第10話
きた――――!!!!
コンコン、と扉をノックする音がして扉が開き、入ってきたのは両親と妹だった。
「わぁ、秋ちゃんとっても綺麗ね」
「ありがとう」
秋穂は妹の言葉に微笑む。
「似合ってる」
まだ、ぎこちないながらも父が言い、母も頷く。
「・・・ありがとう」
****
義母と出来上がったウエディングドレスの試着を行った翌日、父が会社までやってきた。
「・・・」
「秋穂、今日はもうあがっていい」
まるで、父がここへ来ることを知っていたかのような古賀の対応で秋穂は全てを理解し、ため息を零した。
「迎えには着てくださいね」
「あぁ」
秋穂はコートを受け取り、父と共に会社を出た。
「・・・はぁ」
コートのポケットに手を突っ込むとカサリと音がし、不思議に思った秋穂はポケットに入っていた身に覚えの無い紙を取り出し、それを見て古賀の用意のよさにあきれたようなため息が零れてしまった。
紙に書かれていたのは古賀御用達の料亭の予約時間だった。
会社からも程近いそこは、隠れ家的な雰囲気が気に入っているという古賀とよく行く店でもあった。
「お嬢様」
「・・・御神さん」
車のドアを開け、待っていたのは古賀の世話役である御神だった。
「どうぞ」
「いいのですか」
「大事な時期ですので、お風邪を召されてはいけませんと祐一様が」
過保護すぎるだろと思うが今更だと思い直し、車へと乗り込む。
「これを」
「?」
そこで差し出されたのはまたしても一枚の紙切れだった。
【がんばって来い by祐一】
「・・・」
らしい言葉に苦笑する。
「古賀君はいい男だな」
「そうね」
自分にはもったいないほどの男だ。
「それで、どうして会社に」
「話をしようと思ってな」
「話・・・」
やはり、長いこと会っていなかったせいか会話が続かない。
「結婚式は出ようと思っている」
「・・・」
「それで、もし良かったらヴァージンロードを共に歩いてもいいだろうか」
「・・・」
それは思いがけない言葉だった。
「いいの・・・」
「古賀君に言われてな、いつまでもこのままの関係でいいわけじゃないと気づかされた」
いったいつあの男は父にそんなことを言ったのだろう。
きっと聞いたところで白状などしないだろうが、帰ったら聞いてみよう。
「私ね、あの日からお母さん、私に遠慮するようになって、お父さんも何も言わなくて・・・私、この家にいらない子なのかなって思ってたの。そんな時間が苦しくて、家族なら話せばいいのにだんだんそれすらも怖くなって、大学が決まったとき、逃げるように家をでた。帰ろうと思ったこともあったの、でも、そう思った瞬間に怖くなって、気づいたら十年も経ってた」
「・・・」
「もっと早くこうして話すべきだったね、私たち」
「・・・十年、お前が家を出て帰ってこなくなったのは当たり前の反応だ。もしかしたらもう一生合うことがないとも思っていた。何より、私も加奈子も合わせる顔が無いと思っていたくらいだ。
だから、お前が家に来たときは本当に驚いた。結婚したと報告を受けたとき、動揺しておめでとうの一言もでなかった。すまん」
父がそんな風に思っていたなんて知らなかった。
「・・・」
「・・・」
「今は忙しいけど、時間が出来たらまた、家に帰るね」
「あぁ、加奈子も今はまだどう接していいか分かっていないがお前に会うのが嫌なわけじゃないんだ。わかってやってくれ」
「うん」
こうして式を目前にして、秋穂は父との関係を改めることが出来た。
****
「秋穂、幸せにな」
「・・・ありがとう」
ヴァージンロードへと続く扉の前で手を組んだ父は秋穂へそう言った。
やっと、やっと、ここまでたどり着きました。
けれど、まだ、完結ではありません。(ヘタレのくせにがんばるな)
ごめんなさい。
もう、かなり完結っぽいラストでしたが・・・(綺麗なところで終わらせとけよ)
だって、だって、まだ、古賀氏の視点が残ってるの・・・
とうわけで、結婚式・・・始まり始まり・・・
隔日くらいの間隔でがんばっているつもりなのですが、遅れることもあります。
・・・かなり
というわけで、引き続きがんばります。




