諍いの結末
少し長いです。
その声にウィルは動きを止める。
ウィルはこの3人と争い始めた頃から周りに少しずつ村人が集まってきて遠巻きに見られていたことは魔力感知で気付いていたが、誰も仲裁に入ってくる様子もないのでウィルはそれらには気を留めずにいた。
だが、しかし―――
「これはいったい何の騒ぎじゃ!」
少し離れた場所から周りを一喝する声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声であったのだが、生憎それだけではウィルには誰であるのかまでは分からなかった。
だが遠巻きにして見ていた連中が囁いていた声を聴いてその正体を知ることになる。
『村長』
それはウィルにとって完全に予想外の人物であった。
この村は小さいとはいえ、この場から村長の住家まではそれなりに距離がある為にまさか村長が直々に仲裁にやって来るとは思ってもみなかったのだ。
誰かが呼びに行ったのか、それとも偶然近くを通りかかって騒ぎを聞きつけたのかは知らないが、どちらにせよ少々厄介なことになりそうだと思ってウィルは溜息を吐く。
ウィルが暮らしているケルト村の長。
まだ子供であることもあってかウィルはこの村長とはこれまでに殆ど接点はなく、村長としてしか呼んでいない・呼ばれていなかった為にその本名すらも覚えていない。ウィルにとって村長とはそんな程度の人物であった。
村長に関して覚えていることは、確か年齢は50を超えた初老の人物であるが肉体的にはまだまだ元気で率先して農作業も熟しているような人物であったこと。
そしてもう1つ・・・・・彼が村長としての厳格な顔を持っているということであった。
そのことはこの村では誰もが知っていることであり、この村で何かの悪事や道理の通らないような事を起こした者には誰であろうと長として明確に処断を下すであろうと言われていた。
そう言われる理由は、過去にウィルが産まれるずっと昔にそのことを周りに知らしめる何かがあったのだと誰かがそう話しているのを聞いたのだが、生憎と詳しい内容までは知ることは出来なかった。
まぁ、こんな小さな村ではそんなことなど滅多にあるようなことではないだろうが、先程ウィルが問答していた時にイールとアンが『あれから罰として重労働させられている』とか喚いていたが、それは恐らくウィルに大怪我を負わせた事とその事実を隠匿した事に対して村長が下したコイツ等への罰だったのであろうと察することが出来た。
そんな厳しい顔を持つ村長であったが、決して厳しいだけの人物ではない為に村の住民からは慕われている、そのような人物であった。
あと余談ではあるが、この村の子供達のリーダー格であり森への冒険の発案者であったあのラルの祖父にあたる人物であったりもする。
そしてそんな厳しさを持つ村長の前で、既にただの子供同士の喧嘩では済まないレベルでこの3人(主にヨラン)を叩きのめしてしまっているウィルはどう言い訳しようかと悩んでいた。
だがそうしている内にも村長はウィル達の傍までやって来てしまう。
「こ、これは・・・・・お主等、いったい何をしておったのじゃ!」
ウィル達に近づいてきた村長は顔の半分が鼻血で真っ赤に染まっているヨランを見て驚愕する。
驚きの声を上げると共に、そこで漸く事態の深刻さに気付いた村長はこの場にいる4人の子供達に説明を求める。
「そ、村長様!」
「ああ、良かった!」
「だ、助げで下ざいぃぃ・・・」
ヨラン・イール・アンの3人はそこで漸く村長の存在に気付く。
ウィルにあっさりとあしらわれた挙句、その醸し出す雰囲気と暴力に圧倒されていた3人はこの場に現れた村の絶対者の登場に心の底から安堵する。
「・・・・・とりあえず、どうしてこうなったかを説明をせい」
今にもすり寄って来そうな3人の子供―――問題行動の多いヨラン・イール・アンであることに気付き、村長は思わず顔をしかめそうになるのを抑えながらも事態を把握する為に彼等に説明を促す。
「あ、アイツがいきなり!」
「そ、そう! 私達に暴力を振るってきたんです!」
「お、俺達は何も―――――ブヘッ!?」
イール、アン、ヨランの順に説明という名を借りた勝手な主張を言い始めたのだが、それを聞いていたウィルは無言でヨランの発言を切るように頭を再び地面に叩きつけた。
