第53話 王都襲撃
もう何度目になるか分からない襲撃、それは日が沈み真夜中になった辺りで動き出す。
王都には不用意に人間を入れないために巨大な、およそ5メートルにも及ぶ高さの外壁が円形に作られている。
地形の問題により完璧な円ではなく楕円に近いけれど、角張っていないので誤差の範囲だろう。
四つの検問箇所があり、内部に侵入するにあたってめんどくさい事を聞かれる事でも有名だ。
貴族の場合は検問などはないが、とそう言っても直接積荷を確認されるような形でない。王国兵士の門番、俗に言う憲兵とされる人間が怪しい者を引き留めるだけだ。
行商人にはそれなりの目印や許可証となる物があるので、それが無いまま中への侵入を果たそうとする物や、指名手配犯などは止められる。
これから犯罪を犯すと決まっているクロード達も「こんな夜更けに現れる不審者」と一括りにされてもおかしくはない。
闇に紛れるために来ているローブや作戦に必要な道具をもっている姿など、不振極まりないのだ。
「あとは城に突撃して、偉い奴を助ければいいんだったな」
外壁の頂上に座り込んで敵城視察を決め込む集団の姿がある。
いつもなら1部隊か2部隊に収まるところ、今回は情報収集などの戦力に数えられない部隊を除いた7部隊での突撃となる。
連れてきているのは部隊の中でも精鋭揃い、末端の兵士の役目は戦争の時の戦力。今ではないのだ。
「外壁も登れない事はない、登るのが難しいだけで超えてしまえばいい」
外壁を登るなどと言う事を成し遂げた人間はいない。
それはただ単に登ってまで入るメリットがないからだ、検問と言えば聞こえはいいが結局している事は第一印象の選定。怪しい動きさえしなければ何とでもなる。
犯罪がしたければ外壁を作るほどの防衛機能がある都市などは狙わず、外壁がない柵だけの小さな都市を狙えばいい。
「作戦内容は頭に入っているな!」
顔に傷がある男、大柄のコルキウスの中で最大権限を持つ組織の長。
クロードが彼と話をしたのは最初の会議以来であり、その後は会う機会もなかった。
「第7部隊レイリと第4部隊ナタリー。憲兵を戦闘不能にし、防衛機能を停止させろ」
「私と第3部隊が情報機関を破壊し、援軍要請を無効にする」
一番近い街を調べるとたった1キロ先に存在する。
王都という大都市の恩恵に預かろうとしてか、近接する森以外はかなり近い場所に別の都市がある。伝書鳩を飛ばされ援軍がやってくれば王都からの脱出は困難になる。
そして今回の事件の弁解をする時間を与えない事。
火をつけた後の消火作業への時間を遅らせることが本来の目的。
「第10部隊は救出だ」
地下牢兵へ行き、目的を達成する部隊。
だがそう簡単に進入できるはずもない。
「第6部隊アランとクロード、お前達が一番危険を伴う王城内部に侵入しての陽動だが、生きて帰ってこい」
今回の目的は地下牢だが、それを勘付かれてしまえば全てが終了する。今回のクロードの役目は王城内部での妨害工作、中で暴れる事により兵を集中させる任務だ。危険はこの中でも随一だが、戦力を考える場合は彼らに頼むしかなかった。
「はい」
「よろしく頼むぜ」
ロングソードを腰に吊るし、レザーで出来た装備を着込む何処か荒々しい印象を受ける青年だったが強さだけは折り紙付き。今回の戦力が最も必要になる作戦には彼ほど適した人間はいなかった。
そしてクロードが組み込まれたのは爆発物の所持が理由だ。
クロードが作り上げた手榴弾を使えば作戦が失敗したとしても、敵と城を一部半壊させることができる。その隙に逃げることもできるという事で今回配属された。
「各自作戦決行に移れ!」
全員が全て足を動かし、目的のポイントに走り出す。
クロードの目的地は王城に、そしてその前に内部への侵入を果たす必要がある。
「俺が錬成で鍵を開けます、そこから侵入しましょう」
「俺には向いてないから頼むわ」
ただ王城に行くのなら、きっと相対する機会はある。
ガジスは確実にどこかにいるだろうし、現在の王であるレイガスも居る。マルクがどこに居るのかは知らないが、居たとしても不思議ではない。
クロードがするのは陽動だが、戦闘を避ける事はまず出来ない。巡回する騎士や兵士との戦闘をすることにも意味があるので確実だ。
そこでガジスの姿を見た時、クロードは迷いなく剣を触れるのか。
覚悟はできている、親を殺すつもりでいるけれど、意識と情は別物だ。
「俺が父さんを殺すのを躊躇ったら……俺を引っ叩いてください」
もしも目の前に転がり込んできた時、迷いなく剣を振るうつもりで居たのにできなかった。そんな事があると知っている。
感情は人が思っている以上に強いのだ。
「俺が殺せばいいだろ。迷うなら違うやつが殺せばいい、よく知らんが適材適所って話だ」
言っている意味がわからないと、アランが言うが。
「それじゃあ決着がつかない……俺が殺さないと何も終わらない」
「それは絶対なのか?」
「絶対ではないですね、別に俺が殺さなくても別の人が殺せば結果は同じ。ガジスが死んだという事実に変わりはない」
今回必要なもの、人殺しに必要なものの大半は誰が死んだかだ。
誰が殺したかよりも先に、誰が死んだかを人は優先する。死んだ事実の上で誰かを憎む、そういう生き物なのだ。
「ただ、俺はそれが嫌です。それでは何の解決にもならない、終わらせるのは俺じゃないといけない、そうする事しか全てを終わらせる事はできない」
「俺には全く理解できねぇ」
ただの主観でしかないクロードの意思で、それに誰かの気持ちは含まれていない。そのため全てが円滑に進む正解があったとしても、それに手も伸ばす事はしない。
クロードが始めた物だから誰かに譲るわけにはいかなかった。その罪を他人に押し付ける事は許されない物だ。
「それがただの自己満足ならどうでもいい、だが男の意地ってんなら話は別だ。お前が女守ろうとしてるのと同じで最後まで責任とれんなら、俺は見て見ぬ振りしてやる」
理解したつもりはない、クロードが何を考えているのかなどアランには分からない。ただ「これを見なかった事にして明日食う飯がうまいか」そうなってしまえば目覚めが悪い。彼の行動原理はそんな物だった。
「ありがとうございます」
「俺もお前も死ななければな」
できるならどっかで書き直したい、特に最初の方




