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紫陽花  作者: 蓮実紫苑
いつか君と
2/23

第1話~side秋穂~

読みにくいかもしれません・・・

あしからず・・・

あなたの視線の先に気づいたとき、私はこの想いを告げないことに決めました。

あなたの一番近くにいられる今を捨ててしまえるほどの勇気が私にはなかったのです。

この関係を壊してしまうくらいなら、今のまま、何もせずあなたの想いが彼女に届くことを親友という一番近くの席で見守ろうと思ったのです。

けれど、いつもどこかで感じてた焼け付くような焦燥を

心のどこかで思ってた、どうして彼女なのだろうと・・・

私と彼女は双子だけれど、皆、妹の方を必ずといって良いほど好きになり、かわいがった。

可愛らしく無邪気で明るくて、いつもみんなの中心で笑っている妹。それに引き替え、私は、顔は似ているが、性格は彼女と真逆だった。

両親も手はかかるが素直な妹の方にかまうことが多かったため、私は手のかからない、わがままを言わない子どもを幼い頃から演じてきた。

「お姉ちゃんなんだから」そう何度言われただろう。生まれる順番が私の方が少し早かった、たったそれだけのことだった。けれど、それは、それだけの事、と言ってしまえないほどの陰を私の(なか)に落としていた。



「馬鹿、お人好し、臆病、根暗女」


何故分かるのか分からないけれど、彼と会った後ここにくると必ずこの男にかけられる言葉。


「黙れ!鬼畜、変態、腹黒、滅びろイケメン」

「最後のは悪口か?(おぼろ)?」

「違うかと思われます。いかがいたしますか、古賀様」

「いつものを」

「かしこまりました」


「あがって」と朧が奥にいる店員に声をかけるのが聞こえてきた。

不機嫌な様子を隠しもしない私の隣に、腹黒めがねこと、古賀裕一が腰かける。


「忙しいんでしょ、私にかまわないでよ」

「あいにくと、哀れな根暗女の愚痴を聞いてやるくらいの時間はある」

「あんた慰めたいの、馬鹿にしたいの」


睨んでやると、古賀は口角を上げた。


「慰めてほしいのか」

「いや、別に・・・」


その顔、身の危険を感じるんだってば。

まったく、こんな腹黒い鬼畜が女性のあこがれの的だなんて、今時の女の子達はどうかしてるよ。

だいたい、女じゃないのが惜しまれるくらいの美人な(こが)の隣なんて女としての自尊心に傷がつく行為、秋穂ならば自らしようとは思わない。


「失礼なこと考えてるだろ」

「別に・・・こんな美人のどこに女性が惹かれるのか考えてただけ」

「酔ってるだろ」

「酔ってない」


気にする事じゃない。

いつもの事じゃないか。

弘人が美晴(いもうと)との仲を取り持ってほしいと言うことも、のろけなのか愚痴なのか分からない話を延々とされるのもいつものことだ。

ただ、ちょっと、秋穂の精神状態が悪かっただけ。

弘人の口から出た言葉が信じられなかっただけ。

大丈夫、大丈夫、と言い聞かせるように心の中で唱える。


「で、何があった」

「・・・何もない」

「何もなかったらそんな風に酒飲まないだろ」

「・・・」


普段ほとんど表情の動かない秋穂の感情の機微に気づくのはいつも弘人と悲しいことに目の前の男だけ。

何よりこの男は、出合った時から、秋穂の隠し事に簡単に気づき暴こうとする。

家族にさえも分からないように築いてきた壁の中に我が物顔で手を突っ込んでくる。

けれど、それが嫌ではないのだ。そんなの自分もどうかしている、と思うけれど、何故かしら、秋穂はこの鬼畜で腹黒な美女男が嫌いになれないのだ。否、むしろ、好意すら抱いている。


「会社・・・やめようかな」

「ほんと、どうした」

「・・・ストーカーもどきの上司がいるの」

「はぁ?」

「付き合ってほしいっていわれて、断ったらのにしつこいの。今日会議室で実力行使されかけた。あの、くそ上司」

「それで、それで」

「人の不幸を楽しんでますね、朧さん」


有名なバーテンダーとして都内屈指の会員制バーのオーナーをしている朧さんは普段は古賀と負けず劣らずの良い男なのだが、素の状態の言葉遣いがいかんせんオカマちゃん口調なのだ。

もちろん、ノーマル。あっちの趣味はないそうだ。

出会った頃からこの口調だったため、聞いたことはないが、古賀とのやりとりを聞く限り何かあったのだろう。

それに、人には言いたくないことの一つや二つあるだろう。

無理に聞き出そうとは秋穂は思わない。

秋穂自信、他人に深く関わられるのは嫌いだから、他人にも深く関わらない。

それが相手も自分も傷つかない一番の方法。


「鳩尾と大事なところに一発ずつ」


秋穂の答えに二人の顔色が若干悪くなったのは気のせいだ。

店終いをした店内は開店時よりも照明が暗くなるためそのせいだと、一人結論付ける。


「朧さん、もう帰ります」

「一人で大丈夫?」

「大丈夫、ザルだから私」


店を出ると、頬を冷たい風が撫でる。


「・・・馬鹿なのかな」


呟いた言葉は澄み切った秋の夜空に消えていった。


主人公は自分に自信がありません。

そして、いろいろと悩みすぎて自分から行動を起こすという事ができません。

そして、何気に強いです。

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