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魔法少女捕獲計画  作者: ネコヅキ
魔法少女捕縛編
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魔法少女捕縛編 六、もう一人の魔法少女。

 傷が完治してから六日が経ち、オレはここカマクラでもう一人の魔法少女を捕まえるべく活動を続けていた。しかし、アリスのネゴシエーションという名のナンパ(というかセクハラ)によって植え付けられた警戒心は、彼女の姿を何処かへと覆い隠していた。


「マスター、フロントから新聞を頂いてきました」

「ああ、ありがとう。アリス」長期戦を見越して借りたホテルの一室で、ルームサービスのモーニングセットに舌鼓を打ちながら差し出された新聞を受け取った。

「世界を救った魔法少女。カマクラ市民を救う。か……」新聞の見出しに書かれた記事には、ここ数日の間に現れた魔法少女が何をしたのかが書かれている。郵便局強盗を退治したとか暴走族を壊滅させたとか。お年寄りの手を取って横断歩道を渡る姿なんかもカメラに収められていた。

「街中、その噂で持ちきりですよ。捕まえなくていいのですか?」真っ白なカップに真っ黒なコーヒーを入れてコトリと目の前に置くアリス。

「そうだな。まぁ、少し放置しておこう」

「何故ですか?! 魔法少女を捕まえるのは私達の使命なのですよ!」少し興奮気味のアリスにまあまあと手の平でなだめる。

「それについてはオレに考えがあるんだ。だから今はそっとしておいてくれないか?」

「考え、ですか。分かりました。マスターの命令に従います」

「ありがとう。アリス」そう言ってアリスが淹れてくれたコーヒーを一口飲んだ。




 人の営みがまだまだ途切れぬネオン輝く街の中を、屋根から屋根。ビルからビルへと軽々と飛び移る怪しげな人影があった。着地する度に控えめなその胸がふるんと揺れ、ふわりと大きく膨れていたスカートが靡くロングの髪と共に元に戻る。

 その姿はとある場所で見かけるメイドと同じ格好ではあるものの、白のワイシャツに薄赤のメイド服。スカートには幾つもの小さなリボンが縫い付けられ、白のレースがスカートの端から覗いているあたりがその辺のメイドとは違う。


「はあ……」少女は大きなため息を吐いた。色々な事に首を突っ込み過ぎて疲れたため息でもあり、風船を手放した子供を助けたり、溝にハマって動けないでいたトラックを持ち上げたり、お腹を空かせていた猫に餌をあげたりと、人々を助ける事が魔法少女の使命であり彼女の日常であるからだ。にもかかわらず、実りが全くなくて気疲れしたため息でもあった。




「私も出ましょうか?」新聞を差し出しながらアリスが言う。

「いや、以前接触したアリスは顔バレしていると思うべきだろう。別な街に移られては面倒だからな。網に掛かるのを待とうじゃないか」

「網、ですか?」お盆を抱きしめて首を傾げているアリスも中々可愛いな。




「来た来た」少女はその顔に笑みを浮かべながらビルからビルへと飛び移る。長らく待っていた実りが収穫できる所までに迫っていたからだ。少女は気付かれない様に少しづつ人気の無い場所に誘導をして、ビルの谷間の裏路地へと降り立ちその実りを待った。


「ちょっとあなた。一体何をしているの?!」そう言った少女は、正統派の魔法少女らしい格好をしていた。制服を思わせる淡い緑を基調としたミニのワンピース。肩から背中に垂れ下がる小さなマントは太ももに達するほどに長い。腰はコルセットでギュッと締められて花びらのように膨らんだスカートは膝上二十センチ。ほんのちょっと屈んだだけでモロっと見えてしまう丈だが、ニチアサのアニメの様にソコは何故か見えない。クリーム色の髪は太い三つ編みとなって腰にまで届き、小さなベレー帽が頭にちょこんと乗っていた。


「何って?」少女は内心ほくそ笑みながら魔法少女に応える。

「人助けをするのが魔法少女の本分なはずよ」少なくとも少女にとってはそれが魔法少女だった。しかし、この魔法少女にはそれは違うようで、腰に手を当て呆れ顔でため息を吐いた。

