第三十話「こんな作戦でいきましょう」
第三十話「こんな作戦でいきましょう」
ダンジョンの下層に設けた会議室にステラ、アル、ルーテシア、スバル、スラミーが集まった。
「さて……これからのことじゃが、どうやって攻める?」
これまでダンジョンで防戦一方だった一同は攻めの方法など知っているはずがなかった。
「貴女……スバルっていったわね。悪魔なんでしょう? 何か良い策はありませんか?」
「にゃははー、私は生まれて一ヶ月も経ってません! だから知りません!」
「なんでそんなに能天気なのよ! まったく……それで、代理人さんはどうなのかしら?」
一同の視線がステラに集まる。ステラは全員を見渡して深呼吸した。
「……そうですね。私たちは誰も攻めの戦いを経験したことがありません。ですが、基本は同じはずです。そこに一味加えましょう」
「うぬぅ……また隠し味かの?」
「何か考えがあるのね? いいわ、聞かせて頂戴」
「……はい。このダンジョンの防御力を活かしましょう。この際、森は放棄します」
「放棄……とな?」
「はい。アルさんには幻惑魔法を別の区画にかけてもらいます。それで敵の本隊をここに誘き寄せましょう。そして空いた所を主戦力で攻め落とします」
「……古典的だけど、だからこそ成功する確率はある程度保障されている策ね。それで、攻めの戦力は誰が担当するのかしら?」
「ルーテシアとスバル、それにシャドウを可能な限り付けましょう。それ以外の戦力は全てダンジョンの防衛に回します」
「……それだと、またあの変な人間が出た時に困るんじゃないかしら?」
「罠で何とかしますよ。そこは私を信じて下さい」
誰からも反論はない。どちらも危険な状況だが、これ以上の策は誰も思い付かないのだろう。
「……では、この作戦でいきましょう。ルーテシアはアルさんの警護もお願いします」
「はいはい。行くわよ、チビッ子魔王さん」
「なぬっ!? 我はお主らよりも年上じゃぞ!?」
「はいはい、わかっていますよ魔王様」
「う……うぬぬ……何やら馬鹿にされている気がするのじゃが……」
「気のせいですよ、気のせい」
「ルー、あんまり苛めちゃ駄目だよ?」
スバルに叱責され、ルーテシアは苦笑いした。
「……ま、こっちは確実に上手くやるわ。借りはきっちり返したいし」
まるでついでという感じで話しているが、その瞳の奥には復讐の赤い炎が燃えているようにも見える。そんな気迫がルーテシアにはあった。
「では、罠を設置するのに必要な三日後、作戦を決行しましょう。アルさんは幻惑魔法が最も有効なポイントを探して下さい」
「お姉ちゃん、私はー?」
「スバルは作戦まで私のお手伝いね?」
「はーい!」
和やかな雰囲気で作戦会議は終わった。