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常世神話譚 ー夜姫と最高神の千年恋譚ー   作者: 福山蓮
【第一部 星を見上げる少女】
27/31

【番外編2】 久遠、胃をやられる(恋ではない/世界が揺れているだけ)

 

 ⸻

 場所:太陽宮・執務室

 登場人物:天照(無自覚)、久遠(胃痛)

 ⸻


 久遠

「……天照様。」


 天照

「何だ。」


 久遠

「一点、確認させてください。」


 天照

「改まるな。嫌な予感しかしない。」


 久遠

「先程の街での行動ですが――

 夜姫様を、突然抱えて飛びましたね。」


 天照

「緊急事態だった。」


 久遠

「夜姫様は悲鳴を?」


 天照

「……上げてない。」


 久遠

「抵抗は?」


 天照

「……してない。」


 久遠

「では質問を変えます。」


 天照

「おい。」


 久遠

「なぜ、胃が痛いのは私なのですか。」


 天照

「……は?」


 久遠

「先程からですね。

 太陽神の感情が大きく振れるたび、

 私の胃がきしむのです。」


 天照

「知らん。」


 久遠

「否定されましても、事実です。」


 天照

「お前の胃の問題だろ。」


 久遠

「いいえ。

 観測結果から判断すると――」


 天照

「やめろ。」


 久遠

「天照様が夜姫様を見て

 “余計な力”を出すたびに、

 常世が軋み、

 結果、私の胃に来ています。」


 天照

「……それは不可抗力だ。」


 久遠

「不可抗力で胃を壊される側の身にもなってください。」


 天照

(………なんで俺詰められてる?)


 久遠

「夜姫様の事で常世を翳らせるなど許されない」


 天照

「気のせいだろ…。

 お前は細かすぎだ。」


 久遠

「ちなみに本日三度目です。」


 天照

「何が。」


 久遠

「胃が終わりかけたのが。」


 天照

「……お前、休め。」


 久遠

「休めるなら休んでいます。」


 天照

「なら薬を飲め。」


 久遠

「薬で治るなら、

 須佐男様が口を開いた時点で

 完治していました。」


 天照

「…………。」


 久遠

「さらに言えば、

 夜姫様が無自覚に距離を詰めるたび、

 太陽神の神気が跳ね上がり――」


 天照

「待て。」


 久遠

「胃が死にます。」


 天照

「……俺は何をすればいい。」


 久遠

「簡単です。」


 天照

「ほう。」


 久遠

「落ち着いてください。」


 天照

「……。」


 久遠

「夜姫様が転びそうになっただけで

 世界を焼くのをやめてください。」


 天照

「守らねばならん。」


 久遠

「守るのは構いません。」


 天照

「だろう。」


 久遠

「ただし胃に優しく。」


 天照

「どういう基準だ。」


 久遠

「私が胃痛を起こさない強度です。」


 天照

「基準が理不尽すぎる。」


 久遠

「世界の均衡とは、

 だいたい理不尽なものです。」


 天照

「……お前、最近辛辣だな。」


 久遠

「胃が。」


 天照

「……すまん。」


 久遠

「謝罪を受理します。」


 天照

「で、どうすればいい。」


 久遠

「夜姫様を見た時、

 一度深呼吸してください。」


 天照

「それだけでいいのか?」


 久遠

「はい。」


 天照

「本当に?」


 久遠

「少なくとも、

 私の胃は助かります。」


 天照

「……善処しよう。」


 久遠

「ありがとうございます。」


 天照

「ところで。」


 久遠

「何でしょう。」


 天照

「お前、俺が何か変だと思っているのか?」


 久遠

「……。」


 天照

「黙るな。」


 久遠

「私は“変”とは言っていません。」


 天照

「なら何だ。」


 久遠

「揺れている、と言っているだけです。」


 天照

「……。」


 久遠

「常世が。」


 天照

「……。」


 久遠

「それと、私の胃が。」


 天照

「もういい。」


 久遠

「本日のまとめです。」


 天照

「やめろ。」


 久遠

「太陽神:通常運転のつもり

 世界:ちょっと傾く

 私の胃:瀕死」


 天照

「最後余計だ。」


 久遠

「記録なので。」


 天照

「……。」


 久遠

「では失礼します。

 胃薬を探して参ります。」


 天照

「……すまん。」


 久遠

「謝罪回数が増えている時点で、

 天照様も自覚はあるかと。」


 天照

「……。」


 久遠

(小さく溜息)


 久遠


「……どうか次は、

 常世を揺らす前に、

 せめて私の胃に、

 猶予をください。」


 ⸻


 まとめ(久遠視点)

 • 太陽神:無自覚

 • 夜姫様:無垢

 • 世界:揺れる

 • 私の胃:限界


 ※次回、本編は真面目に始まります。

 胃のことは忘れてください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

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