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第零話 29.5日の憂愁
余命宣告からもう五ヶ月。
自分がもうすぐ死ぬという実感がないまま二十五歳になった。
あと一年半くらいか。
ずっと「死」って最も人の感情を動かすものだと思っていた。
でも家族も恋人も友人もいない私が死んでも誰も悲しまないよな。
改めて考えると、死を悲しんでくれる人がいるって幸せなことなんだな。
私が死んだら誰か火葬してくれるかな。
お墓には入れないよな。
マンションの大家さんには迷惑をかけるだろうな、片付けとか。
あのアニメの最終回は見れるかな。
もう一回花火を見に行けるかな。
あと何本映画を見れるかな。
最期の瞬間まで「死ぬのが怖い」って感じるのかな。
走馬灯って本当に見えるの?
死ぬ日の運勢は最下位だろうな。
死ぬ日の天気は曇りのち雨かな。
「死ぬ」って痛いのかな。
ドラマみたいに私の「死」って美化されるのかな。
「明日」が当たり前だと感じなくなるのはいつかな。
一人で死ぬ覚悟はできているつもりだった。
でもやっぱ誰の思い出にも残らず死ぬのは寂しいな、少しだけ。
そんなことを考えながら、ベランダに出てラムネのビー玉を月と重ねる。
あと何回満月を見れるかな。




