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第35話:要塞の綻びと、急襲の採掘指令

美濃駐屯地の作戦本部が設置された翌日、日曜日の午前十時。

第5層安全エリアを中心に突貫工事で進められていた「美濃防衛要塞」の構築現場で、赤城燈主任の青ざめた声がインカムを通じて全陣地へと響き渡った。


『――全防衛班、および工兵隊に告ぐ! 直前になって、防衛陣地の魔素シミュレーションに致命的な欠陥が判明したわ!』


作戦室の大型モニターの前に詰めかけていた私たち特務小隊の視線が、一斉にディスプレイへと釘付けになった。

映し出されていたのは、美濃ダンジョン第1層から第4層に生息する全モンスターの生態系データ、およびサキが設計したミスリル結界陣の魔力干渉グラフだった。


「どういうことですか、燈さん!」

私がインカムを通じて問い返すと、燈さんは血走った目を眼鏡の奥から光らせながら捲し立てた。


『サキちゃんが構築したミスリル結界と浄化アロマ陣は、通常の物理突進や基本的な毒・麻痺に対しては完璧な強度を誇るわ。……でも、甘かったのよ。事前の予備観測では見落とされていたけれど、美濃の第3層・第4層に潜む上位種モンスターが放つ「複合呪詛」と「精神汚染を伴う特殊状態異常」のデータが、JDAの最新解析で追加されたのよ!』


モニターの図面が切り替わり、紫色の禍々しいバツ印がいくつも点滅した。


『このまま四千頭のスタンピードが押し寄せれば、防衛陣地の金属基盤が魔素の過負荷(オーバーロード)を起こし、十時間足らずで結界が内部からメルトダウンする! つまり、陣を形成するための金属類――特に、高圧魔素を中和・分散させる特殊な鉱石が圧倒的に足りないの!』


「金属が足りない……!? この短時間で、そんな特殊な鉱石をどこから調達するっていうんですか!」

熊倉二曹が険しい顔つきで腕を組んだ。


だが、燈さんの表情には、絶望ではなく「確信」の色が浮かんでいた。

『安心しなさい。ピンチの時こそ、我が国の――いや、世界の開拓者たちの総力が火を吹くわ。幸いにして、必要な素材の分布データはすでに私のほうで割り出したわよ』


燈さんが手元のタブレットを叩くと、全探索者の端末、および美濃駐屯地の掲示板システムへと、緊急の『特務採取クエスト』が一斉に配信された。


『――全探索者に告ぐ! 緊急臨時クエスト【美濃防衛陣地・金属補強計画】を発令する!』


---


その瞬間、美濃ダンジョンの中央ゲート前広場、および駐屯地の休憩所にいた数千人の探索者たちのスマートフォンが、一斉にけたたましいアラート音を鳴らした。


「なんだこれ……!? 緊急クエスト!?」

「『モンスター除けの特殊鉱石』と『状態異常を治す果実』を至急調達せよ……?」

「おい、これ報酬が国家予算級の特級ポイントになってるぞ……!」


広場に集まっていた探索者たちが一斉にざわめく。

前線での戦闘を任された戦闘系探索者だけでなく、普段は後方支援や採取、農業をメインに活動していた「戦闘力に自信のない一般・生産系探索者たち」の顔色が変わった。


「戦闘力がないからって、避難民の真似事をしておとなしく守られてるだけだと思ってた……! でも、これなら……これなら俺たちにもできるッ!」

「そうだ! 鉱石の採掘なら、俺たちプラント採掘ギルドの専門分野だ!」

「状態異常を治す果実の生息地データも来てるぞ! 第2層の湿地帯の奥地だ! 行くぞお前ら、要塞をぶっ壊させたりはしねえ!」


戦闘力だけに頼らない。

四千頭のスタンピードという絶望的な危機を前にして、この防衛戦は、戦う者も、素材を採る者も、傷を癒やす者も――美濃に集まったすべての人間が役割を分け合う『総力戦』へと急速にシフトしていった。


その熱狂の渦中、作戦室にいた私たちの方へ、燈さんがビシッと指を突きつけてきた。


「というわけで、あかねちゃん! 悠長に作戦会議をしてる暇はないわよ! 陣の根幹を支える最も重要で、最も危険な場所にある二つの素材――『モンスター除けの特殊鉱石』と『状態異常を治す果実』を、それぞれ最高純度で確保してきなさい!」


「私たちが、ですか!?」

「ええ。一般の探索者たちじゃ踏み込めない、過酷な深部や未踏のエリアにこそ、その最高品質の素材が眠っているの。時間は惜しい、すぐに現地へ向かいなさい!」


「了解しました!」

私は二本の黄金の尻尾をピーンと立て、力強く頷いた。


「橘さん、熊倉さん行きましょう! 72時間のカウントダウンは待ってくれません!」

「承知しました。神速の機動で、最短ルートを切り拓きます。」

「がはは、要塞の補強パーツ集めだな! 任しときなさい!」


---


私たちの出撃と、全国の探索者たちが一斉に素材採集へ走り出したその動きは、瞬く間にインターネットの掲示板を狂喜と興奮のるつぼへと叩き込んだ。


---


【美濃スタンピード】緊急クエスト&素材採集リアルタイム実況スレ Part.3


1 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:42:15.67 ID:QuestNet03

緊急クエスト【美濃防衛陣地・金属補強計画】発令!

戦闘力のない生産系・採取系の探索者も含め、日本中の探索者が一斉に素材集めに走る事態に発展中!

現在のスレッドでは、各地の採集状況、素材の分布、そしてあかねちゃん小隊の動向を実況します。


■本日の重要トピック

・サキちゃんの防衛陣地シミュレーションにより、上位種モンスターの「複合呪詛」を防ぐ金属類が致命的に不足していることが判明。

・JDAより全探索者へ緊急採取クエストが配信。戦闘系以外の一般探索者もフル稼働で採掘へ!

