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第43話 何もかもが消え失せた


どうしてこうなった、

なぜこうなった、


何を間違えた、どうすればよかった、正解があるのなら教えてくれ。


クロードの中で負の感情が渦巻き、膨れ上がり、暴走した。

理性というストッパーを破壊するにふさわしいほどの憎悪が、身体の芯から溢れ出た。


何もできなかった自分への怒り、

シャルラを傷つけた敵への怒り、


何もかもが消えてしまえ


「ががあぁぁぁぁあああああああ」


まずは一人を殺した。

騎士の鎧を着て、ロングソードを持っている青年を鎧ごと打撃で砕いた。

衝撃で身体から臓器を撒き散らしながら建物に叩きつけられ、原型を止める事なく壁にこびり付いた。


ガントレッドに仕込まれた術式を起動し、身体強化魔術も併用。空間収納に入れてあった武装を全て装着して次の敵へと睨みつけた。


「ああああ、あああああああ、ががかぁああ」


言葉は出なかった。


ただ取り出した魔剣を起動して風で作り出し斬撃を叩き込んで鎧を破壊し、首を左手で握り潰す。そして口から血を吹き出して絶命する肉塊を、死んでいるにも関わらず殴りつけて顔面を潰した。


いまだ残っている兵士は4人。


憎悪を込めた悲しい目で涙を流しながら、相手にそれを向けた。

インティウム家の精鋭達。彼らが何故シャルラに剣を向けるのか、その理由を既に嫌と言うほど知っているが、それでも彼らを見て憎しみが湧く。


誰の責任かと問われれば間違いなうクロード自身の問題だ。

シャルラを巻き込んだ時点で彼が悪だ、大切な者を傷つける理由を作ってしまったクロード=インティウムの責任。


異空間にしまってある武装を取り出して相手を殲滅する。

一匹残らず、殺し尽くす。



人の形が残らないほど叩きのめし、生きている者は誰一人としていない悲劇の惨劇を生み出した。次の兵士が来る前に意識を失ったシャルラを抱えて病院へと雪崩れ込んだ。


平民街にある病院へと走り、所持金を全て叩きつけて床に頭を擦り付けた。


「シャルラを助けてくれ……」


平民街の医者は昼間起こった貴族の戯れに巻き込まれた少女だと思い、すぐさま治癒魔法をかけた。それもクロードが大金を積み上げて頭を下げた結果だが、気持ちは一向に晴れぬままベッドで眠り続けているシャルラを眺めていた。


「すまない」


守りきれなかった事を謝罪するエドだったが、クロードは顔を向けなかった。

思い詰め全ての元凶となりうる自身を憎悪し、彼女が傷つく原因を作り出した自身を憎んだ。


「俺がいなければこうはならなかった、シャルラにちゃんと話を通していればこうはならなかった」


「それは違う、俺が浅はかだった。力が足りなかった……すまない」


「俺さえいなければ、俺のせいだ。俺が悪いんだ。ごめんな……ごめんな」


怪我のショックで寝込み続けているシャルラの手を取って何度も謝る。

彼女を守ると言って、守れなくなり、仕舞いには傷つけた。


全てはクロード自身から出た罪。

その罰は身近な人間にまで危害を及んだ。


シャルラが殺されかけたと言うことは確実にガジスに標的にされている。それもクロードが役目を果たさない限り幼稚に狙ってくるだろう。

彼がガジスの頭を垂れるしか解決手段はない。

つまらないプライドでシャルラを危険にさらした、無駄な行動でガジスを殴りつけたツケは払わされることになった。


大事な者を失う。

なればクロードに取れる手段はもうない。


大人しく政治の材料にされるしか、もう取れる策はない。

交渉なんて初めからなかった、ガジスに逆らうことはできない。


クロードの負けだ。


「何処へ行く」


シャルラから手を離し、席を外すクロードを引き留めようとするが、彼の曇った目はどこも見ていない。


「シャルラを守る、全てを解決する」


それだけを言い残してクロードは出て行ってしまった。




貴族街の裏路地、昨日通りかかったあの場所に出向いていた。

同じ時間に同じ場所で、きっとまたいるのだろうと思いながらその場に立った。


「出てこいよ」


「コルキウスは俺達の組織名なんだけどな」


ガジスの下に帰り、シャルラが無事でいる確証はない。

マルクが首を持ってくると言う作戦を持った以上、あくまで脅し、クロードを押さえつけて従えさせるのが目的ならばシャルラを無傷で返すとは思えない。


「気が変わった」


「だろうな……本当にひどい顔をしてやがる」


シャルラの無事を目的とするなら取るべき行動は一つしかない。


「俺がテロリストに入る対価として俺の望みを叶えてくれる。そうだな?」


「できる範囲か、全てが終わった後にくれてやる」


コルキウスのは反国家組織、テロリストだ。

彼らは今の国をよく思っておらず打倒を掲げている犯罪者。

そしてこれらの手を借りる、彼らに協力する代わりにその身を叶えてもらうクロードも共犯者となる。


「俺がお前達の仲間なってやる」


ダメ元で誘ってみたのに、まさかこちら側に与するとは思いもよらなかったのか、青年は少々驚きを隠せていなかった。


「……ただしシャルラを、俺の仲間の保護を絶対とする」


「分かった、それで手を打とう」


女一人の保護にクロードは形は違えど自らを再び売り払った。



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