「・・・・・本当にお前達には心底呆れ返るな。そうやってまた自分達に都合の悪いことを無かったことにする気か」
ウィルは村長に聞こえないくらいの小さな声でそう呟く。
話を捏造して伝えようとしていたので強引に黙らせたのだが、この期に及んでこの3人がウィルを一方的に悪者に仕立て上げようとするその卑怯で浅ましい性根には最早軽蔑するに値していた。
如何に子供とはいえ、どうしてここまで身勝手で自分本位な行動を取れるようになるのかとそんな変な疑問まで湧きだしてきてしまう始末だった。
その一方で、ヨランの顔を地面に叩きつけるというウィルの過激な行動を目の当たりにした村長は表には出さなかったが内心では驚愕していた。
確かウィルという少年はこの場にいる他の3人とは違って、大人しく取り立てて問題のない普通の子供であったと記憶していたからだ。
「・・・・・ウィルや、どんな理由があるにせよ流石にそれはやりすぎじゃぞ」
村長は内心の動揺を鎮めながらもウィルの行動を戒めるように言うが・・・
「でも村長様、そう言いますけどコイツ等は口先から大嘘ばかりしか吐かないからこれくらいしなきゃダメだと思いますよ。
それに前に僕にしたことを全く反省してもいないし、する気もないみたいですからこれくらい問題ありません」
戒める言葉を投げかけてきた村長に対し、しれっとした顔でウィルはそう言い返す。
「むぅ、確かにこれまでの行いからこやつ等の言い分だけを素直に信じる気は無かったが・・・・・じゃが、それでもそれはやりすぎじゃよ。とりあえず手を放してあげなさい」
と、村長は尚も諭すようにウィルに言う。
「・・・そう、ですね。分かりました」
村長にそこまで言われればウィルも従わざるを得ず、ヨランの顔を地面に押し付けていた手を放して解放する。
「よっと・・・・・じゃあ、僕からどうしてこうなったのか説明した方がいいですよね?」
ウィルは頭を押さえつける必要もなくなったので、しゃがんだ状態から立ち上がって村長に向かい合う。
「うむ、お前さんが感じた事で良いから出来るだけ詳しく話してくれ」
村長は頷き、ウィルに説明を促す。
「分かりました。 じゃあ、まず最初に僕が―――――」
・
・
・
「―――――と、こんなところですね」
ウィルが事の起こりから村長が現れるまでにあったことを説明し終えた。
その間、村長は顎に手を当てウィルの話を無言で聞いていたが漸く言葉を発する。
「うむむ・・・・・まさかこやつ等、この期に及んでそんな馬鹿なことを仕出かすとは」
ウィルからあらましを聞いた村長は顔をしかめ呻るようにして内心を吐露する。
だがそんな様子の村長を視てウィルは思わず問いかけてしまう。
「あの・・・信じてくれるのは嬉しいんですが、今の話はあくまで僕からの主張ですよ。
それに村長様がやって来た時の状況から見れば、僕って完全に加害者にしか見えなかったと思うんですけど・・・・・」
3人を叩きのめし、その内の1人であるヨランを一方的に嬲って顔の半分を血で染めさせていた状況はどう見てもウィルが悪者だろう。
だから村長が現れたと知った時にウィルは厄介なことになりそうだと思ったのだ。
だがそんな状況であったにも拘らず、厳格であると言われている村長がウィルの言い分をあっさり信じてくれているのは意外であった。
「確かにお主の行為は少々やりすぎであるのじゃが・・・・・そうすることになった経緯を聞けばあまり文句も言えんのう」
更には村長がウィルを擁護する発言まで出てくる。
いい意味で予想を裏切る展開にウィルは驚きで唖然としてしまう。
そんなウィルの様子を見て苦笑しながらも村長は更に話を続ける。
「それに普段のこやつ等の言動を見ていれば、お主に大怪我をさせた件に関して全く反省などしていないと分かっておったからの。
まぁ、一応こやつ等からも話は聞くには聞くが・・・・・結論は変わらんじゃろうな」
「っ!」
「なっ!?」
「そんなっ!」
村長の発言を聞いてヨラン・イール・アンの3人は驚きのあまり声を上げる。
「ウィルの頭からも血が流れておるんじゃから、少なくともお主等が目の見えなくなったウィルに危害を加えたことは間違いないんじゃろ」