「昔はね。だけど、今や私達はお尋ね者よ。あまり派手な事をしていると、この街に委員会からの討伐隊がなだれ込んでくるわ。気を付けた方がいいわよ」これは忠告。と魔法少女は少女に向かって指を差した。

「ご忠告どうも。だけど、派手な事をしていたのは他の魔法少女とコンタクトを取る為だったの」

「私達と?」

「ええ。討伐隊がこの街にやって来ている事を教える為にね。この街に魔法少女が居るのは知ってたし、流石に同業者を放置して一人逃げ出すのも薄情かと思って危ない橋を渡ってでも危険を知らせようと思ったのよ。何せ、最強種だった炎の魔法少女が捕らわれたのだから」

「炎って……シャーマが!?」目をまん丸くして驚く魔法少女。少女は事が順調に運んでいる事に内心でほくそ笑んでいた。


「ええ。私は見たのよ。郊外の丘で討伐隊とシャーマが戦っている所を」

「やっぱりあの戦闘跡は……」親指を咥えて考え込んだ魔法少女。それを見て少女は畳み掛ける。

「知りたくない? あのシャーマがどうやって捕らわれたのか。その方法を知っていれば、対策が出来ると思わない?」少女は魔法少女にソッと耳打ちする。少女が離れると魔法少女は地面に向けていた視線を少女へと注いでいた。少女は確信する。この女も堕ちた、と。

「知りたいわ。教えて」

「ええ、勿論よ」少女は頷き、誰も来るはずのないビルの谷間の裏路地でことさら周りを警戒する様な仕草を見せた後、魔法少女の肩に手を乗せた。そして、自身のポケットを(まさぐ)る。

「それはね……こうしたのよ」

「え?」ポケットから取り出したスマホサイズの真っ黒な物体を魔法少女に向かってかざす。途端、その体から光の粒子の様なモノが体外へと溢れ出して物体へと飲み込まれていく。


「なっ、何これっ!? 何してんのっ?!」

「だから、こうやって封じ込められたのよ」

「ちょっと待って! 離して! いやぁぁっ!」ビルの谷間に魔法少女の悲痛な叫びが木霊する。ほどなく、魔法少女はその全身が光の粒子へと変わり黒い物体に吸い込まれていった。……捕獲完了。



「お。丁度時間か」少女であったオレの体に変化が訪れる。ツルペタだった喉に突起が生まれ、突起があった膨らみがツルペタに戻る。ツルペタだった場所に家出息子が帰還して、名残惜しくも元のオレに戻った。

「アエラス、か」漆黒の端末に記載された情報では、風の魔法少女であるらしい。バストは八十九と、中々な戦闘力を有していた。

「少々時間が掛かったが、これで二人目だな」流石にこんな騙し討ちは他の魔法少女には通用しないだろう。残りは六人。どうやって捕縛しようか考えるだけで頭が痛い。


「おめでとうだにゃ」背後の暗がりから聞き覚えのある声が聞こえた。

「ずいぶんとタイミングが良いな」

「そりゃ、ずっと見ていたからにゃ」見てたんなら手伝えよ。

「これで世界の崩壊がまた遠退いたにゃ」

「にしては嬉しそうには見えないんだが?」

「そんな事はないにゃ。これでも踊り出したくらいに嬉しいにゃ」猫って基本能面だからわかんねーよ。

「で? 次の魔法少女は何処だ?」オレの問い掛けに黒猫はビシッと前足を指し示す。

「次の魔法少女はシズオカだにゃ」

「シズオカか……よし、このまま乗り込むとするか」手の平と拳をパシンと合わせ、次の目的地へと向かう為に一歩を踏み出すと同時に、黒猫が肩に飛び乗った。


「まあ、そんなに慌てるなのにゃ」

「何だ? まだ何か用なのか?」

「勿論だにゃ。どうだにゃ? 女になった感想は」耳元で囁く黒猫の言葉に、オレの動きも止まる。

「試したのだろう? 女の体を。楽しんだのだろう? 女体を」突然、にゃ。口調が外れる黒猫。オレは黒猫のその質問に、答えも否定もしなかった。

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