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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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番外編 行動

それは一瞬の出来事のように思えた。否、本当に一瞬の出来事だ。助けようと、動き出した時にはもう遅かった。

膝から崩れ落ちるとはこの事なのだろうね。

私は、手遅れだと悟った瞬間に、地に膝をつけて放心状態となっていた。


「ナナカさん…」


そんな私の背中に向かって、声をかけてくれたのは壁に飛ばされた私を助け出し、治癒をかけてくれたグリナさんだった。

「…ナナカさん。ラクトさんならきっと大丈夫です。私より、ナナカさんの方がラクトさんに詳しいのは承知ですが、私から見てもラクトさんはあのままやられるわけないと思っています。」

グリナさんが私にそう優しく声をかけてくれる。

…そうだった。絡斗はあの程度でやられるわけないもんね。私がここで落ち込んでいても仕方がない。絡斗ならきっと、こういう時ーーー…


「…そうだね、グリナさん。…よし!一旦、『核』が壊されていないことが分かったし、襲ってきたやつも居なくなったから暫くは大丈夫だよね?」

私は切り替えて、絡斗がするであろう考えをかわりにしなくちゃ。

「…たぶん、暫くは大丈夫かも。」

「だったらこの間に1度館へ戻りましょ。その前に、エルたちと合流しないと。」

私はそう言うと、まるで自分に言い聞かせていたかのように先の言葉を心の中で反復させ、そして覚悟を決め立ち上がる。


「ら、ラクトさんのことは…」

「もちろん心配です。だけど、ここで何を言っても助けられないですし。館に戻ってこの事を他の皆と共有しないと。」

私がそう言うと、グリナさんは少し考え、笑顔でこちらに向き直り、

「…流石はナナカさん。強いですね。」

と、優しく言ってくれた。

「よし、それじゃあエルたちと合流したいんだけど…」

私はそこまで言って、口を閉ざした。

「どうしたんです?」

そんな私を見て、不思議そうにグリナさんが言う。


「…どうやってエルたちと合流すればいいかな?」

「…それは…思念魔法を使えば良いのでは?」

そう思うのが普通だろう。

そして、グリナさんには伝えていないからこそ思ってしまう疑問でもある。

「実は、私水属性が扱えないの。…過去に理由(わけ)があってそれからずっと適性値は 0 のままなんです。」

思念魔法というのは、離れた位置にいる仲間と連絡を取ることができる魔法だ。そして、全ての思念魔法は水属性を含む複合魔法でもあるのだ。

「っ…。その、すみません。」

「いえ、気にしないでください。それよりどうしましょうか。」

グリナさんとはまだ会って間もない。エルたちの魔力をまだ把握しきっていないのだろう。

「うーん。どれがエルさんたちの魔力の流れか分からないわね。」

どうやら、思念魔法を繋げることは難しいみたいだ。


「…一先ず、この遺跡の入口目指して歩く?」

「…そうですね。そうしましょう。」

私とグリナさんは、歩きながら連絡の手段を考えることにした。







来た道を戻ること約5分。最初に二手に別れたエリアまでやって来た。

「…まだ中にいるかなぁ。」

私はそんな疑問を持つ。万が一、無いとは思うがエルたちも何か緊急の事態があった場合、先に館へ戻るという選択を取る可能性もあるからだ。

わざわざ居ないのに、ずっと探しているなどという無駄足は踏みたくない。


「その心配なら要らないですよ。」

と、悩んでいる私にグリナさんが声をかけた。

「…歩いている時、フレイヤさんの方に《コンタクト》を取ってみたんですけど、遺跡に向かったメンバーはまだ誰も戻ってきていないみたいです。」


「本当ですか!それなら、エルたちもまだ遺跡の中という事ね。」

「奥へ向かってみましょう。」

グリナさんはそう言い、エルたちが向かった方向へ進んでいく。私もその後についていくように進んでいった。



中を進んでいくと、私たちが入っていった側と鏡写しのように造られていた。そのため、もちろん…

「…階段だ。」

私たちが通った所と同じように、目の前には階段と奥へ続く廊下があった。

「…困るわね。つくづく最初に分かれない方が良かったって思っちゃうわ。」

それも今更言っても遅いので、気にせずに今の状況をどうするか考える。


「奥へ進むと、こっちにも地下へ続く階段があるのでしょうかね。」

グリナさんがそう言ってくる。

「…地下へ行きましょ。エルたちも頭は回るし、グリナさんと同じように考えて地下を目指している可能性が高いですし。」

「分かりました。」

私とグリナさんは階段を登らずに、奥へと進んでいった。





「あ、地下へ続く階段があったわ。」

歩き続けていると、すぐに階段へとたどり着く。

