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しろねこ姫の不思議な力  作者: しーにゃ
第6章 しろねこ姫の生徒会活動
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84-I 学院と王妃教育

「あっ姉様」

「お疲れ様です」

「お待たせ。あの後はもう大丈夫かしら?」


 ラウンジには既にレオンハルトとクラウスがいた。二人はわたしを見るなり安心したように微笑んだ。


「ええ、リナ姉様のおかげで少しは大人しくなりましたよ」

「姉様、ありがとう」

「どういたしまして。それは良かったわ」

「ちなみにどんな事をされたんだ?」


 朝の様子を聞いてくるシリウスに、二人が順番に答える。クラウスの話は苦笑いで頷きながら聞いていたシリウス。しかし、レオンハルトの話には流石に唖然としていた。


「……それ、本当にされたのか?」


 レオンハルトが疲れ切った顔で頷くと、シリウスは呆然と呟いた。


「僕ですらそこまではされてないぞ……」


 その発言にレオンハルトとクラウスが食いつく。


「兄上もですか!?」

「是非その話を教えてください!」

「あっああ、それは良いが…」


 ちらりとわたしの方を見てから、シリウスは二人と話し始めた。その内容は、確かにレオンハルトはともかく、クラウスの様子と同じかそれよりも大人しいものだった。


 どうしてここまで差がついたのだろう?


 話を聞きながら考えていたわたしは、ある事に気がついた。それは、学院に入る際の二人の状況について。


 シリウスはずっと前から入学する学年が知られていて、それが変えられる事などなかった。


 しかし、クラウスはつい最近になってその存在が改めて公表された。それは第二王子を知らなかった貴族を、その中でも特に子供が同じ学年の貴族を、大いに慌てさせた。そのせいでクラウスについてあまり知らなかったからこそ、クラウスの気持ちも考えず、あのような典型的なアピールになったのだろう。


 レオンハルトに至っては、陛下の意向で入学が一年早められた。つまり、令嬢達、そしてその親貴族達にとっては思いがけない()()が現れたようなものだろう。さらにクラウスと違って将来はほぼ確実に宰相。貴族達が狙わないわけがなかった。











「……リリー?どうした?」


 考え事をしていたせいかぼうっとしていたわたしがその声に顔を上げると、大きな机には昼食が並べられ、シリウス達は席に着いていた。


「姉様、食べよう?」

「そうね、待たせてごめんなさい」


 わたしも席に着いた。皆で食べ始める。


「何を考えていたんだ?」

「…三人に対する令嬢達の態度の違いについてよ」


 食事に顔を綻ばせつつ、わたしの考えを説明した。


「そうか、なるほどな」


 シリウスが納得する。そして、生徒会の仕事があるとはいえ、落ち着くまではレオンハルト、クラウスと一緒にいる事になった。











 午後の授業も無事に終わり、わたしは馬車に揺られている。学院が始まってからは、三日に一度の王妃教育がある。そのため、学院までエバートが迎えに来たのよ。


 四ヶ月の社交シーズンの間、わたしは毎日のように王妃教育を受けに王宮に通っていた。もちろんエバートが護衛について。その移動時間を使って、わたしはエバートと色々な話をし、護衛となった彼の事を知ろうとした。


 まず騎士になった理由から聞いてみた。


「エバート、貴方どうして騎士を目指したの?」

「……大した事ではありません。ただ、小さい頃から剣が好きだったのです」

「まあ、では夢が叶ったのね?」

「………ええ、そうとも言えます」


 初めのうちは、エバートの真面目さ故かすぐに会話が途切れてしまっていた。わたしの問いかけに答えている間もエバートは真剣な表情を崩さず、辺りの気配を探っていた。


 その姿勢にわたしは騎士のエバートの強さを見た気がした。ある時わたしはそれを小さく口に出した。


「……エバートって、だから強いのね」

「……え?」


 静かな馬車で言ったために、その呟きはエバートにも聞こえたらしい。戸惑ったように聞き返してきた。


「どういう事でしょうか」

「エバート、いつも周りに注意を配ってるわ。そのように絶えず集中し続けるのは、わたしにはきっと出来ない事だわ」


 するとエバートの纏う雰囲気が少し変わった。


「それは、騎士であれば当たり前の事です」

「そうかしら?」

「はい、騎士団に入団して最初の訓練が、絶えず周りに注意を払う事です。剣などの鍛錬はこれが出来てからになります。()()はこの二つは毎日欠かさずに鍛錬して…」


 今まではわたしが聞いた事にしか答えなかったエバートが熱く語り出した。その勢いにわたしは一瞬固まった。話し続けていたエバートはやがてわたしの様子に気がついた。


「あっ、申しわけありません」

「いえ、少し驚いただけよ。エバートは、きっと騎士の鑑なのね」


 そこまで熱意を持って語れるのは、相当騎士を誇りに思っているからだわ。しかし、エバートは首を横に振った。


()如きがそんな、滅相もございません。真に鑑であらせられるのは団長や第一隊長のような方々です」


 第一隊長様に会った事はないけれど、確かにディルクーフェン様は一度見ただけでも、騎士達にかなり信頼されている事が伝わってきた。


「ええ、ディルクーフェン様は素晴らしい方だわ」

「そうですよね!団長は厳しくはありますが、…」


 再び始まったエバートの話は、今度は暫く続いた。






















 そうして話を聞くうちに、エバートの人となりが分かってきた。例えば謙虚な所。真面目な所。そして、常に周りを観察している所。


「…どうかなさいましたか」

「いいえ、何でもないわ」

「そうですか。何か気がつかれましたらお早めにお知らせください」


 ほら、今だってそうだわ。彼はどんな些細な動きでも見逃さない。わたしは外を見て、喧嘩を見つけて少し顔を顰めただけだったのに。


 それでいて、心からディルクーフェン様や第一隊長様を尊敬している。毎日鍛錬をしているのも、彼らのようになりたいからだと言っていたわ。











 王宮に着くと、エバートは王妃教育を受ける部屋まで護衛してくれた。


「では、お帰りの際に参ります」

「ええ、ありがとう」


 礼をして去っていく。わたしは部屋のドアを叩き、姿勢を正して礼をした。


「フランジーナ先生、本日もよろしくお願い致します」

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