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吸血彼女のお願い  作者: ひろゆき


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26/57

 三 ~  血を吸われることを考えれば……  ~ (8)

 突然、突拍子のないことを聞かれても、ちゃんと答えることなんてできない。

           5



「なぁ、お前って今田とつき合ってるの?」

 朝、学校に着いて席に座ろうとしていると、吉村が駆け寄って来て、目を丸くしながら聞いてきた。

「はぁ? んなわけないだろ」

 まったく。何を言い出すのか……。

 珍しい物を見ているように、あたふたと聞く吉村を軽くあしらう。

 椅子を引いたとき、斜め後ろの姫香の席を見ると、あいつはまだ登校はしていなかった。

「でも、最近、お前らがよく喋ってるじゃん。あの今田だぞ」

「“あの”って何がだよ。別にほかの奴とも普通に喋ってるだろ。まぁ、最近は前よりも喋るようにはなったけど」

 姫香をバイト帰りに迎えに行ってから二週間が経とうとしていた。

 その間に、姫香の学校での姿も少し変わっていた。以前よりも周りと喋っている様子に見えた。

「でも、夜にお前が一緒に歩いてるのを見たって聞いたぞ」

「あぁ、それね」

 実は、二週間前、姫香から吸血鬼の話を聞き、咄嗟的に僕はバイト帰りに迎えに行ってもいい、と提案していた。

 姫香が一人であの公園のそばを歩き、発作に襲われる不安があるのなら、それをごまかすために一緒に帰ってもいい、と言ったのである。

 予想にもしていなかったらしく、姫香は目を点にしていた。

 ちょっとした同情かもしれないが、自分が一緒に歩けば、気が紛れて平常心を保てるのなら、と思ったからである。

 最初は疑い深く「本当に?」と執拗に聞いてきたが、何度も「そうだ」と頷くと、姫香はさらに驚いていた。

 そして、それから姫香がバイトのとき、僕は駅の方へと迎えに行き、姫香の家の近くまで送っていた。

 姫香を守るため? いやいや、そうじゃない。発作を起こしたあいつから、誰かを守るために僕は行っているのだ。

 何度もそう自分に言い聞かせていた。

 おそらくその帰り道を誰かに目撃されたのだろう。

「たまたまだよ。たまたま。駅の方に用事があって、行ったらあいつと会った。それで喋っていただけだよ。深い意味なんてないさ」

 椅子に座り、あくびと伸びをしながら、あしらった。下手に話をして複雑にするのも厄介なので。

 それでも納得できない吉村は、くじけずに前の席の椅子に、こちら側に正面を向けて座り、前のめりに首を伸ばしていた。

 これは尋問なのか?

 吉村は眉間にシワを寄せ、厳しい表情を崩さない。

 ま、無視をしていれば、いずれは諦めるだろう。窓の外を眺めると、晴れてはいるが、風が強いらしく、雲の流れは早かった。

 雨が降れば面倒だな、と考えているとスマホが鳴った。

 ーー 今日もよろしくね。

 と姫香からの連絡。もとい、催促であった。

 短い言葉に溜め息をこぼし、

 ーー うるさいっ。

 と文字を打つ。

「でも、今田の奴はお前とつき合ってるって言ってるらしいぞ」

 返信をした途端、吉村から信じがたい言葉が発せられる。

「ーーはぁっ?」

 提案をしたのは善意であって、そこに変な気持ちなんかないさ。


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