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友達の友達 裏

誠也君は「先生」とやらを探している。

聞けば幼い頃彼にヴァイオリンを教えてくれた近所のお兄さんらしい。

そんなのどうせ近所に住んでるのだから実家の方で友達にでも聞けばいいのにそうはしないらしい。

何故だか私の趣味の占いとか、よく分からないおまじないで探そうとしている。

理由を聞いても、そうした方がいい気がするとしか言わない。


それならば私が探し出して、上手く誘導するような占い結果を捏造してしまえばいいのではないか。


そう考えた。


「パパ、パパは音楽の偉い人なんだから、各音大にコネがあるよね。」


「まぁ、あるよ。

確かに連絡をつけられる程度は簡単だね。


私は楽団を持っていて、そこを目指してくれる学生もいるから、連携が取れているからね。」


「じゃあ、探して欲しい人がいるんだけど。

10年と少し前の学生で、多分北海道の音大だと思うのよ。

名前は、森野 樹。


誠也くんの先生なんだって。」


「誠也…お前の部屋に写真が飾ってある、あの子か。

俺も少し迷惑をかけたからなぁ…。


分かった。

北海道に直接の知り合いはいないが、仲間を辿れば辿り着けるだろうから、パパに任せなさい。」


「うん、ありがとう。


…あのさ、パパ、勝手に私の部屋に入ったの?」


「あー…いやー…多分、たしか、美智子さんが夜ちゃんのお部屋で掃除している時に通りがかってチラッと見えたんじゃないかなー。」


お手伝いの美智子さんは、よく気がつくおばちゃんで、私がお年頃になった頃から、本当にうっすらとしかドアを開けない。


私がパパやママから隠しておきたいものもあるだろう事を理解してくれているのだ。


「ふーん、チラッとね。


迷惑をかけたって、どういうこと?」


「あっ、いや、その…あの、夜ちゃんの恋人なのかな〜って、ちょっとだけ挨拶したんだよ。


それだけ!

ほら、迷惑だろう?知らないおじさんから急に声掛けられるのなんて。」


多分嘘だ。

私の部屋にも勝手に入ったし、ただ挨拶したのではなく、きっと私の恋人と勘違いでもして絡みに行ったのだろう。


ちっ。


無言でじっと見つめる私に、父は勝手に追い詰められて行く。


「いやぁ、本当だよ。

丁度先月末の月曜日さ!

誠也くんに聞いてみたらいいよ、きっと挨拶をされただけって答えるはずさ。」


口止めしているってことね。

…絶対何かあった…!


◆


娘の夜に頼まれての人探し。

探し人は森山 樹君。


夜が片思いしている相手、橘花 誠也君のお師匠様らしいね。


実は誠也君は水面下で有名人だった。

彼はフィッツという超大物ソリストを師匠に、高校生の内から世界中を飛び回っていた。

飛び入りに近い形でコンクールに参加しては何らかの賞を取っていく。


話題にならないはずもなく、それが日本人の子供らしいと分かると、更に加熱した。

もし誠也君を大学や楽団に入れる事ができれば、フィッツも付いてくる。

あの変わり者を確実に手にできるのであれば、いくらでも払う団体は無数にあるだろう。


誠也君自体、天才唯一の弟子という付加価値がある。

それに加え、うちの娘が首ったけになることから分かる通り、ビジュアル面でも優れていると来たもんだ。


件の森山君も楽しみだ。

なんせ、世界のフィッツのお眼鏡にかなう程、田舎の少年を鍛え上げた指導者なのだから。


と、考えていたが、北海道の音大から帰ってきた回答は、3年時に退学しているということだった。


メールではこれ以上の回答は得られない。

当時を知る人に直接聞かなくては分からないだろう。

友人の教授連中を辿れば、当時森山君が師事していた教授へと繋がるだろう。


そうして待つ事4日後、当時の教授へと辿り着き、不躾な質問をした私に帰ってきたのは、意外な回答だった。


「あの川久保蘭から探されていると知ったら喜ぶでしょうね、森山君。

あなたの楽団も希望進路にありましたから。


生きていれば、実際にお会いする機会もあったのではないでしょうか。

残念です。」


誠也君から発した森山君の行方探し。

彼から夜へ、そして私、私の友人、教授へと繋いだ数珠は、永遠に繋がれる事がなくなってしまった。


本人が死んでいては仕方がない。


「いえ、助かりました。

その森山君に教わっていた近所の男の子と既知になりましてね、ルーツが気になったものですから。」


「そうでしたか。


彼が…。

いえ、彼がいなくなって久しいですが、彼の演奏の片鱗でもまたどこかで聴く機会がある可能性が残っている。


それだけでも冥利に尽きると言うか、そんなきもちになりますね。」


弟子の弟子の演奏を楽しみに出来るなんて、指導者として、とても幸せな事だ。

私もよく分かる。


「そうだ、森山君の写真が手元に何枚か残っているので、お送りしますね。

出来ればそのお弟子さんに渡してあげてください。

なにかの励みになるかもしれないですから。」


そう言われて届いた、実際に会った事はない青年の写真。

その中の一枚には、どういうわけだか少年時代の誠也君と一緒に写ったものもあった。


これは、是非渡してあげたいところだ。


…誠也君の口ぶりが、森山君の死を認識していない様子だったのが気がかりだが…。


どうしよう、これ。


この写真を見る限り、二人はとても仲良くしていたのだろう。

なのに、死を伝えていなかったのは相応の理由があるはずだ。

友達のお父さんという、微妙な距離感のおじさんが伝えていい情報ではない。


私から知らされるなど、考えうる最悪だろう。

せめて、忸怩たる思いだが、許した訳でもないが、万が一、奇跡的に、夜と彼が、ぐぅ、恋人…ぅうぁあ、同士に、なったりした時、私から夜へと伝え、夜から誠也君へと伝えたりした方がいいのだろう。


万が一!万が一の話だけれども。





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