21 エピローグ
町の広場は、賑わいと笑顔に包まれていた。
石畳を照らす太陽の光は優しく、行き交う人々のざわめきが心地よい音楽のように耳に響く。
露店の布が風に揺れ、色とりどりの果物や香辛料が鮮やかなコントラストを描き出す。
子どもたちの笑い声が広場の中央にそびえる噴水の水音と重なり、まるでこの瞬間が永遠に続くかのような錯覚を覚えた。
零は、隣を歩くハルを一瞥した。
光沢のある毛並みが太陽を浴びて輝き、宝石のように映えるその姿に思わず口元が緩む。
ハルは歩きながら軽やかに尾を揺らし、まるで「ここにいるのが当たり前だよ」と言わんばかりの堂々とした様子だった。
その仕草には、どんな困難をも共に乗り越えてきた者だけが持つ自信と、互いへの深い信頼が滲んでいた。
空を見上げると、青一色の広がりが目に飛び込んでくる。
雲一つないその空は、まるで彼らの未来そのものを象徴しているかのようだった。
何度も倒れそうになりながら、それでも立ち上がり続けた彼の日々。
その全てが報われるかのように、今この瞬間が訪れたのだ。
胸の奥に宿る穏やかな満足感が、零の心をじんわりと温めていく。
零はふと足を止め、わざと軽い調子で言った。
「次は何をしようか」
その言葉にハルがぱっと顔を上げる。
大きな瞳がきらきらと輝き、彼の言葉を待ちわびていたかのようだった。
「次も一緒に冒険しようね」ハルの明るい声が響き、広場の喧騒に溶け込む。
その声には、未来への期待と、決して揺るがない信頼が込められていた。
この後も、零はハルと数多くの冒険をしたが……それはまた別の話。
■「元勇者 シリーズ1」 で続く。




