第5話 ふふっ。多分のおはなしだから。
ヒナタの口元から漏れた言葉が、ツキの胸に鋭く響いた。
「…記憶が、戻ったみたい。」
ツキは一瞬、息を飲んだ。
視界が揺れる。
風が吹き抜けるような気がして、心臓が強く跳ねた。
「ヒナタ…それって…?」
ツキが問いかけると、ヒナタの目が一瞬、躊躇するように細められる。
「私…少しだけど、思い出したの。ツキのことも…そして、地球でのことも。」
その言葉を聞いた瞬間、ツキはヒナタの言葉に胸がざわつくのを感じた。何かが違う――いつものヒナタじゃない。ほんの少しだけ、冷たく感じる。
「思い出したって、どういうこと?」
ツキは慎重に問いかけた。これまでヒナタと一緒に過ごしてきた時間が頭をよぎる。
「ツキ…」
ヒナタの声が、ほんの少しだけ硬くなった。
「あなたが何者なのかも、少しずつわかってきた気がする。」
ツキは驚いてヒナタを見つめた。
「私が、何者かって…どういう意味?」
ヒナタはじっとツキを見つめ、その視線には、これまでとは異なる微かな嫌悪感が宿っていた。今までの優しさや親しみとは違う、不穏なものがあった。
「ふふっ。多分のおはなしだから。」
ヒナタがわざとらしく、何かを覆い隠すようにそう言った。
「…え?」
「ツキちゃんっ!うそだよっ!ウソ。ほら行こう。地球に!」
そんな、うそ?いや、
…絶対に何かを隠している。
「そんなのっ!嘘だ!!!ヒナタは何かを隠してる!!!言ってよ!!!それを!友達なんでしょ!ねぇ!!」
私はナイフのように言葉を突き刺した。
ヒナタはわざとらしく笑う。
「ねぇ、ツキちゃんは私が嘘をついてるって思ってるんだ。へぇ。」
「そうだよっ!言うなら言って!!2人で協力しないと地球になんてたどり着かっ……!」
強烈な眠気が襲ってきた。
私と同時にヒナタも眠り落ちていく。
あぁ、あのお菓子の症状だろうか。
思えば感情がぐちゃぐちゃになっていた気がする。
…
……
………
「ねぇ、ツキ!見てよ、このお菓子!」
ヒナタが目を輝かせながら、手に取ったのは虹色に輝くゼリーのようなお菓子だった。
ツキはその鮮やかな色に少し不安を覚えたが、ヒナタの勢いに押されて一緒に食べて……いや。
食べてはいけない。
何か、悪いことが起こるような。
「ヒナタ…これは食べない方が良いと思う。」
「食べてみようよ!」
ヒナタがにっこり笑う。
「いや、だめ。」
ヒナタはしょぼけた顔で言った
「えぇ〜なんでぇ、」
「分かんない。けど、絶対に、自然的に、絶対的に、これはダメなやつだよ。」
「うわっ、これ、なんかすごい…!」
「ヒナタっ!?」
ヒナタはトランポリンに乗って跳ねていた。
「はぁ、良かった…。」
私は安心していた。
私には分からないし、食べないと分からないことだけど、このお菓子たちはダメだと。私の感が言っていた。
…けれどなんだかさっぱりする。
長く眠っていたような感じだ。
トランポリンで跳ねていたヒナタは目を見開いた。
「あ!ツキちゃん!!」
「なに?」
ヒナタはトランポリンの方へ手招きする。
「んっ何?」
っ。
…あれは!
「地球だ!!」
…違うかもしれない。なのに私達はそうだと思い声を揃えて言った。
「ツキちゃん!これって本で見たやつだよね。」
「うん。そうだね。地球かも、知れない。」
青い。
私達はトランポリンで跳ねて何とか地球を見る。
「ツキちゃん!私達はあそこへ行くんだよね!」
「うん!そうだよヒナタ!」
「ツキちゃん!どうやって!」
「頑張るんだよ!ヒナタちゃん!」
「ツキちゃん!地球が浮いてるのに、空が無いね!」
…
「…空って何?ヒナタ…ちゃん。」
ヒナタは少し驚いた顔を見せた。
「……え。」
ヒナタは少し隠すように、言葉を繋げた。
「…いや、なんでも、無い!」
ツキは少し笑って見せた。
「そうと決まればヒナタちゃん。地球の方向に向かって進もう。」
「うん!」
私達はトランポリンの着地に失敗し、一緒に笑いあった。
さぁ、地球には何があるだろうか。




