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IO〜箱庭異世界女子2人  作者: 頬は濡れていた。
第2部 マイナスからゼロへ向かう1歩
10/10

第10話 記憶の麓。ツキノ村、春風とともに。

冷たい冬の風が吹き荒れる中、私は荒れ果てた大地に立っていた。


「…誰か、寒い助けて。」

冷たい風が私の心にも吹き込んでいた。


そんな私を助けてくれたのはツキ博士だった。

ツキ博士は優しい笑みで私を受け入れてくれた。

その時のツキ博士は、冬の温度と対比するような暖かさを持っていたように感じていた。


「ここに、村を作る。」


その言葉を言ったのは、ツキ博士。

私は博士のそばで、その夢に心を躍らせていた。

ツキ博士が「ツキノ村」を作ると聞いて、私はその未来に胸をときめかせ、手伝いたいと申し出た。


「博士、私も手伝いたい!」


博士は微笑んでうなずいてくれた。その瞬間、私は自分も理想の村の一員になれると信じていた。


「エ、エリちゃん、あたしも手伝うよ。」

そう言ったのはヒルだった。


私達はツキ博士の研究所の近くで駆け回り遊んでいた。私とヒルはすぐに仲良くなりよく遊ぶようになった。

「おっあんた達、姉妹みたいだね。」

でも、あの時の博士の笑顔の裏に、別の何かが潜んでいたことに気づくのは、ずっと後のことだった。


春が来て、村の建設が始まった。春風とともに小さな緑の芽が地面から顔を出し、私たちはそれを見守りながら、次々と集まる人々と一緒に村を作り上げていった。自然豊かな土地に、ツキノ村が徐々に形作られていくのを見るのは、本当に誇らしかった。


私もその一部でいられることに、胸がいっぱいだった。ツキ博士と共に働き、村が成長していく姿に、未来が輝いて見えた。でも、夏の暑さが村を包む頃から、何かが少しずつ変わり始めた。


「ねえ、博士…みんな、なんか変じゃない?」


最初は小さな違和感だった。村人たちが妙に博士に従順で、まるで自分の意志を持たないかのように動いていることに気づいた。私は不安になったけど、博士はいつもと変わらず、穏やかな声で言った。


「心配ないわ。すべては計画通りだから」


秋が来て、紅葉が村を鮮やかに彩る頃には、その違和感は不安に変わり、私は密かに村で進められている実験の痕跡に気づいてしまった。博士は村人たちを利用して、何かを企んでいる。私が信じていた理想郷は、ただの幻想だったのかもしれない。


「博士、どうして…?」


ある日博士のラボの中、暗い部屋にモニターが空気の読めないようにピカピカと光っていた。そこに1人、ツキ博士がいた。

「さぁ行こう。」

研究所ツキ博士が私はついに問い詰めた。村が何かおかしいことを、村人たちが実験の対象になっていることを知ってしまったからだ。でも、ツキ博士はただ冷たく笑うだけだった。


「エリ、あなたも最初からそのための駒だったのよ。私の計画を実現するためのね。そしてヒル、あの子も…。」


その言葉が私の心を凍らせた。冬の冷たい風が再び村を覆い始め、私の信じていたものが音を立てて崩れ落ちていくのがわかった。ツキ博士は最初から、私たちを利用するつもりだったんだ。村を作ったのも、自分の目的のためだけに。


「これは…私たちの理想の村じゃない…!」


私は抗おうとしたけど、博士の計画はすでに動き出していた。村人たちは次々と倒れ、村は崩壊へと向かっていた。それでも、博士は満足そうにその光景を見つめていた。


最後に、博士は静かに村を見下ろしながら、すべてが予定通りだと満足げに言った。

大きく手を広げ、喜びを体全体で感じていた。

「これで全て終わりよ…ツキノ村は、私の理想郷っ!そして、すべては私の計画通り。私の名は――」


「ツキ博士……何で、」


私はただ、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

ぐちゃぐちゃになった複雑な感情は、私に人生というものを辛く魅せた。


…ヒュウっと風が吹く。

新鮮な春風はツキノ村を置いていき、元気に次の季節へと飛び立っていた。

私達は廃れた集落に立ち、心を決めた。

「…また、春が来たな。ねぇヒル、行こっか。」

「うん!エリちゃん行こっか。」


さぁ、これからツキ博士を変えに行こう。

春風とともに。

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