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第93話

不愉快すぎる言動のオンパレードになります。気分を害すと思われますのでご注意!

まず理事長が校長に話を聞いた。

適度に相槌を打ちながら考えている風でもある理事長は、出張先にも報告がなされていたであろう事柄は一先ず置いておき、確信的な部分の事を聞いてきた。

つまりは谷野が神崎を襲っていたのを目撃した、俺と悠生がその時の事情を話さなければならない。


俺は神崎だけではなく、他の二名の生徒を含めた三名の生徒が日本史の再テストを受けていた事を報告、そして丁度神崎以外の生徒が終わって暫く経ってから、俺宛で電話がかかってきたので、神崎を一人残して席を離れた事も報告した。



「すると、遠藤先生は生徒を残して出て行った…と。そう言うわけですね。」


「はい。」


「ふーむ…」



そして、電話が終わって資料室に戻る際に悠生とたまたま連れあうことになり、そして事の現場に遭遇した。


そこまで話すと、それまで黙っていた吉川母が声を荒らげた。



「信じられないわ、そんな人がここの教師なんて!ちょっと、理事長!その先生を即刻首にしてちょうだい!じゃなきゃ、優子ちゃんが安心してこの学校に通えないじゃない!!」


「吉川さん、ちょっと落ち着いてください。ね?」


「これが落ち着いていられますか!!なんの為にこの学校に通わせていると思ってるの?ここの教育理念と環境がしっかりしていると考えているからですよ!それなのに…そんな犯罪者めいた人が教師やってるだなんて…!一体何を考えてるのかしら!」



勢い込んだ吉川母に苦笑しつつ、理事長はまあまあと宥める事に回ったようだ。


そんな理事長を尻目に息子の方はと言うと、ただひたすらに沈黙を守っていた。

すると、理事長に宥められている母を見ていた娘の方が口を開いた。その際、意地悪く口許が歪んだ瞬間を見逃すほど俺は甘くはない。



「ねえママ。それが、その被害者って子の自作自演だったら…どうする?」


「え?優子ちゃん、それってどういう事?」


「あの子ね、新入生代表までやったくせに、日本史だけは成績悪かったみたいでさぁ。それで、再テスト受けてたんだよ。でね?再テストまでやってる位だもん。当然その問題、解けるわけないじゃん?だから、たまたま顔を覗かせた谷野先生に答え教えて欲しくて~…」


「なっ、なんて子かしらっ!!理事長!その子はどうしたの!」



顔を真っ赤にして怒っている吉川母は、今この場にいないもう一人の生徒である神崎がいない事を理事長に詰め寄った。だが、その理事長とて神崎が欠席している事を把握しておらず、結局校長が冷や汗を拭きながら「今週は欠席すると連絡が…」としどろもどろで答えていた。


段々とマズイ方向へと話はすり替わってきていることに、らしくも無く焦る。

だが、俺がどれだけ焦ろうと状況は神崎にとっては不利なものしかない。


俺が一人で神崎を教室に残した後、谷野と何があったのかを知る者は当事者以外に居ず、更には藤田が押えた携帯の動画も『たまたま現場に遭遇して撮っただけで、それも最初に神崎が誘ってたから慌てて証拠を押える為に』と言われればぐうの音も出なかった。



「ちょ、ちょっと待って下さい!いくら神崎ちゃ…神崎さんが悪いからって言っても、その………生徒に手を出す方が悪いでしょう!!」



あまりに神崎の事を悪くしか言わない吉川親子を見かねた悠生が反論すると、娘の方が悠生を馬鹿にしたような風に鼻を鳴らしながら嘲笑した。



「早乙女先生が言える事じゃないと思いますけどー?早乙女先生も、神崎さんの事好きなんですよねぇ?神崎『ちゃん』、ですもんねぇ。」


「っ!そ、それはっ…!」



痛い所を突かれた悠生が黙り込むと、こめかみを押えた吉川母が大仰に溜め息を付き、俺達教師全員をぐるりと見渡した。



「全く何て事かしら…この学校にはまともな先生はいないの!?ねえ、優子ちゃん。なんだったら転校する?こんな学校、ママ心配だわ。」


「えー!?それだったら翔様と会えなくなっちゃうじゃない!そんなの嫌よぉ!」


「まあ優子ちゃん…だったら…ねえ君。君、うちの優子ちゃんと付き合いなさいよ。そうよ、それがいいわ!」


「………は?」



急に話の矛先を向けられた龍前寺は沈黙を続けていたそれを崩し、明らかに不服そうな表情をし、そしてきっぱりと断った。



「謙遜しなくてもいいのよ。そりゃ、うちの優子ちゃんは可愛いから?君が引け目を感じちゃうこともわかるわ。でも、君もなかなかかっこいいんだから、優子ちゃんとも釣りあいが取れると思うのよー。」


「何と言われようと、僕はお断りします。」


「君ねえ…!」


「やっぱり…噂どおり翔様も神崎が好きなんですか!?どこがいいんですか、あんなチビで誰にでも媚売ってるような女の!!」


「…。理事長。その、神崎?って子の保護者の方、まだいらしてないんですか?そんな子が、無罪放免ってわけにはいかないんじゃないんですか?」



理事長は困った方に微笑むばかりで、その要領の得なさに吉川母が更に激昂し始めた。

とは言え、理事長にだってわからないのだろう。

そりゃそうだ。いくらすぐに帰国の途に着いたとしても、NYから直行便でも丸一日かかる。桐生総一郎が何時に、しかもあの忙しい彼が本当に帰国便に乗れたのかすら俺達はわからないままだ。


だが、このままだと神崎が停学…最悪退学なんて事になり兼ねない。



「理事長、そんな素行の悪い子をこの学校に残して置くことは断じて許せません。停学…いいえ、退学処分にしてください!!」


「ちょ、それはっ!」


「あなたは黙ってなさい!!女子高生に惚れるだなんて、何考えてるのかしら!!」


「まあまあ、吉川さん、少し落ち着きましょう。落ち着いてくださいませんと、まともな話が出来ませんよ?」


「なっ…!!なんなの、あなた達!!私はこれ以上無いほど落ち着いています!」



バンッと勢い良くテーブルを叩いた、その時、コンコンと理事長室のドアをノックする音が聞こえた。

理事長が返事をするより早くそのドアを開け放った人物に、笑えるほど俺と理事長以外全員が固まっていた。



「淑女がそんなに大きな声を出すものじゃないぜ?」



一気にその場が飲み込まれる。


そんな気にさせる男はそう居ない。


そして、そんな男が俺の目の前に立っている。



桐生総一郎、その人だった。

早くこの親子いなくなって欲しい…書いてて切に思いました。

さて、パパ降臨。次からは帝王の逆襲になりますw

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