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九魔教

雲隠れた深山に九魔教がひっそり佇み、暗い野望を秘めていた。一方、戦場より女王が帰還し、王国の運命が大きく動き出す。

一方、ケイリアは王宮に戻らず、たった一人で王宮のすぐ近くに広がる深山へと向かった。


山深く雲煙に包まれた場所に、ひっそりと佇む建造物が姿を現す。


建物の真上には、東洋の風情漂う漢字三文字――九魔教と彫り刻まれていた。


これは東方より伝わる魔教勢力で、西方王国のいかなる勢力とも全く異なり、妖しく冷たい気気をまとっている。


普段はクールで距離を置くケイリアだが、今は無害な雰囲気をすべて消し去り、陰険で狡賢い色を宿し、全身のオーラも冷めたものに変わっていた。


彼女は足を踏み入れ九魔教の山門をくぐる。



道沿いの教徒たちは一斉に身をかがめて遠慮し、声を上げて妨げる者は一人もいない。


大殿の内部には、九魔教の頭目である九煞が既に端坐していた。



彼は正統な東洋魔教の衣装を身にまとい、身に染みるような冷気を漂わせ、表情は淡々としている。


傍らには李淑婉が立ち、殿の両側には無表情な魔道弟子たちが整列し、大殿全体は死のような静けさに包まれていた。


九煞は目を上げ、入ってきたケイリアを見つめ、情けも抑揚もない冷めた声で告げた。



「娘、戻ってきたか。神州大陸での修練、進捗はどうだ?」


ケイリアは恭しく礼を捧げ、態度は慎ましい。



「師匠にご報告いたします。

弟子は神州大陸にて、現地の魔道の姉御方に大変可愛がられ、多くの技を教えていただきました。」


九煞はわずかにうなずき、冷たい顔に珍しく満足の色が浮かび、淡く口を開く。




「良い、良い。これで世界を支配する日も、目前に迫った。弟子、先に下がってよい。」


「はい、師匠。」



ケイリアはそっと頭を垂れ、返事をするとそのまま大殿を後にした。


ケイリアの姿が見えなくなると、李淑婉が一歩前に出て眉をひそめ、九煞に向かって心配そうに躬ずく。



「師匠、リアは修練の中で魔が差し、道を踏み外すことはないでしょうか。

弟子は心配でなりません。」


九煞は眼差しを淡く保ち、穏やかな口調で答える。



「心配するな。

魔に囚われるのも修行の道のりだ。

彼女がこの関を乗り越えられれば、今後我が教の要となり、大業成就の助けとなる。」


一方、ケイリアは自らの寝宮に戻った。


道沿いの魔教子弟たちは次々と躬ずき、声を揃えて呼びかける。

「大師姉!」


ケイリアは脇目も振らず、まっすぐ殿内へ入る。


彼女は神州大陸から持ち帰った品々を一つ一つ整えると、寝台に腰を下ろし、精巧な鏡を取り出して身だしなみを整え始めた。



鏡に映る美しい顔立ちを眺めて眉をわずかにひそめ、髪の一筋まで丹念に整えてから鏡を仕舞った。


「誰か来い。」



彼女は淡く声をかける。


扉の外の师弟师妹たちがすぐに躬ずいて中に入り、恭しく控える。



「大師姉、何かご命令でしょうか?」


「食事を用意せよ。」


間もなく师弟师妹たちがパン、酒、焼いたステーキなどが並んだ食卓を運んできた。


だがケイリアは長らく神州大陸で過ごしたせいで東洋の食事に慣れきっており、これら西洋の料理には興味も湧かない。



渋々赤ワインを少し飲み、ステーキを数口切って口にするだけで、パンには手をつけなかった。


一方、ケイロ帝国南東部の洋館では、佐藤悠真がペンを握りノートに一筆一筆文字を綴っていた。行間には故郷日本への郷愁が滲んでいる。


最後の一画を書き終えるとノートを閉じ、侍女が届けたデザートを脇に置き、翌朝の朝食に取っておくことにした。


翌日、空は明るく晴れ渡り、陽光が窓から部屋に降り注いだ。


佐藤悠真は着替えを済ませ、昨晩のデザートを軽く口にして部屋に座っていた。


その時、扉から慌ただしいノックの音が響き、騎士の高い伝令の声が響いた。



「土の勇者・佐藤悠真殿。

国王陛下の命により、全勇者は直ちに王宮大殿に参集せよ!」


佐藤悠真は遅れるわけにもいかず、すぐに立ち上がり、足早に扉を出て騎士に従い王宮へと向かった。


一方、ケイロ帝国の郊外では、轟き響く馬蹄音と共に、威風堂々たる行列が王宮へと進軍していた。


行列の最前、高馬にまたがる女こそ、ケイロ帝国の真の権力者――女王ケイヴィラである。


彼女は風塵にまみれた漆黒の鎧を身にまとい、甲冑には乾ききらぬ血痕が残り、戦場から帰還した殺気を全身に漂わせる。




眼差しは冷徹で、圧倒的なオーラを放っていた。


背後には戦功赫赫たる十五人の将軍が従い、皆厳粛な面持ちだ。


道沿いの侍衛や騎士たちは次々と片膝をつき、躬ずいて礼を捧げ、恭しく声を揃える。



「女王陛下、ご帰朝をお迎えいたします!」


ケイヴィラは無表情で何の返答もせず、馬を走らせそのまま王宮に乗り入れた。


馬から下りると重々しい足取りで王宮大殿の階段を上り、まっすぐ殿内へと踏み入る。




一方、大殿では代理国王が相変わらずだらしなく玉座に座っていたが、ケイヴィラの姿を見た瞬間、顔色が一変し慌てて立ち上がり、体を小さく震わせて頭を垂れ、恐れに満ちた態度を見せる。




「ヴィラ……」


ケイヴィラは目を上げて彼を一瞥し、冷たく刺すような、断固とした鋭い声で手厳しく諌める。



「久しぶりに会うというのに、相変わらず無能なままだ。

いつまでもだらけて日を過ごさず、まともな事をして国王の責任を負ったらどうだ?」


代理国王は全身を震わせ、頭を垂れたまま言い返す言葉もない。


ケイヴィラは眉をひそめ、冷めた口調で問い続ける。



「そうだ、王国が召喚した三人の勇者は、既に王城に到着しているか?」


代理国王は慌ててうなずき、声を震わせて答える。



「女王陛下にご報告いたします。

三名とも既に王城に到着しております。」


ケイヴィラはそれ以上言葉を重ねず、冷ややかにうなずいて回答を認めると、全身の鋭いオーラは少しも緩むことがなかった。


一方、二王女ケイアンナは母ケイヴィラの帰朝を知ると、すぐに手元の事を置き、慌ただしく王宮大殿へと向かった。




同じく召集を受けたもう二人の勇者、山崎鶴人と本上静樹らも、騎士に先導され、足早に王宮大殿へと向かっていく。


(3)

勇者たちは王宮に招集され、女王の威圧が王城を覆う。九魔教の陰謀も水面下で進行し、波乱の序章が開ける。

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