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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第二十六話 リミット

「…どうやらお前も中々やるみたいだな。俺としたことが見誤ったぜ。」


ガウエルの体からは禍々しいオーラが大量に溢れ出ている。

「…っ!?」

突如、ガウエルはその『異能』を解除したのだ。

それでも溢れ出るオーラの量には変わりないが。

「…いい判断だな、『帝の王』。」

エルは俺の隣にまでやって来た。

「…《リバイブ》」

エルは俺に治癒魔法をかけてくれる。傷はみるみる内に治まっていき、やがてある程度動けるまでは回復した。

「すまない。あまり時間がかけられなくて…」

「大丈夫だ。これだけ治癒してもらえれば充分だ。」

俺は立ち上がり、ガウエルを見据える。

ガウエルは一度『異能』を解除したとはいえ、素の力でもかなり厄介だ。

「どう戦うか…」

「その点なら心配はない。…ここからは消耗戦だ。」

「ん?…どういうことだ?」

俺はエルの言っている意味が分からないと、疑問を口にする。

「あの男の『異能』の代償さ。ボクの『異能』でその代償を見破った。」

と、淡々とエルは説明をしようとしているが、俺はその話の中で一度もこちらに近づこうとせずこちらを睨みつけているガウエルに違和感を感じた。


「…あいつは何で攻撃しようとしてこない?」

「出来ないんさ。」

「出来ない?」


エルはガウエルを見ながら言う。

「あいつの代償は、魔力の消耗に比例した自分の命を削るというものだ。」

「なっ…!?」

「魔力を消耗していないときには命も回復していくものらしい。」

そんな代償がついているのか。…いや、これはおそらく、

「そんな代償を、つけたのか?」

ガウエルは自分でその代償をつけたと考えるのが妥当だ。


「もちろんだぜ。代償ってのは、リスクが大きいほど自分に降り注ぐメリットも大きくなる。…もちろん、自分で死ぬようなことはしねぇさ。」

ガウエルがそう言ってくる。


「だから、そいつの『異能』が俺にとって天敵となるとは思いもしなかったぜ。お陰様で迂闊に動けねえ。」


「動けば、それに使用した魔力が少なからず消費される。…気づいているだろうが、消費した魔力を数倍に増やして強制的に溢れさせているからね。」

「…だから消耗戦ってことか。」

このまま何もしなくても、ガウエルの体からは魔力が溢れ出ている。代償として、魔力の消耗は命を削ることになっている。

だからこそこの消耗戦はガウエルには最適解だ。


「…そう思うか?」

だが、ガウエルは不敵な笑みを浮かべてこちらを一瞥(いちべつ)する。

「この程度の魔力の消耗を続けたって、俺が死ぬのは日付が変わる頃になるぜ?」

今はおそらく夕方5時過ぎと言ったところか。

つまり、ガウエルが言うにはあと7時間以上も消耗戦をするつもりだ。


「…だったら、今のうちにこっちから叩けば…」

「おいおい…お前も能力者なら分かんだろ?」

このままこちらから一方的に攻撃すればガウエルも『異能』もしくは力を使わざるを得なくなる。

それならリミットも早まると思ったが、ガウエルはそれを頭から否定してくる。

「…『異能』ってのはなぁ、そんなに便利じゃねえんだよ。」

「…っ!」

その言葉にはやけに信憑性があるのを感じた。

つまり、エルがこのまま短期決戦で終わらせるのではなく消耗戦に持ち込もうとしたこと。それは、エルの『異能』が関係ある。


「…エル?」

「安心してくれ。今、ラクトが思うような変な代償はないさ。…ただ、あいつの言うことも間違いではない。」

「…消耗戦をする理由は?」

「簡単なことさ。…こちらの消耗はあちら以上だからだ。何もしなければ問題はないけれどね。」

エルは『異能』の「技」を使用し続けるのに体力やら魔力やらを相当消費している。

ガウエルも消耗しているが、向こうは動かないことで余計な消耗を防いでいる。

こちらから仕掛けても、ガウエルを倒しきることは難しいだろう。ガウエルも最低限の防御はしてくるはずだ。

先に底が尽きるのはエルだろう。


「…俺としては、7時間だろうが何だろうが消耗戦にのってやるぜ?…まぁ、あの館にいたヤツらがどうなるかは知らねえがな。」

「くっ…!」

このままでは倒すことができない。俺一人で戦う?だがそれでも『異能』を使われたら10分も持たないだろう。


「だが、確かに消耗戦をすると時間が惜しいな。…なら、良い提案をしよう。」

と、エルが俺に向かって話をしてきた。

「…何だ?」

「今のラクトは全力じゃないだろう。…だが、もしもあいつの能力が制限された場合、5分で倒すことは可能かい?」

「っ…!?」

エルが不思議なことを聞いてくる。…だが、ここで意味の無い質問をするような奴でもない。能力が制限された状態のガウエルか…おそらくチャンスはここしかないだろう。ーーーだったら、答えは決まってる。


