第4話 カラフルお菓子!…食べてしまった。
私たちは歩みを止めなかった。
「ねぇ、ツキ!見てよ、このお菓子!」
ヒナタが目を輝かせながら、手に取ったのは虹色に輝くゼリーのようなお菓子だった。
ツキはその鮮やかな色に少し不安を覚えたが、ヒナタの勢いに押されて一緒に食べてみることにした。
「何これ…色すごくない?でも、めちゃくちゃ美味しそう!」
「食べてみようよ!」
ヒナタがにっこり笑う。
ツキは少し躊躇しながらも、お菓子を口に入れた。すると、口の中でパチパチと弾ける感触が広がり、なんとも言えない爽快な甘さが口いっぱいに広がる。
「うわっ、これ、なんかすごい…!」
「でしょ!?」
ヒナタは楽しそうに笑いながら、次にふわふわと浮かび上がるハート型のクッキーを手に取った。
しかし、ツキはお菓子を食べた瞬間から、頭が少しぼんやりしていることに気づいた。気のせいかと思いながらも、浮遊感に包まれているような感覚が広がる。
「ツキちゃん、大丈夫?なんかぼーっとしてない?」
「え、いや、大丈夫…だと思う。」ツキは曖昧な返事をしながらも、浮かんでいるクッキーをつまんで食べた。
クッキーを食べた瞬間、体が軽くなり、まるで宙に浮かんでいるような感覚がツキを包み込む。
「これ、なんか…変だね。」
ツキはやや警戒しながらも、もう一つの星型チョコをヒナタと一緒に食べた。
すると、今度は頭の中で星が輝くようなビジョンが広がり、視界が鮮明になりすぎるほどクリアになる。心が浮き立ち、なんだか妙な高揚感が胸に湧き上がってきた。
「ヒナタ、これ…おかしくない?なんか…体が変な感じがする…」
「え?そうかな?すごく楽しいし、気持ちいいけど…」
ヒナタはツキの反応に少し驚いたが、まだ深刻さに気づいていない様子だった。
ツキは再び口にしたメロディーキャンディーを噛んでしまい、さらに音楽が頭の中で鳴り響く。
心拍が速くなり、目の前の景色が鮮やかに歪んでいく感覚が強まった。
「これ、絶対おかしいよ…ただのお菓子じゃない…」
「ツキちゃん、何言ってるの?」ヒナタは少し笑いながら手を引いた。「大丈夫だよ、楽しい時間なんだから!一緒に楽しもうよ!」
ツキは不安を抱きながらも、ヒナタの笑顔に引っ張られる形で踊り続けた。体が妙に軽く感じ、視界が一層鮮やかになっていく。
「でも…なんか、これってただの楽しさじゃない気がする…」
ーーツキは感が冴えていたのだ。危機察知能力、又はその場を上手く対処する能力と言うべきか。
彼女の先天的な才能が嫌な予感を察していたのだ。
…お菓子には何か異常な成分が含まれているかもしれない──麻薬のような効果を持つ何かが…。
「ヒナタ、これ、もしかして危ないんじゃない…?」ツキが警戒心を露わにした時、ヒナタもようやく気づき始めた。
「え…?」ヒナタは少し焦った様子で、自分の手元を見つめた。「確かに、なんだか変かも…」
二人は徐々にその異常な効果に気づき始め、楽しさの中に潜む危険性を感じ取る。
しかし、お菓子の効果は徐々に彼女たちを支配していく。
「ツキ…どうしよう?」ヒナタが心配そうに言った。
私はとにかく冷静に対処すべき問題に対して考えた。
「まず、この場所から離れないと。何か解毒方法とか見つけなきゃ…」
「あっ…」
…ヒナタがそう言葉を発した。
その瞬間、ヒナタの顔は一瞬で変貌した。
…震えている。何か驚いている?ツキは不安がり心配した。
「ヒナタちゃん…大丈夫?」
その間、ヒナタは何も言葉を発さなかった。
そして少し時が経ち、ツキの方をゆっくりと見て答える。
「…ツキ。私、少し…ほんの少しだけ。」
ヒナタの手はずっと震えている。
「な、何?」
チョコレートが馬鹿みたいに甘く展開を誘っているようだった。
風が吹いた。
…ような気がした。
幻覚が見えてきたのかもしれない。
そしてヒナタが口をゆっくりと、空気に飲み込まれそうになりながら開いた。
「………記憶が、戻ったみたい。」