ウィルにはそれが『失明させる原因となった大怪我を負わせた相手に対してすることか』と村長が言外に言っているように聞こえた。
どうやら村長もこいつ等に対してウィルと同じ憤りを覚えてくれているのだと感じた。
「・・・・・とは言っても、今聞いた話だけで一方的にお主等を裁くことはせんから安心せい。
辺りには成り行きを見ていた者もおるじゃろうし、その話を聞き出してから判断する」
村長は今も遠巻きにして見ている村人たちを見廻してそう言う。
「まぁ、見ていたのに誰も止めようとしなかった者達も問題じゃが・・・・・それは今は良いか。それよりも今はお主等の傷の治療をせねばな」
そう言いながら村長は辺りにいた者の1人を呼び寄せて何かを言い付ける。
「今、ジューンを呼びに行かせた。奴が来るまでとりあえずお主等はそこでじっとして待っておれ。儂はその間に辺りの者から話を聞いてくるのでな」
そう言って村長は話を締めくくる。
意に反して騒ぎが大きくなってしまったこの騒ぎに漸く決着が付きそうになりウィルはホッと息を吐く。少しやりすぎてしまった感はあるが村長の態度から見るにウィルに対してはそう悪い沙汰は下らないだろうと思う。
そう考えて少し気を抜いたところで、忘れていた頭の傷が痛みだしてきてウィルは少し顔をしかめる。
だが、そこに―――――
「どうしてだよ! 何で、何で俺達が!」
「そうよ! 私達は何も悪くないじゃない!」
まだ自分達の非を認めようとしない愚か者達が騒ぎ出す。
「ふう、お主等の言い分は後で―――――」
村長は溜息を吐きながら2人を諌めようとするが、最後の1人―――ヨランの発言で断ち切られてしまう。
「何で、どうしてそのガキの言うことだけを信用するんだよ! 俺、こんなに血を出してるんだぞ! おかしいじゃないか!」
ヨランの主張はまだ終わらない。
「それにそのガキが目が見えないなんてこともウソに決まってる! じゃなきゃ投げた石を避けるのも俺達に向かって走って来るなんてことも出来る筈ないじゃないか!」
「む、むぅ・・・・・」
喚きたてるようなヨランの主張であったが、その後半の内容は村長も疑問に思っていたところだ。
ジューンの診断が間違っているとは村長は思っていない。
だがしかし、それならば何故ウィルがまるで見えているように動けていたのかが説明できない。
村長はその疑問について考えを巡らせていたが、その直後に起こった事態にその思考は打ち切られることになる。
「そうやってそいつは同情を引いているんだよ! そいつが言うことなんてみんなウソっぱちなんだ! みんなこの卑怯者に騙されているんだ!
そもそもそいつは―――――ぎゃあっ!?」
少しの間、思考に没頭していた村長は突然聞こえた悲鳴に驚き顔を上げる。そして声のした方を視線を送るとちょうどそこにはヨランが仰向けになって地面に倒れていくところが見えた。
そうなった理由は勿論―――――ウィルの仕業である。
ウィルは当初、3人の主張を黙って聞いていた。
まだ自分達は悪くないと主張し続ける子供に、もう怒りや呆れすらも感じずにいた。
ここまで来ると最早この愚か者3人にこれ以上関わることは時間と労力の無駄にしかならないと判断して、もうウィルは相手をする気も無くなっていたのだ――――――ヨランの発言を聞くまでは。
ヨランの喚きたてていた後半の発言はウィルの堪忍袋の緒を切らせるには十分だった。
故に次の瞬間、ウィルは感情のままに動き出しヨランの顔を蹴り飛ばしていた。
「お、おい! ウィル、何を―――――」
「・・・・・村長、とりあえず今の発言でこいつ等が『俺』に石を投げたと自白したとみていいですね?」
突然のウィルの行為に驚き村長は問い質そうとするが、ウィルはそれを強引に別の話を振って追及を遮る。
頭に血が上っている所為で再び一人称が『僕』から『俺』へと変わってしまっているウィルであったが、弁を弄して村長を黙らせるだけの理性は残っていた。
「う、うむ。確かにそれは儂も聞こえたが・・・・・」
有無を言わせないようなウィルの物言いと雰囲気に流石の村長も困惑する。
だがウィルはそんな村長の様子など気にせず、蹴り飛ばしたヨランの方へと近づいていく。
「なぁ、お前・・・・・俺の目が見えないのはウソ? 同情を引く為? 挙句の果てに俺が卑怯者だと?