「…思ったより早く感じましたね。」

「廊下で魔物の横槍が入らなかったのもありますよね。」

幸い、こっちの廊下では魔物と接触することが無かった。

そして、階段を降り終えると何やら人影が3つほど見える。

だが、それらは決して敵意を放つ人物ではなくーーー、


「あ!やっと見つけた!」

私の声に3人が一度に振り返る。

「な、なんだ。ナナカか。」

「ちょっと、驚かさないでよ…」

「驚いた…」

私とグリナさんは、やっとエルたちと合流を果たすことが出来た。


「…それで、七香たちはなんでこっちに来たの?ってか、絡斗は?」

竜那が質問をしてくる。

「その事について、3人に話がしたいの。」

私は、さっき起きた出来事をなるべく分かりやすく説明をした。


それを一通り聞き終えると、最初に声を発したのは、

「嘘っ!?絡斗は大丈夫なのっ!?」

意外にも竜那だった。

「たぶん…大丈夫だと思う。…いや、大丈夫だと信じるしかないよ。」

私がそう言うと、竜那も少し落ち着きを取り戻したのか、私の言葉に耳を傾ける。


「一度、館へ戻ろう。それでいて、皆にもこの事を伝えてもう一度作戦を立てる必要があると思うの。」

「確かに、ナナカの言う通りだね。ボクとしても戻る方が賢明だと思う。」

エルが私に同意する。

「そうだね。館に戻ろう。」

竜那と竜佳も頷いた。


「それじゃあ、ボクの転移魔法で戻るとするよ。」

エルがそう言い、私たちはエルの傍に寄る。


「…《リーヴ》」

私たちの体は光に包み込まれて、次の瞬間にはその場から立ち去っていたのだ。






…目の前の強い光が無くなり、周りが見渡せるようになった。

そして、自分の居場所を確認する。

「よし、戻ってきたわね。」

私は館の前へ戻ってきたことを改めて確認する。

「まずは中に入ろう。」

私たちは、館の中へと入っていく。


最初に出迎えてくれたのは、私たちの身を案じてくれた、ここ『アルフセカイ』の『妖精姫』フレイヤさんだった。

「皆さんっ!…大丈夫ですか!?」

フレイヤさんは私たちに駆け寄って、無事の確認を取った。

「ええ。なんとか大きな怪我はしてないです。」

グリナさんが答える。

「それは良かった…あれ?ラクトさんは…」

と、フレイヤさんが安心するのもつかの間、ここに居ない人物のことを口に出す。


「その事なんですけど…昨日の会議のメンバーを集めたいんです。…皆の前で話したいことなので。」

私がそう言うと、何かを察したかのようにフレイヤさんの表情が曇っていき、小さな声で

「…分かりました。」

と呟いて、皆を呼びに走っていった。



数分が経ち、ソファには昨日の夜に会議を行った13人のうち、絡斗を除いた12人に、 マキナとカナデとフランを合わせた15人が集まった。


「ラクトに何かあったの!?」

第一声に叫んだのはカナデだった。

「その事なんだけど、実はね…」

と、私は前置きをしてカナデだけでなく皆に伝えるようにエルたちに言った事と同じことを話した。




そして、私の話を聞き終えると皆の表情はまさしく、エルたちが初めて聞いた時の顔と似ていた。

「そ、それでねっ…絡斗は簡単にはやられたりしない。幼なじみの私が言っているんだから信じて。」

皆をこれ以上落ち込ませまいと何とか声を出す。


「そうだよね。…うん。私だって昔から知ってるんだからラクトなら問題ない!」

と、私に賛同してかカナデが少し落ち着きを取り戻した。


「それで…どうしましょうか?」

皆がある程度落ち着いた頃で、フレイヤさんが言ってくる。

おそらく、攻めてくる「支配者」を優先するのか、拐われた絡斗を優先するのかということだろう。


「もちろん…どっちも全力よ!」

絡斗ならきっとこう言うはず。私がそう言うと、皆の目にはやる気が満ちてきた。


「そうだね。…個人的にはやや絡斗君を優先したいけど…」

と、結乃ちゃんが苦笑いしながらそう言う。

「もちろん!ラクトが若干優先されのはもちろんだよね!?」

それに食いつき、カナデが声を上げる。隣でフランが頷いていた。


「私も同じ気持ちですが、両方同じように優先してもらいたいです…」

と、フレイヤさんが困り気味に苦笑いしていた。


ーーーと、こんな事を話しているとマキナの周りが淡く光輝き出した。


「…《神呼(かみよび)》だ。ラクトに呼ばれている。」

「ほんと!?それなら、ラクトは無事ってことね!」

カナデがそれを聞き、嬉しそうに言う。


「マキナ…頼んだよ?できればすぐに戻ってきてもらえると助かるけど。」

私は今すぐにでも転移していきそうなマキナに言う。


「分かった。…ラクトの事は、任せて欲しい。」


そう言って、マキナはこの場から消えていった。


「待っててね…絡斗。」



別に私が助けに行くわけではないけども、そう心の中で思っていた。

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