表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣豪将軍、辞めました  作者: あかべこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

晩冬の京に響いた突然の隠居宣言の後、足利義輝はまともな供回りもつけず早々に京を去って東海道に入っていた。


山科を越えれば膨大な水を湛えた淡海・琵琶湖が目に入り、ほう……と彼は感嘆の声を上げた。


朽木は向かう時などに淡海を見たことはあれど、そうしてただその美しさに感嘆する余裕など今まで一度もない。


湖畔の茶屋で一息つきながら、ぼんやりと考えていたのはこれからの事であった。


当座の目的地は師匠・塚原卜伝の生誕地である鹿島神宮であるが、急ぐ旅ではないのでちょこちょこ寄り道をしながら歩く予定だ。


それとは別に、気にすることが一つ。


「新しい名前、どうするか……」


足利の名を捨てて暮らすので姓も変えるのだから名前も変えるべきか?と考えていたのだ。


周りの人間からすると今考えるべきはそこじゃないのだが、本人にとっては結構大切な問題であった。


なんせ今の自分は剣術家であり、将軍ではない。


ぼんやりと冬の空を見上げていると、幼児の頃の記憶が蘇る。


『菊憧丸、雪遊びはほどほどにな。風邪を引くぞ』


そんな遠い日の記憶が冬の空に浮かんでは消えていく。


「菊憧……菊堂……?」


ふと焦点が定まったように足元を見下ろし、その地面に足原菊堂と書いてみる。


(これだ、これが私の新しい名前だ!)


師匠の名前にかつて背負っていた姓、そして父から貰った幼名がカチリとはまったような気がした。


新しい名前は決まった。ここからはこの名前を背負い、新しい人生を生きていくのだ。



*****



新しい名前を決めたところで、再びその足は東へと向かっていった。


近江を出ようという頃、後ろからつけられている気配を感じ、じっとその視線の気配を辿る。


感覚を研ぎ澄ませてじっと世界を見繕えば、木陰に1人と草むらに1人。敵意というほどのものは感じられない。暗殺というよりも監視、というところか。


「何の用だ?」


返事はない、まだ誤魔化せると思っているのだろう。


小さくため息を吐いてから近くに落ちていた小石をふたつ拾う。


右手と左手にその小石を握ると、視線の主を狙って同時に投げつけた。


すると2人は同時に姿を現した。


どちらも同年代くらいの男だが、片方は僅かに見覚えがある。


(あれは確か六角の抱える忍びだったか……)


もう1人は見覚えのない様相をしている。恐らく織田か徳川で雇ったのだろう。


「で、そこな忍び2人は何の用だ?」

週1日曜日更新です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