第21話 覚醒
繰り出される剣撃を受け止め弾く、刃が肉を切り裂き血飛沫の中を斬り上げて前に踏み込んだ。身体強化を施した2人の戦いは熾烈を尽くし、常人では到達し得ない領域に足を踏み入れた。だがそれは命を削ってようやくできる物であり、この戦いが終われば確実に死ぬだろう。
それでも剣を握りしめて斬り伏せようと前に出る。
魔術を使う余裕のないクロードは剣のみで相手を攻撃を防ぐが、足りない技量のせいで追撃を許してしまい腹を裂かれる。
魔術に必要な思考に割くほどの余裕はなかった為に防御が間に合わず、血を吹き出して後方に飛んだ。既に死に体の動いている事が奇跡と言える状態のガーゼはただクロードの首を切り落とすために剣を振るう。
ただ殺すために振り下ろされた剣へ、身体を捻ることで回避して地面に手を着いてから蹴りを喰らわせた。斬られた腹を手で塞ぎながら距離を取るように後ろに下がり体勢を整える。
(身体強化魔術が切れれば俺は剣を持つことはできない)
今のクロードの身体では素の状態で剣を持つことはできない。身体強化があって初めて剣を持つ事ができるのだ。そのため魔力の枯渇は戦闘続行の不可能を意味する。
剣を持たずに戦う手段を挙げるならば徒手での格闘。だがそれでダメージを与えることはできない。ただの子供の力でこの戦闘狂を倒すことはできないのだから。
彼の勝ち筋としては魔力が枯渇する前にガーゼを斬らねばならない。
そう思って前に飛び込んで剣を向け、痛くなるほどの金属音を響かせながら鍔迫り合いをする。剣を押すことに意識を持っていかれたガーゼの足を払い、体勢を崩した彼を蹴り飛ばし剣を突き立てる。
ガーゼは急所を防ぐために自ら腕を貫かせて軌道をずらす。剣を取られたクロードに打撃が浴びせられて血を吐き出して地面に転がる。
剣を握ったまま吹っ飛んだためガーゼの腕から引き抜かれてクロードと地面に這いずる。
剣を突き立て、縋り付くように立ち上がる。
■
「ファイヤーボール!ウォーターボール!」
シャルラは壁に向かって魔法をぶつけるが傷1つ付かず膝を屈した。
この先に戦っているものがいる、自身を置いてみんなを逃すためだけに犠牲になろうとした者がいる。約束を破ってまで一人で行ってしまった少年がいる。
「なんで壊れないの!どうして壊れない」
いくつもの魔法を壁に叩きつけようとも壊れない、まるで拒んでいるかのような頑丈さに絶望した。助けにいかなくてはならないと何度も破壊を試みて、何も起きなかった。
この壁を破壊して彼の下に辿り着かなければと、必ず死なせないと思った所で壁がそれを阻んだ。
クロードが来させない為に作った壁はシャルラの力ではどうすることもできない代物。今から壁を破壊するほどの魔法を叩き込めばいつかは壊れるかもしれない、けれどそれがいつになるかは分からない。
遅枠それは戦いが終わった後になるだろう。
無理だと諦めて、このまま引き返す事ができればシャルラは助かる。
外に出て自由になれる、こんな洞窟の中にいる必要はない。家に帰ればいいのだ。
それでも彼女にとっては他人ではなかった、切り捨てられる者ではなかった。
あって一日しか経っていないというのに助けたいと思ってしまった。それが恩に報いる為か、約束したからか、その答えは定かではなかったが。
彼女の中に眠る本来の力を解放する。
薄汚れた髪が光を纏い、汚れと埃を吹き飛ばしていく。
そして現れる白い髪が魔力を帯びて揺れる。
世界に12人しかいない使徒。
最強の人間兵器、その第三使徒ーー創造の使徒の力が覚醒する。
「大気のマナよ、私が命じる。炎となりへ敵を穿て『ファイヤボール』」
火の玉、火属性魔法の初歩。
その下位魔法の存在は使徒の力によって何十倍にも強化され、上位魔法と同等の威力を放出して壁を破壊するだけにはとどまらず通路ごと焼き尽くした。
灼熱の熱気により洞窟の一部が溶け、道を作り出した。
「……これは」
この力が自分の物ならばクロードを救えると思ってシャルラは前に走り出した。
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