・・・・・ふざけたことをほざくのも大概にしろよな、このクズっ!」
「がっ!」
歩きながら喋っていたウィルは倒れていたヨランの傍までやって来ると罵声と共に再びヨランの顔を蹴り飛ばした。
「俺が今こうして多少なりとも動けるようになったのは、あの日から必死に努力していたからだ!
何も知らないくせに、何も知ろうとはしなかったくせに、よくもそんなことが言えるよなぁ!」
再び顔を蹴り飛ばされ、辺りに鼻血をまき散らしながら倒れ伏したヨランに向かって尚もウィルは続ける。
「俺が怪我を負うことになった理由をひた隠しにしていた事実、その怪我の所為で目が見えなくなった俺に対して石を投げかけるという暴挙を仕出かした事実・・・・・なぁ、これは誰がどう考えても本当の卑怯者はお前等の方になるよなぁ!」
「ひっ、ひぃぃっ!」
その凄まじいウィルの剣幕にヨランは抵抗や反論する気など消え失せてしまい、もう完全に怯えてしまっていた。
「ああ、それに・・・・・っと、その前に村長様に1つ教えてもらいたいことがあるんですが」
「な、何じゃ?」
異様な雰囲気を醸し出すウィルを呆然として見ていた村長は突然話を振られたことに思わず身構えてしまう。
「2ヶ月と少し前にあったあの森での一件について、村長様がこいつ等に科した罰について教えて下さい」
村長はウィルがその訊ね事をしてきた意図は分からなかったが、隠す意味もないので正直に教えることにする。
「う、うむ。 そやつ等には向こう半年の間、村の外れにある土地で行っている開墾の手伝いを命じておる」
新たな土地の開墾―――――
それがかなりの困難であることはウィルも知っている。
前世の世界なら『キカイ』をいう道具を使ってかなり短縮できるみたいだが、この世界ではすべてを人力で行わなければならない。
更にこの小さい村には人手に余裕があるわけでもないので、その作業には長い時間と苦労が掛かるであろうことは考えるまでもない。
だが・・・・・
「・・・・・では、今日の一件について村長様はこいつ等をどうされますか?」
質問の返答を聞いてウィルは何かを考えていたのか少し黙り込んでいたが、何も言わずに再び村長に問いかけた。
「・・・・・どうやら反省も全く見られない様じゃからな。今させている開墾の手伝いの期間を延長するのが妥当になるじゃろう」
「なっ!?」
「そ、そんな!」
村長の言葉を聞いたイールとアンが驚愕の声を上げる。
だがウィルには彼等がそんな反応をすること自体不快でしかなかった。
何故ならば・・・・・
「・・・・・温い」
ウィルは短く、だがはっきりと辺りに聞こえるように言う。
「人を殺しかけておいて、たった半年の労働で済ませるとは温すぎる! しかもそんな程度の罰が不服で俺を逆恨みして八つ当たりを仕掛けてきたとは・・・・・本当に最低だな、お前等!」
ウィルは周りにいる村人達に聞こえるように、この3人の罪を知らしめるように大声で怒鳴りたてる。
「ねぇ、村長様・・・俺は罰とは反省を促すモノでもあると思っています。ですが、こいつ等にはそんな程度の罰では全く意味をなさないことは見ての通りです。
そもそも俺は2度に亘ってこいつ等から危害を被ったんですから、もっと重い罰を科してもらわなければ俺が納得できない」
だから3人に『もっと罰を与えよ』とウィルは主張する。
それを聞いていた村長も内心では同感であったが相手が子供である為にこれ以上の罰を与える訳にもいかなかった。
故にどうしたものかと思って逆にウィルに問い返してしまった。
「ふむ、確かにウィルの言い分も分かるのじゃが・・・・・逆に聞くが、ウィルはこやつ等にどのような罰を与えればいいと思うのじゃ?」
