第30話 真実
クロードからして全く何も感じないなどという事はあり得なかった。
相手が手にしているものが魔道具、それも見て感じ取れる最高峰の物だったのだ。
クロードが作れる魔道具は彼の持っている物と比べれば2ランクは落ちる。
それでもクロードは自身の魔道具が一般流通しているものよりは上だと自負していた。
立場上彼は貴族だった為、多くの魔道具を見る機会も触れる機会も多かった。
街を照らす街灯。
水を汲み上げるポンプ。
などと様々な物が街には置かれており、人々はそれを使って生活している。
だが魔剣となると数は減少する。
魔術は神の真似事。エドが言ったことは正しく寿命を大きくすり減らす事も事実だ。
よって使い手は皆すぐに死ぬ。魔術を使う物なら臓器を一つ潰したあたりで生命活動に支障が出るだろう。
だからこそ魔術は禁じられた、だからこそ一般的に魔術は伝えられない。
クロードも魔法こそ聞けど魔術に関しては貴族社会で一度も聞いた事がなかった。
辺境の村に住んでいたハクも魔法がどのようなものかは知っていたが、魔術は知らなかった。
この時はシオンに教えられ、特に何も考えなかった為に流していたが今になって不自然に思えた。
シャルラは魔法を使えるのなら、おそらく教育機関に通っていた可能性と魔法を身につける環境があった事を指している。
その彼女でさえ魔術は知らなかった。一般人は魔術を知らない事が明らかになった。
今の魔道具技術がどうなっているかは分からないが、魔道具は全て取り付けられて交換さてない物に限られている所を見るに今現在の生産は終わっている。
魔道具の故障は術式の崩壊。
術式が壊れない限り魔石さえ置いておけば稼働し続ける。
中でも魔剣は、
「魔剣はこの時代には作られていない」
クロードが感じていた違和感。
それは相手が魔剣を持っているという事だ。
最初に剣を合わせたときエドは魔剣を起動した。
曲がり形にも貴族だったクロードからすればあり得ない光景だった。
「魔剣は王国に一本ある物であとは他の国にあるかどうかだ」
魔剣は一本で師団に換算できると言われている。
これは戦力が、ではなく金の方だ。
見つけ出すのにかかる金、使うのにかかる魔石。これらを全て合わせるだけで莫大な金がかかる。
その対価として魔剣を持っている称号と名誉が得られる。
生産が終了した物を寄ってたかって買い占める事態になっていた。
「迷宮や発掘されていない物を除いても……四本も揃うわけないだろ!」
そう、誰かが作らない限り。
クロードのような錬金術師がいない限り、魔術を扱う錬金術師がいない限り。
「言ってくれ……その剣を作ったやつの名を、お前の主とやらの名前を」
その答えはもう知っている。
クロードは扉に到達した時点で既に理解している。
エドは魔術を知っている。
エドは魔剣を知っている。
エドは使徒を知っている。
そして最後に扉に刻まれた術式の形をクロードは知っている。
魔術の術式は人によって違う。本人の脳から出てくるイメージを刻み込むのが術式だ。必ずと言っていいほど同じ術式を刻むことはない。
ただのコピーでもない限り、複製品や模造品でない限りそんなことはあり得ない。
模造品だったとしても関わりがある。
「主の名は魔王第三席シオン……この扉の制作者だ」
気づく理由もあった。
気づいた後にどうするかもクロードは理解していた。それ以前におかしいと思ったことは多かった。魔剣がある事も、エドが剣の制作者が主人だと言った事、魔術に対する反応が手慣れていた事。
「……俺はシオンの教え子だ」
エドの目が見開かれ、シャルラに向けていた剣を地面に突き立てる。
「弟子なのか?」
何かを含んだ目をクロードに向けるえどだが、首を振って答える。
「あの人は俺の先生、師匠とは言わせてくれなかったけどな」
「…………」
ここで弟子だと言えばそれでエドは理解できた。
彼がシオンの弟子で、使える主の弟子ならばーー今ここで嘘と切り捨てて殺す事ができる。
だが相手は違った、あくまで先生といったクロードにあるはずのない信憑性を感じてしまった。
「その言葉を信じて話そう」
クロードの錬成魔術、自らで魔剣を作り出す所を目にしているエドは信じられた。
「その先は主の工房だ、元工房と言えばいいか」
「元工房?」
「五百年前にある弟子の不始末のせいで葬られた工房。二度と日の目を浴びない為にこうして俺が守っている」
三章ももうすぐ終わり、長かったような気もしながら書きたかった4章に突入します




