第7話 ツキ博士はツキノ村を裏切ったんだ。
「…少し話をしよう。緊張しなくてもいい、私はただの、死に損ないだっ。」
彼女は歯を前に出し、心強い笑顔を見せた。
ツキとヒナタが立っている前で、エリは決意の眼差しをツキに向けていた。静寂の中、エリが口を開く。
「ツキ、お前がここにいることは正直信じられない。けど、知っておくべきだ。あの機械の化け物、あれはお前が…いや、お前と同じ名を持つ『ツキ博士』が作ったものなんだ。」
ツキはその言葉に息を飲んだ。
「ツキ博士…?」
「そうだ。お前とそっくりな顔の科学者がいたんだ。彼女は私たち村を利用して、自分の研究を進めた。そして、あの機械の化け物を作り出し、最終的に村の皆を裏切り、皆殺しにした。私たちは何も知らずに協力して、彼女の計画の駒にされていたんだ。」
私はその言葉に衝撃を受け、言葉を失った。
自分がそのツキ博士なのか?それとも何か別の存在なのか?混乱が彼女の心に広がった。
「私が村から取った銃もツキ博士に反撃するためだったんだ。」
「でも…私はそんなこと、覚えていないし、そんなことをする理由なんて…」
エリはツキの言葉を遮り、ため息をついた。
「違うんだ、ツキ。お前はあのツキ博士とは別人だ。村の皆もそれは分かっていた。最初はお前を疑っていたけど、お前がそのツキ博士とは違うと理解して、受け入れようとしたんだ。」
ヒナタはもう何かを知っているような口調で、疑問を出した。
「じゃあ、どうしてかな…?」
「私が…受け入れられなかったんだ。」
エリは静かに視線を下ろし、苦しそうに言葉を続けた。
「…私だけが、お前を見てあの博士を思い出してしまって、どうしても許せなかった。村の皆が殺されたあの日のことを、ずっと引きずっていたんだ。お前に罪はないと分かっていても、その怒りと憎しみが消えなかった。……だから、お前を責め続けていた。」
ツキはその言葉を聞き、胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「エリ…」
「でも、それが間違いだったんだよな。」
エリは静かに顔を上げ、ツキをまっすぐ見つめた。
「お前は村を裏切ったツキ博士じゃない。お前には関係のないことだったのに、私は自分の怒りをお前にぶつけていただけだったんだ。本当に…ごめん。」
エリの目には涙が浮かんでいた。ツキは一瞬、言葉を失ったが、すぐに優しい声で応じた。
「エリ…私はそのツキ博士が何をしたのか分からないけど、あなたの気持ちは理解できる。私も何か大切なものを失ったら、きっと同じように感じると思う。」
「ツキ…」
エリは涙を流した。
…あぁ、この子は強い子だ。
私はそう思った。
「馬鹿だよな、私。皆はちゃんとお前を受け入れようとしていたのに、私だけが…」
「一緒に笑おう。」
ツキはそう言いエリの手をそっと握り、温かい眼差しで彼女を見つめた。
「これからは、過去のことに囚われずに一緒に前に進もう!地球に帰ろう!!」
エリはその言葉に一瞬驚いたが、やがて少しだけ笑顔を浮かべた。
「ふん、強気だな。でも、そうだな…私も一緒に戦うよ、今度こそ。…けど、あそこにある地球は……。」
ヒナタはまた何かを知っているかのように問いかけた。
「エリ、なに?」
「…いや、何でもない。」
「それにこのロボット、ツキ。あんたが近付いたら、ぱっと止まったよな?」
「確かに!あれはびっくりした!」
ヒナタは温度を保つように感想を言った。
「私も、なんで止まったんだろう。けど、ロルロボの友達のような気がしたんだ。悪いやつじゃないような。」
ツキはそのまま空気に置くように喋った。
「会話をしたような気がするんだよ。内容は分からないけど、やめてって気持ちが通じたのかなぁって。」
「ツキちゃんすごいっ!」
エリは少し複雑そうな顔をしていた。
「まぁ、これで襲われても死ぬ心配はないな。」
ヒナタは純粋な疑問と感じ取られるような仕草をした。「ねぇ、エリ。まだ話てないことがあるんじゃない?」
「な、何だよ。」
「エリはもう死んでるって事?」
「……ああそうだよ。私はもう死んでる。村の仲間たちもな。」
あっさりと言われた死について、私とヒナタは驚きを隠せなかった。
エリは見えない空を見つめた。
「だけど…これ以上言ったら、私の二度目の生が台無しになっちまう。勘弁してくれないか。」
…二度目の生?凄く気になるが、気にしてはいけないような気がする。とにかく今は地球に行くことを考えよう。
「…分かったよエリ。そこに関して私たちは何も言わないよ。私達は仲間。ね、ツキ。」
「うん!エリはもう一緒に地球を目指す仲間だ!」
「……ヒナタ、ツキ。ありがとう。」
エリはニカッと笑顔見せながら涙を流し、力強く言った。「みんな行こう!私達三人で地球を目指すんだ!」
エリの勢いに対して、笑いが起こる。
空気が綺麗だ。
「あっツキ、エリ、なんかチーム名付けない?」
「チーム名かぁ、」
エリが閃く。
「あっ私思いついたかも。ヒナタから連想してサン。ツキから連想して、ナイト。」
村の地面に指で文字を書いていく。
サンナイと。
「どうっ?」
「ねぇ、ヒナタ。エリーって意外と可愛い面があるみたいだね。」
「…確かにっ。」
その会話を聞いたエリーが少し不満がある様に言った。
「そ、そんな事ない!」
「これじゃエリーの文字がないからなぁ。エリーって文字をバラバラって入れてみたら?」
「ヒナタ。こういう感じ?」
サンナイとりーえ。
「…ツキちゃんこれは、かっこよ!」
「ヒナタ、エリ。私達はチームサンナイとりーえとしてやっていこう!」
しかしヒナタはキョロキョロしている。
「…ヒナタ?どうしたの?」
…村は静かだった。
「エリ?ねぇヒナタちゃん、エリは?」
そこに……エリは居なかった。
……まって!こんなとこで消えたくない!
また。まただ。
ヒナタ!
ツキ!
これもアイツの仕業か!!
…くそぉ、
……初めての女の子の友達だったんだけどな。
…そこはファンの音以外の振動が無いように思えた。
「…女子は2人でいいんだよ。まぁそれはともあれ。私の研究である、この箱庭異世界女子2人。良くなりそうだ。」
白衣を着た女性はPCを眺めていた。
後ろには金髪の女性が刺され息絶えていた。
血の匂いと共に悪意が滲むように、その人間は、強い信念とそれを増幅させる尋常ではない悪意で出来ていたのだった。




