第三十八話「みんな仲良く」
第三十八話「みんな仲良く」
強化された人間たちは一様に倒れて動かなくなった。再生できない傷を負ったのだから、いかに強化されていようと立ち上がることなどできない。
「これで終わりよ、人間」
ルーテシアの鋭い爪が副隊長の首筋に当たる。
「く……くそ……っ!?」
「そもそもね、私は自分で動かない奴が大嫌いなの。だから内心、魔王を倒していくあんたたちを見ていて清々したこともあったわ。自分はふんぞり返って上から指示だけ出す……何ていいご身分よ」
「あ……あぁ、そうだな。だからどうした?」
「でもね、ここの魔王は違う。本当なら切り捨ててもいいはずのあいつを思って、危険な目に遭って……それで、さ」
ルーテシアが入口の方を首で示すと、ボロボロになったアルが飛んで来ていた。
「ぬ……スバルとルーテシアではないか! 無事じゃったか!」
「うん! それよりも、早くお姉ちゃんを探しに行こうよ!」
「うぬ! そうじゃの! ルーテシア、その人間の始末は任せたぞ!」
「早く早くー!」
「も……もっと丁寧に扱えい!」
スバルに抱えられて目を回しながら、アルは更に奥へと進んで行った。
「自分の治療を後回しにして駆けつけるなんて、私だってできないわよ。それを平然とやってのける。そしてそんな魔王を信じて零以下から頑張っていたステラ。あんたは何? 隊長とやらに頼りっきりで、挙句の果てに部下の命を無視して特攻命令……」
「……それが軍というものだろう!?」
「そうね、確かにそれが軍なのかもしれない。どこまでできるか、やってみるといいわ」
ルーテシアは副隊長の首元から手を離し開放する。
「……何のつもりだ?」
「私は悪魔よ。人間を滅ぼすためにいるの。あんたみたいな逸材……もっと活躍して貰わないと困るわ」
「……どうなっても、知らんぞ」
「えぇ、大いに活躍して頂戴」
ステラが首を傾げていると、遠くから足音がする。
「……この音……走っている音?」
「おーねーえーちゃーん!!」
耳を刺すような大声にステラは思わず耳を塞ぐ。
「な……なんて大きい声……って、あれ、もしかしてアルさん!?」
スバルの姿が見えたのと同時に、手の中でぐったりとしているアルを見つけたステラは飛び立つ。
「あ、お姉ちゃん!」
叱ろうと降り立ったステラに、スバルは思いっきり突っ込む。抱き付こうとしていたのだろうが、その衝撃は強過ぎてステラは壁に叩きつけられた。
「……あ……アル……さん、大丈夫ですか?」
「そ……それは……我の台詞じゃ」
「お姉ちゃん? お姉ちゃん!」
二人は仲良く揃って気絶した。




