第9話 もう一度あの部屋に魂を漂わせて。
……冷たい、ここは?
そこは土と木が多くあり、どんよりとした空気を醸し出していた。
私は体を起こそうと手を付け、前のめりに立とうとしたら、フワッと軽く浮いてしまった。
…体が軽い。
ふわふわと空気と共存する私の体はまるで幽霊みたいだった。
私が周辺を見渡すと、そこには沢山の墓があった。
………ロルロボ、ここに眠る。
……ヒル、ここに眠る。
…エリー、ここに眠る。
…?
ああそうか。
その時、私はあのハイアントの本に書いてあった文章を思い出した。
「I世界線と言うのを私達が生きてる地球だと仮定しよう。するとO世界は私達が生きる魂を保管し、半永久的に生きられる事だとする」
成功した。
私は賭けに勝ったんだ。
しかし何故だろう。
友達に裏切られ、会う人々は消え、こんなにも虚しいと感じた事があっただろうか。
そしてここが私達が目指していた地球なのか?
いや、違和感がある。
違和感しかない。
例えばの話だ。しかし辻褄は合いそうな気もする。
……ここはO世界の中で、魂を保管しているところ。
魂の保管庫なんじゃないか?
「…ということはっ、」
ツキは天性の才能である勘の良さを持ち合わせていた。
この墓の下に魂が埋まっているのだろうか。
…ん?
…ヒナタ、ここに眠る。
…ツキ、ここに眠る。
そのツキの勘の才能は、人よりも察するのが早い為、辛い面もあった。
…そうか、私達もこのO世界の仕組みの中にすっぽりとハマっていたんだ。
ツキ博士、あんたか。
あんたの手のひらで踊らせていただけなのか。
くそ。
「報われないよな。」
私はそうボソッと言って覚悟を決めた。
「聞いてるか!ツキ博士!!私はお前の所へ行く!本当の地球へ!本当の真実知りに!!」
…まるで、分からなくどうしようも無い怒りをとにかくぶつけるように。
底知れない憎悪を感じるような声が四方八方から響く。
「……黙れよ。コピー品。これは私の作品であり、研究なんだ。ごちゃごちゃと言うんじゃあない。社会貢献だと思って何も知らずに生きてくれ。」
…女性の声。
「ツキ博士か!お前!私の運命はお前が狂わせたんだな!?ふざけるな!記憶を戻せ!元の場所に返せ!」
ツキ博士はため息混じりに面倒くさそうにしゃべった。
「はぁ、何で言っても伝わらないのかな。けど大丈夫だよ。お前の記憶にそれ以上もそれ以下もない。」
「どういう事だ?」
「…黙れ。ごちゃごちゃ言わずに繰り返せ、死を。」
その言葉を聞き、じっくりと時が流れているように感じる時、私は怒りで感情が収まらなかった。
「出てこい!!お前は何処にいる!ツキ博士!!!」
前のめりになり上を見上げる。
踏ん張って潰れるはずの草むらも、私の魂の形がふわりと覆い守っていた。
「ツキ博士ぇ!!!!」
その時、私の魂がフワッと不安定になり、小さくなる。
私の意識も段々と無くなり、消えて無くなる感覚に陥った。
…
……
………
「う〜…」
視界が歪む。
「目…覚めた?」
女の子の声だ。
「わ、私!ヒナタって言うらしい!君の名前は?」
「なまえ……?」
ヒナタ。凄く元気で可愛い女の子だなと思った。見た感じ私と同じ高校生と言った所か。
金髪で髪の毛は長くて、なぜだか白衣を着ている。
そして拳銃が手元にある。
「名前だよっ。な・ま・え。」
そこでやっと名前というのを思い出した。
「ツ、ツキ…?」
…いや、名前以外も今!
今!この時思い出した!空気を吸って今!
「ツキちゃん!髪の毛は青くて短くて、なんだか大人っぽいというか、かっこいいというかっ。」
「…あっありがっ!?」
その時、ヒナタがめいっぱい両手を広げて、抱きしめてきた。
「これからよろしくねぇ〜。ツキちゃん!」
「…うんよろしく。じゃあ、この拳銃はよろしくの拳銃なのかな?」
ヒナタは私のお腹に向けて、銃を突きつけていた。
「うん!よろしくの、拳銃だよぉ!」
私はもう覚悟を決めていた。
「そうやってまた私を撃つのかい?」
ヒナタは少し動揺して口を開ける
「…何の事?。」
「…とぼけるなよ。人殺し。」
「何で…何で覚えているの!!」
私達は白い部屋にいた。
白い壁に白い床、そしてひとつのドア。
気持ち悪い程に感情が入り浸っているこの簡素な部屋は、殺風景で気味が悪かった。
第1部[完]




