くやれよ!」
「はーい」
コータはサクっと《短刀》に《幻惑》と《撹乱》を込めた。
そしてプスリとしっぽツタに刺した。
「いたっ」
「どうした?大丈夫か?」
「このツタ、コータよりかなりレベルが高いみたい」
顔をしかめるコータ。
どうやら頭痛がするらしい。
「大丈夫か?無理ならやめてもいいぞ?」
「やる!コータだって、吸血鬼の端くれなんだから……!」
「……分かった」
よく分からないが、コータにはコータなりのプライドがあるのだろう。
ならばそれを守ってやるのがマスターの俺の仕事だ。
しかし、そんなに大変な事なのか。額から汗が流れている。
俺に出来る事は、このツタがこれ以上暴れないように全力で抑え込む事だ。
1分ほどが経過した。
ツタが暴れるのは大分収まり、ゴーレムのうちの20体はメーシャの援護に行かせた。
コータの息が上がっている。
やや目も虚ろだ。
「……マスター」
「どうした?」
「もうちょっとしたら、コータは多分倒れると思う。それが成功の合図」
「おい、本当に大丈夫なのか?」
「マスターがスキルを使うと硬直が起きるでしょ?それの凄いのがもうちょっとしたらコータに来るの」
どうやら、このしっぽツタはかなりの上位のモンスターであり、レベルも30中盤だという。
それをレベル20のコータが《幻惑》で操作する。その行動はかなりスキルを使いまくった状態に近いのだという。
よって、この《幻惑》と《撹乱》を合併させたものをしっぽツタに適用した場合、コータは長い硬直が適用されると。
だが、逆に言えば体に悪影響が出るものではないというのは確かだ。
「マスター。もしこのスキルが終わったら、このツタはマスターを自分の本体だと認識するの。だからあとはお願いするね」
「あぁ、ありがとうな。ご褒美に撫でてやろう」
「えへへー」
「へきへき、もしコータが倒れたら、そのままハナの元へ届けてくれ。分かったな?」
へきへきは首を縦に振った。
次の瞬間、まるで糸が切れたようにコータの体から力が抜けた。
へきへきはそれを確認すると、猛ダッシュで自分の主人の元に走って行った。
「さて、お前は俺の言う事が分かるか?分かるならこのツタを先っぽだけ下に動かせ」
先端を掴む俺の手に、下方向への力が僅かに加わったのが分かる。
コータは成功したようだ。
なるほど、これを利用すればモンスターの調教も出来そうだな。
恐らくこのしっぽツタは、自分の本体が破壊されると消えてしまうだろう。
それがちょっともったいない気がする。こんな強そうな奴、ボス部屋に欲しかった。
「あそこに見えるドラゴンみたいな奴が分かるか?あいつと、あいつが出してくるモンスター。それがお前の敵だ。分かるな?」
再び下方向へ力が加わる。
抑え込んでいるゴーレムへの指示を解除し、先にメーシャや先発のゴーレムたちと合流するように指示をする。
「いいか?あいつらを全て倒せとは言わない。倒せる奴は倒し、倒せない奴は邪魔をしろ。わかったな?」
しっぽツタは了解の合図の代わりに、地面へと潜って行った。
3本あったしっぽツタの1本は俺が倒し、1本はカロリーナが遠くまで誘導し、最後の1本はジャックする事に成功した。
俺は確信した。
この戦い、勝てる。




