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消える『セカイ』と笑う『ボク』  作者: 生贄さん
第3章 『妖精姫の願い』
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第七話 交流前夜

ーーー俺たちはまだ状況を理解できていないようだ。


「…化け物じゃん…」

七香がそう言うが、俺も同じことを思っている。

どれだけ攻撃をしても即座に回復し、即死とも言える魔法を耐え凌ぐ。セレス自身も中々にやばいが、一番の問題は、

「あの、特注品とか言ってるやつだな。」

それが更なる強さを証明している。


「…ぐぁ…く、くそっ……」

リブネの首元を貫いて、奪烈剣がその力を奪い去っていく。

セレスから離れようと、リブネが藻掻くがいつの間にか《ギールチェーン》によりその四肢が縛られており、上手く離れることができない。その間も、奪烈剣による力の吸収は続いている。


「…くぁ…ぐっ…」

徐々にリブネの体が淡く光り出した。

「あらあら、もうお終いかしら?」

セレスが余裕の笑みを浮かべリブネを見る。


「こんな…はずじゃ…私は…精霊…だぞ…」

すでにリブネは意識がないに等しくなっている。


「…これじゃあ…折角…命を…授けてくれた…あのお方に…」

「…何かあるようね?」

セレスがその言葉を聞き反応を見せるが、リブネの続きの言葉よりも早く、奪烈剣による吸収が終わってしまった。


「………ぁ…」

そして、リブネの体は、光ったまま分散して、消滅してしまったのだ。






圧倒的な戦いが、最後は呆気なく突然と訪れた。

「…セレスが勝ったのか?」

俺は目の前に立っているセレスだけを見て、勝敗を実感した。

「…あらあら皆して、どうしてそんなに固まっているのかしら?」

セレスがこちらに向かって歩いてきた。


ーーーマントをつけた状態で。


「…あ、あれ…マントが…なんで…?」

皆がセレスの姿を見て驚いている。


「ふふっ…特別に教えてあげようかしら?この「与導剣インフィール」の効果よ。」

と、黒の短剣を手に持ち、見せてくる。

「その短剣の…効果?」

「簡単に言ってしまえば、同じものを生成するのよ。」

と、手の内を見せてきた。

「…同じものの生成って…コピーってことかしら?」

竜那が考えた結果、その結論へとたどり着く。

「…そう思ってもらって結構よ。…全てを言ってしまったら、敵になったとき不利になってしまうから。」

どこまでも慎重に物事を進めている。


「…精霊ちゃんを糧にできたし、こちらも約束は守るわ。」

と、俺の方を見て、セレスがそう言い出す。


「目的が達成できたし、今は見逃してあげるわ。…また会えるのを楽しみにしてるわね?」

それだけを言い残し、ダイトラントの大樹から去っていった。




「…セレスはどうする?」

結乃が聞いてくる。

「今は見逃すと言ったから、少なくともここにいる間に会うことは無いだろう。」

何族かも不明だ。見た目で言えば人族に似ている気がするが分からない。セレスのことは、一度考えなくていいだろう。


「あの…助けて頂いてありがとうございます。」

シーラが改めてお礼を言う。

「構わないぞ?私も倒さなくてはいけなかったのだから!」

特に役に立ってはいないシェードが一番偉そうな態度を取っている。


「…それじゃあ俺たちは戻るとするか。」

「そうね。」


「あの…また、よければお話をしたいです。」

シーラが俺たちにそう言ってくる。

「もちろんだ。…しばらくここにいるから、遊びにでも来てくれ。俺たちもまた遊びに来るよ。」

それを聞き、嬉しそうにシーラが最後まで見送りをしてくれた。







そして俺たちは、来た道を戻ってきて館にやってきた。

「…これからどうする?」

七香がこれからのことについて聞いてくる。

夕食にしてはまだ少し早い。かと言って今からエルたちを探しに行くのには遅すぎる時間だ。


「…うーん。どうするか…」

悩んでいると結乃が、

「それならば、皆で絡斗君の部屋に集まらないかい?」

と言ってきた。

「…え?」

「絡斗君は一人部屋だろう?それに、部屋は広いと言っていたし。集まっても狭くならないだろう。」

「いやいや、何故俺の部屋に集まるだなんて…」

「これからのことを考える…作戦会議みたいなものだと捉えればいいんじゃない?」

確かにそれならば何も問題は無いだろう。

「私は良いよ。」

「私も別に構わないわ。」

「私も大丈夫。」

皆賛同し、一度部屋に戻り準備をしてから俺の部屋に来ることとなった。


「これからどうするんだ〜?」

