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〜聖女意思疎通大作戦⑦〜

「ダリキス、私パーティとか参加したことないからマナーとか全然わからない」

「大丈夫です。今日は気軽な立食パーティーですし、マヤ様を皆に紹介するのが目的ですから。カーテシーも無理しなくていいです。マヤ様が異世界からこちらに来られたことは周知されてますので、異世界の挨拶をしてくだされば充分です」

「あ、そうなのね!それならちょっと気が楽かなー」

「ええ、あとは到着を伝えるための花火をあげていただければマヤ様のお役目は終わりです。ゆったり食事でも楽しんでください」

「…ダリキス?花火って…魔術であげるかな?火薬ではなさそうだよね?その…雰囲気的に」

「ええ、マヤ様なら…」


ここでようやく駄犬が私が異世界に来てから"一度も"魔術と呼ばれるこの世界特有の事象を使ったことがないことに気がついたようだ。

黒目を見開き固まっている。本当お人形さんみたい。


「おーい!駄犬?たぶん大丈夫よ?イメージが大事なのよね?魔術って。本の触りに書いてあったわ。王城まで届くようなでっかい花火をイメージして…打ち上げればいいんでしょ?大丈夫!大丈夫!」

「あ、えっと…一回練習しましょう。会場入り前に父と母が挨拶したがってましたがそれどころじゃないので」

そう言うとダリキスは私の腰と膝に手を回し、最も簡単に抱き上げてしまった。

お姫様抱っこだ。顔が近い。心臓が止まる!


そうしてダリキスに連れてこられたのはウェールズ辺境伯邸の屋上だった。

「パーティーは中庭で行われます。ここならマヤ様の思う花火を上げていただけるかと思います。まず魔術とはその通り体内に巡る魔を使った術のことです。魔は生まれたときに持つ量が決まっており、定説では生まれてから死ぬまでの間に減少していくものでした。マヤ様が回復薬を発案なさるまでは。その魔が尽きることで我々は死を迎えます。魔が尽きる前に病気怪我等で命を落とすこともあります。魔には怪我や病を治癒する力はありません。例外があるとすれば聖女様のお持ちになる聖の力ですが…」

「はい!質問!ポーションはないの?」

「ポーションですか…怪我や病気を治すものというよりは栄養を補助するものですね。あれは」ダリキスはその綺麗な顔を嫌そうに歪めた…あ、不味いんだ。きっと。


「じゃあ怪我したときや病気したときはどうしてるの?お医者さんがいるの?」

「もちろん、医者も薬師もおりますし、不治の病でない限り治療もできます」

「よかった〜。すぐに死ぬ世界でなくて」

ダリキスは曖昧な顔で微笑んだ。


「えっとそれで魔を使って魔術をするにはどうしたらいいの?」

「理屈抜きで簡単に申し上げますと、イメージしたものを形になるように言葉にするのです。例えばこのように…水よ!」

ダリキスの手のひらの上で水がふよふよと浮いている。

「鳥になれ!」

先程まで空いていた水が形を変え水の鳥になる。

「すごい!すごいわ!ツツッターの鳥みたい」

「ツツッター…と言うものに関しては後で聞くとして、このように形を変えることができても性質を変えることはできません」

「大体わかったわ!花火は王城まで届くように大きくするのではなくて、光を遠くまで飛ばすイメージでやってみる!」

光速って言葉があるくらいだもの。パンと瞬時に飛ばせばいいのよ!障害物もない空の上だからできることだけど。


「いくわよ。光よ!陛下に伝言を届けよ!」

私が大声で唱えると空がピカッと光り、すぐに元に戻った。

あとから聞いた話、光を受け取った王城は空が一瞬の光に包まれたあと陛下が読んでいた大事な書類に


【ウェールズに着きました!馬車道の改良求】


という文字がレーザープリントされて大変な騒ぎになったらしい。


「なるほど、今の魔術の応用を使えば文字での独り言も可能ですね」

「ツツッターね!」

「ツツッター…では至急スマホとその作り方を書いた手紙を王城に送るとします。ウェールズには開発費として3割いただき、国営でツツッターの運営とスマホの持ち主の身分管理をしてもらいましょう。でんわは犯罪の温床になりかねないので。さらにスマホ自体を身分証として使えるようにするよう掛け合います」

「…うん!ちゃっかりお金もらって丸投げだね」

「私の手には少々余る代物だったので。あとお金はいくらあってもいいのですよ」

こうして聖女意思疎通大作戦の副産物は国営の通信事業として発展していくことになる。

ダリキスの意外と金にガメツイ現実的な一面を知った私だった。

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