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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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43/57

 五 ~  そんなこと、聞いていないぞっ。  ~ (4)

 副作用なんて深く考える必要ないのに。

 解決方法なんて簡単なんだから。

            4


 いいのか?

 いやいやいや。そんなことないよな。

 納得なんかできない。副作用を抑えるために、血を吸われなければいけないなんて。

 しかも、僕がつらいと言っているのを、楽しむ素振りを見せる聡に、より苛立ってしまう。

 もちろん、僕の副作用のことは、姫香にも伝わっている。だからか、次の日からこれまで以上に血を求めるのが強まっており、僕を困らせていた。

 当然、僕は断っている。

 血を吸われるなんてごめんだ。前は特別なのである。



 ただ、気持ちの上での変化は多少はあった。

 あの公園がやはり、気になって仕方がないのである。これこそ、血を吸われたあとの後遺症ではないか、と疑いたくなる。

 聡からは、公園を避けるようにと忠告を受けている。もちろん、僕もそう考え、姫香との帰りも別の道を選んで歩いていたのだが、この日だけは衝動を抑えられなかった。

 聡に相談しに行った日の三日後である。

 副作用とされる頭痛は幾分、治まってはいる。

 胸が絞められる苦しさも残っていたが、気にしなかった。

 放課後の午後六時すぎ。

 夕暮れに紅く染まる芝生。あの広場に出たとき、僕は足を止めた。

 今日も人通りはまだ多い方である。今日は子供の姿もあり、遠くから声が飛んでいた。

 この広場にも、一人の女性がいた。

 だが、この女性はどこか周りとは違う雰囲気を漂わせており、僕の足は止まってしまう。

 広場の中心にたたずみ、夕焼けを眺めるように立っていた女性は、僕の足音に気づいて振り向いた。

 どこか幼い表情に、大きな目が特徴的な女性だった。澄んだ眼差しは、僕を吸い込むようで、何かを訴えていると感じた。

 大学生らしき小柄な女性の姿に、心がざわついてしまう。いや、心が警告していた。

 なぜ、怯えているのか。怯えているのなら、と一筋の考えが巡った。

「……あなた」

 記憶の淵に、目の前の女性が存在していた。記憶のなかでは、怯えた様子でこの芝生の上で倒れ込んでいる姿。

 脆そうな姿であった。

 この女性は、姫香に襲われていた女性であった。

「……なんで?」

 ちょうど、この場所で彼女は襲われていた。それならば、ここは恐れる場所じゃないのか?

 本当なら、二度と足を踏み入れたくないはず。

 それなのになんで? しかも一人で?

 どうしているんだ? と問いたいはずなのに、言葉が喉を通るのを拒絶した。

 さらに真剣な様子で睨まれてしまい、僕は臆してしまう。

「あなたも一緒なんでしょ?」

「ーーはっ?」

「あなたも私も一緒なのよ。この地から離れられない。決して、どうしても……」

「何を言っているんだ」

「……関わらない方がよかったのに……」

 力なく呟いた声は、風に乗って散り、僕の鼓膜まですべては届かなかった。

 ただ、背けた横顔は夕焼けに寂しそうに照らされていた。

 目の前に現れたのは、何が目的?

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