・あかねちゃん小隊は、陣の根幹となる「モンスター除けの特殊鉱石」と「状態異常回復の特級果実」の採集へ極秘出撃!


前スレ:【美濃スタンピード】防衛戦対策・リアルタイム総合スレ Part.2

[http://to〇ho.net/dan/02/](https://www.g〇gle.com/search?q=http://to〇ho.net/dan/02/)


14 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:44:30.12 ID:KusaDaisuki

キタアアアアアアアア!!

ついに生産系・採取系のおっさんたちの出番が来たぞおおお!!

前線で戦うだけが探索者じゃねえ! 要塞のガチガチの補強は俺たちに任せろ!!


29 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:47:05.89 ID:MiningPro

北関東のギルドから参戦した採掘職人だけど、美濃第2層の岩陰で「魔除けの霊鉄鉱」の脈を発見した!

周りの初心者パーティーの若者たちと協力して、今すごい勢いでツルハシ振るってる!

みんなで要塞を固めるって感じで、めちゃくちゃ一体感あって熱い……!


45 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:49:50.34 ID:Realist02

冷静に状況分析すると、今回のイベントの作り込みがガチすぎてヤバい。

ただのボス戦連戦じゃなくて、「要塞の耐久値(リソース)」の概念が導入されたことで、戦闘以外のプレイヤー(採集・錬金・建築)が全員必須パーツになってる。

これ、もし素材集めが間に合わなかったら、防衛戦の途中で結界が崩壊するバッドエンドルートもあり得るぞ。


61 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:52:12.78 ID:MikoGami01

それを回避するために、あかねちゃんたちが一番ヤバい最高難易度の素材を採りに行ってるんだろ!?

今、配信のサブカメラ映ってるけど、あかねちゃん小隊どこに向かってるんだ?


78 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:55:00.12 ID:StreamWatcher


> > 61

> > いま霧島の方に一時帰還して、第7層のさらに奥、未踏の「竜骨の結晶地帯」に向かってるらしいぞ!

> > モンスター除けの特殊鉱石【破邪の霊銀石】を狙うみたいだ。

> > そしてもう一つの「状態異常を治す果実」は、美濃の奥地にある呪われた霧の谷に生えてる「万病治しの黄金桃」だって赤城主任が言ってた。

>

>


94 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 10:57:45.67 ID:AnshinKaigI

おいおい、霧島第7層の奥と、美濃の呪われた霧の谷って……どっちも単独の探索ならそれだけで特番組めるレベルの超危険地帯だぞ!

そこを72時間の制限時間内に両方攻略して素材かき集めてこなきゃいけないとか、あかねちゃんたちハードモードすぎんか?


112 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 11:00:20.34 ID:TachibanaOshi

でも、今のあかねちゃんたちには、

・種族進化して神速の戦闘力を持った橘一尉【風天の戦巫女】

・ダイヤモンドの肉体で要塞の壁を粉砕する熊倉二曹【金剛の巨神】

・二尾に進化してテレポートと超索敵を極めたあかねちゃん【霊狐】

・さらに神楽鈴のチートバフがあるからな。

過酷な採集ツアーなんて、あかねちゃんたちにとっては「素材狩りの大遠征(ウキウキ・ハンタータイム)」だろwww


130 :名無しさん@採集待機中:203X/04/11(土) 11:03:10.56 ID:KagoshimaCheer

鹿児島から応援してるぞー!!

全国の採集者たちも、美濃の防衛ライン構築のために死ぬ気で資源運んでる!

みんなの日常を守るため、あかねちゃんたちの弾丸素材調達ツアー、全力で成功させてくれ!!


---


ネット掲示板が熱狂的な応援とリアルタイム実況で沸き返る中、私たち特務小隊は、まさにその「弾丸素材調達ツアー」の真っただ中にいた。


美濃駐屯地から霧島第一ダンジョンのポータルへと一瞬で飛び(テレポートと転移ゲートの併用)、私たちは第七層の『結晶と黄砂の大峡谷』のさらに最奥――一般の探索者は決して足を踏み入れない、巨大な竜の骨のような化石が剥き出しになった危険地帯へと降り立っていた。


「ここですね、燈さんが言っていたモンスター除けの特殊鉱石――『破邪の霊銀石(はじゃのれいぎんせき)』の埋蔵ポイントは!」


私はサキから渡された魔導スキャナーの画面を確認しながら、足元の赤茶けた岩盤を見つめた。

頭上の二本の黄金の尻尾が、ピクピクと微細な魔素の脈動を捉えている。


「周囲に生体反応はありませんが……地脈の魔素がものすごく荒ぶっています。通常の採掘用ピッケルでは、表面の呪詛装甲を削るだけで刃がこぼれますよ」

橘一尉が愛銃を構え、周囲の崖の上を青銀色の神眼で警戒する。


「がはは! なら俺の出番だな!」

熊倉二曹が前に出た。全身の金剛石の紋様がキラリと輝く。

「その硬い岩盤ごと、俺のこの金剛の拳でひっこ抜いてやらぁ!」


「お願いします、熊倉さん! そして、この鉱石を採取したあとは……美濃の奥地、あの『呪われた霧の谷』に生えている『万病治しの黄金桃』を採りに行きますよ!」


スタンピード発生まで、残り時間は六十時間を切っていた。

要塞の補強、全防衛線の構築、そして何千人もの命を守るための素材集め。

私の瞳には、オタクとしての採取欲と、絶対に防衛線を成功させるという強い決意の光が、燦々と燃え盛っていたのだった。


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