「…余裕だ。」

「…ふっ。それでこそラクトだよ。」

エルは俺の答えに満足したのか、一度目を瞑り、そしてガウエルを見据えた。


「はッ。…早死にしてぇのか?」




「ボクの力がこれだけだと勘違いしないでほしい。…「(こく)」。」




「……は?」

ガウエルは自分の変化に驚いた。いや、驚くまでにかなりの時間を要していた。

何故なら、先程まで大量の魔力…力が溢れ出ていたというのに、今では一滴足りとも、ガウエルの体から溢れ出している力が無いのだ。


…まさしく、それは『非能力者』のようだった。







「…てめぇ、何しやがった?」

ガウエルは自らに起きた異常事態に驚きつつも、それをした張本人に今の状態を聞こうとしている。至って冷静だ。

「…今のは2つ目の「技」さ。…この技を受けた者は受ける前の状態以下で固定される。」

「受ける前の状態以下で固定?何だそれは。」

ガウエルは意味がわからないと聞き返す。

俺もはっきりは分からないが何となくは理解できる。


「…今君は、先程自分の力をかなり抑えていたね?ほとんど非能力者と変わらないほどまで。…それが仇となったのさ。」

エルが言い終わると同時、俺はガウエルに接近した。

「はッ。要するに、力なしでこいつ倒しゃいいんだなッ!」

ガウエルは禍々しい大剣を手に持とうとして、その大剣を持ち上げられなかった。

「……」

「まさか、自分の武器すらも持てないまで力を抑えていたのか。支配者とは言っても死ぬのは怖いか。」

「…ちっ!」

俺はガウエルの横腹に回し蹴りをくらわす。それを腕で防ぐも、耐久力がなく大きく吹き飛ばされた。

「がぁっ…!」

「…っ!軽い。」

力がほとんど入っておらず、容易に吹き飛ばすことが出来る。

だが、エルは5分で倒せと言った。つまりは、


「5分間…それがこの力のリミットか。」


それだけ強力な力でいて、ガウエルも強大な敵ということ。



「…頑張ってくれ、ラクト。」

エルは辛そうな顔をしながらも、なんとか『異能』の維持を保っている。


「仲間が必死になって活路を見いだしてくれてんだ。…絶対に倒す!」

制御はする。だが、出し惜しみはしない。俺は…もう大切な人が傷つくのは見たくない。


「…来菜、悪い。」

全てを思い出した俺は、これからする事の代償について、謝るべき人物に謝ってから使用することにした。



「『異能』…「日天(にってん)」。」

「っ!」

「…ッ!?」

その瞬間、俺の体の一部から炎に似た、紅く光り輝いているオーラが溢れてくる。


「何っ、これ!?」

配下たちと戦っていた麗たちも、俺の力に驚いている。


「…まじかよ。とんでもねぇな。」

ガウエルは俺を見て驚きつつも、まるでこの後を悟ったかのように、やけに冷静だった。




「それは助かるな。…すぐに決着をつけてやる。」






「…こんな『異能』今まで見たことねえぜ。…ついてねえな。」

ガウエルは、今や非能力者と同等の力しかない。

…俺に対抗することも、逃げることも叶わないだろう。


「…最後にもう一度質問しよう。」

「…ッ!?」

俺は一歩で、ガウエルの正面に立つ。

「…黒幕の神の名前、そいつの居場所は?」

「…目的は…聞かねえんだな。」

「それは後だ。黒幕から聞く。で、名前と居場所は?」

「……」

ガウエルは口を閉ざしたまま動かない。

「…時間稼ぎか?」

「…いや…はぁ、俺がバラしたってことを他の奴らに言うなよ?」

ガウエルは抵抗することも無く、淡々と話し始めた。


「…神の居場所は…たぶん『シボラセカイ』にいると思う。」

「……」

『シボラセカイ』か。ミルと会った、最初に行った神の『セカイ』だったな。

「…それで、神の名前は?」


俺は今日、初めて自分の行動に後悔したかもしれない。





「…『戦争と死の神』オーディンだ。」

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