シェードは俺の部屋にいる。

「…明日は、午前中が交流だからな。…午後、エルたちを探すかな。」

午前中には、ここ『アルフセカイ』の住人の一部との交流会を行うことになっている。


「よっ。」

と、数分経った頃に七香たちがやってきた。


「それで、明日の交流会って大丈夫なんだろうね?」

第一声にそんなことを言ってくる。

「…ここにはフレイヤさんとその兄を襲った人物…おそらく魔族がいるかもしれないってことだろ?」

それの対処も考えないといけないな。


「…流石に妖精族と魔族を見間違うことはないだろうけど…」

七香も同じ心配をしている。


「…明日は何も起きなけりゃ良いけどな。一応、交流会の中で、俺たちの特訓も行うみたいだから心配し過ぎなくて良いだろ。」


「でも、問題ないのは先生たちと私たちくらい。他の生徒はそこまで強いと思えない。」

竜佳は思ったよりも言うことに躊躇(ちゅうちょ)がないな。


「まあ、強いて言うならもう1人の「永代の能力者」くらいじゃない?」

竜那も同じ意見だと言ってくる。

「…皆を強くするためにも、なんとか明日の特訓は無事に済んでほしいな。」


「そう言えば、明日の午後こそは探しに行くの?」

「ああ。そのつもりだ。」

「…てか、あんたカナデとRine交換してるよね?それで聞いてみたら?」

「残念。カナデは俺の家に置いてきている。」

家を出る前に、カナデのスマホが机の上にあるのを見てきている。


「全く、カナデは…何してるのよ。」

「俺たち人みたいに、そこまで必要なものではないんじゃないのか?」

「そうかもね…」


その後は、明日のことについて色々と話し合い、話が終わると高校生らしい日常会話で、夕食までの時間を過ごした。



朝と夜は、館で食事を出してもらえるらしく、時間内に食堂に向かえば館で食べることができる。

俺たちは、時間になると食堂に向かい皆で食事をする事にした。


「…これ美味しいわね。」

人族の『セカイ』で出される食事とは全く違く、未知の食べ物に皆興味津々だ。


「ほんとだ。…美味いな。」

「そうだろう?美味いだろ!」


「…というか、シェードって精霊でしょ?精霊って食事するの?」

竜那が、俺たちと同じく食事をしているシェードに質問する。


「これは食事じゃないぞ?噂を探しているのだ!…あと、精霊は食事をしないぞ?」


『噂を流す精霊』と言うより、噂を探す精霊のほうが合っているんじゃないのか?


と、俺たちが食事をしていると近づいてくる一人の人物がいた。

幸崎先生だ。

「日向君。夜9時に、私の部屋に来てちょうだい。」

おそらく、朝言っていた神の事だろうな。


「分かりました。」

それだけ伝えると、すぐに幸崎先生はこの場を離れて、自分の食事に戻っていく。


「…絡斗は先生とそういう関係?」

竜佳がなんの悪気もなく、首をかしげながら聞いてくる。

「竜佳…それはないから変なことを考えないでくれ。」



そして、俺たちは食事を終えてそれぞれ自分の部屋へと戻っていく。






…先生が言う9時までは、まだ一時間ほど残っている。

「はぁ…急に《神呼(かみよび)》が使えなくなったけど…気のせいか?」

俺はそんなことを考えながら横になっている。


「…それにしても初日だと言うのに…交流とは関係ないところで疲れたな。」

一日だけで、かなりの疲労が溜まっている。


俺はそんなことを呟きながら、段々と目を閉じていく。

目の前が…薄らと黒くなっていくーーー…


「…おーい!寝てるのか?」

「うっ…なんか、痛いんだが…」

俺は目を開ける。

「もう1発やっとくか!」

「…って、待てや。」

俺は、何故か叩いてくるシェードの手を抑えてシェードを見る。

「なんで叩く?」

「もう9時になるぞ?寝てたから起こしたのだ!」


そう言われ時計を見ると、針は8時55分を指している。

「そ、そうか。」

俺としたことが、うっかり疲れで寝てしまうところだった。


「ありがとな、シェード。」

俺は礼を言い、先生の部屋へ行く準備をする。

流石に先生との約束を破るわけにはいかないからな。


「私も行っていいか〜?」

と、シェードから言われる。

精霊と一緒にいるところを見られているからな。

一緒に説明した方が楽だろう。


「いいぞ。」

「おお〜!やったー!」

嬉しそうにしながら、シェードが後をついてきた。


「…たとえ先生だとしても女性の部屋に行くのは気恥しいな。」




俺はそんなことを思いながら、シェードと2人で先生の部屋へと向かっていく。

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