村長はあまり深く考えずに試しに聞いてみようと思ったのだが、それにウィルは悩むこともなく最初から答えが決まっていたかのようにあっさりと、そして衝撃的な答えを口にする。
「簡単ですよ・・・こいつ等3人の目を抉り取ればいい」
ウィルのその答えを聞いた村長やヨラン達、それに周りにいた村人達はあまりに過激な内容に揃って絶句する。
「その3人が自分の罪を理解していないのは所詮他人事だったからでしょう。ならば俺と同じ境遇にしてやればいいんですよ。
目が見えない状態で生活することが如何に大変であるかと知れば、自ずと自分達の罪も自覚できるようになるでしょうよ」
ウィルは淡々としてそう言う。
「ウ、ウィルよ。流石にそれは・・・・・」
流石にそのような罰を認める訳にはいかず、戦慄しながらも村長はウィルを宥めようとする。
だが、ウィルにはそういう答えが返ってくると分かっていたかのようにこう言葉を返す。
「・・・・・まぁ、そうでしょうね。流石に聞き入れられるなんて思っていませんよ。
でも、俺がこいつ等にそれくらいのことをしてやりたいと思うのは当然でしょう」
ウィルは感情の籠らない声で更に淡々と続ける。
「ねぇ、村長様・・・・・教えて下さいよ。目が見えないというハンデを背負ってしまった俺はこの先どうやって生きていけばいいんでしょうね?」
ウィルは怪我を負った頃から感じていた不安を吐露する。
「この村では農作業が主な仕事です。村人はそれぞれ割り当てられた土地を耕し、そこから収穫できた作物を得て生活している。
ですが、目の見えなくなった俺にそれをして生活していくことは果たして可能なんでしょうかね?
作物を育てるということは、そう簡単で単純な仕事ではないことくらい俺でも知っている。
そんな仕事を目の見えない俺がやっていけるのか甚だ疑問だ。下手に弄ったりでもすれば畑そのものを台無しにしてしまう可能性もあることくらいこの村の住人だったら誰でも分かるでしょう」
ウィルは次々と考えられる問題を上げていく。
「なら、別の仕事を求めてこの村を出るという選択肢もあるけれど・・・・・それも無理でしょうね。
村の外の世界のことはよく知らないけれど、誰が好き好んで目の見えない奴を雇ってくれるような酔狂な人がいるとは思えませんから」
「・・・・・」
ウィルの言葉にその場にいる誰もが何も答えることが出来ない。
「ねぇ、本当に俺はどうすればいいんでしょね。
この村の人達は俺が生きていけるようにずっと支援してくれますかね? それとも俺の光を奪った元凶であるその3人が責任を取って、この先ずっと養ってくれるんでしょうか?」
「それは・・・・・」
「・・・っ」
「くっ」
「うぅ・・・」
村長は答えられずに言葉を濁す。
ヨラン・イール・アンの3人も少しは自分達のしたことを自覚できたのか、糾弾しているウィルから目を逸らす。
「・・・・・お前達が俺にしたのはそういうことだ。俺がこの先に待っているのは困難という言葉では言い表せない程の厳しい未来しかないんだよ。俺はお前達にそういう人生を強いられることになったんだっ! いい加減それを理解しやがれっ!
そしてもし今度また俺に余計な手出しをしてきたら・・・その時こそは誰が何と言おうとお前等の目を抉り取ってやるからなっ! そのことをよく覚えておけ、クズ共!」
最後は感情的になってしまったが、ウィルは言いたいことはすべて言い終えた。
そしてもう用は無いというばかりにウィルは彼等から背を向けてその場を後にする。
去っていくウィルをその場にいた村長を初めとした村人達は一言も発せずに、ただその場から離れていく彼の背中を見ていることしか出来ずにいた。




